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バーンレート&ランウェイとは?計算方法やコスト削減のポイントを紹介

バーンレート&ランウェイとは?計算方法やコスト削減のポイントを紹介

スタートアップの「資金調達」がよくわかるガイドブック~基礎から実践まで~

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資金管理は企業の生命線です。特にバーンレート(資金消費率)とランウェイ(残存可能期間)は、資金管理の重要な指標です。成長と資金のバランスが求められるスタートアップ経営では、これらを活用することが重要な経営判断の基準となります。

本記事では、バーンレートとランウェイの基本や活用方法を解説し、コスト削減のポイントやIPO企業の資金調達方法も紹介します。ぜひご覧ください。

バーンレート&ランウェイとは

バーンレート(Burn Rate)は、企業が1ヶ月間で消費する資金の総額です。一方ランウェイ(Runway)はその消費ペースで現在の手元資金がどれだけ持続できるかを示します。

たとえば手元の資金が3,000万円で、毎月300万円のペースで資金を消費している場合、バーンレートは300万円です。ランウェイは10ヶ月となります。

バーンレートを基にランウェイを算出し、事業の持続可能性や資金調達までのタイミングを見極めましょう。

バーンレート&ランウェイの活用方法

バーンレートとランウェイの活用法には、主に以下のものがあります。

  • 資金調達の計画立案
  • 事業計画の選定
  • リスク管理

資金調達の計画立案において、バーンレートやランウェイは重要な指針です。次の資金調達時期や必要な調達金額を決定する際の根拠となり、投資家との交渉においても説得力のあるデータとしても機能します。

また事業計画の策定においては、採用計画やマーケティング投資、設備投資のタイミングなど、重要な経営判断の基準となります。特に成長フェーズにあるスタートアップでは、適切なタイミングでの投資判断が重要です。バーンレートとランウェイを参照することで、より戦略的な意思決定が可能になります。

さらにバーンレートとランウェイは、リスク管理にも役立ちます。資金不足による業務停滞を予防し、コスト構造を最適化するための指針となるからです。また不測の事態に備えた対応計画を策定する際にも、重要な判断材料となります。

バーンレートは「1ヶ月あたりのコスト」

前述のとおり、バーンレートは1ヶ月間で消費する資金の総額です。具体的には、以下のものが含まれます。

  • 人件費
  • オフィス賃料
  • システム費用
  • マーケティング費用 など

事業運営に必要なすべてのコストが、バーンレートの内訳です。

起業直後の企業では収益化までに時間を要することが多く、バーンレートを適切に管理することが事業の存続に直結します。また投資家にとっても、バーンレートは重要な判断材料のひとつです。適切に管理し、正確な数字を把握しておきましょう。

バーンレートの2つの種類

バーンレートには、以下の2種類があります。

  • グロスバーンレート
  • ネットバーンレート

グロスバーンレートは、企業の支出総額を表す指標で、事業運営に必要な全てのコストを含みます。企業の実際のコスト総額を把握するための指針です。

一方ネットバーンレートは、収益を差し引いた実質的な資金消費額です。実際のキャッシュフローの減少速度を把握するために使用されます。

2つの指標を併用することで、より正確な財務状況の分析が可能となります。たとえば月間支出が1000万円で収益が300万円の場合、グロスバーンレートは1000万円、ネットバーンレートは700万円です。2つの指針の差が大きいほど、事業の収益性が高いことを示します。

反対に2つの差が小さい場合には、以下のような状況が考えられます。

  • 事業の初期段階:製品開発やマーケット開拓の段階では、収益よりも投資が先行するため、この状態は一般的です。ただし、この期間をどれくらい継続できるかは、手元資金とランウェイの長さで判断する必要があります。 
  • ビジネスモデルの要検証:効果的な収益化が進まない場合は、ビジネスモデルの見直しが必要かもしれません。特に支出が増えているにも関わらず収益が伸びない場合は、事業の再考が求められます。

2つのバーンレートを適切に管理することで、効果的な資金計画を立てましょう。

バーンレートのコスト分類

バーンレートを構成する主なコストは以下の3つに分類されます。

  • 固定費:人件費、家賃、システム利用料など
  • 変動費:原材料費、広告宣伝費など

固定費は売上の増減に関わらず定期的に発生するコストです。収益が少ないときにも支払わなければならない金額なので、適正な金額になっていないと、企業運営を圧迫するおそれがあります。定期的に見直しを行いましょう。

変動費は売上に応じて変動するコストです。一般的に、売り上げが多いときほど変動費も多くなります。投資を将来的な売り上げにつなげ、好循環を生み出したい部分です。

それぞれのコストを適切に分類し、管理することで、より効果的なコスト削減や事業計画の立案が可能となります。

バーンレートの計算方法

バーンレートを正確に把握するためには、過去3か月から6か月の平均値(大規模な設備投資など一時的な支出は除く)を使用することが推奨されます。計算例は、以下のとおりです。

3か月の売り上げ 150万円、コスト 1200万円の場合

まず、3ヶ月分の数値を1ヶ月あたりに換算します。

  • 1ヶ月あたりの売上:150万円÷3=50万円/月
  • 1ヶ月あたりのコスト:1,200万円÷3=400万円/月

したがって、

  • グロスバーンレート(総支出)=400万円/月
  • ネットバーンレート(総支出-収益)=400万円-50万円=350万円/月

つまり、

  • グロスバーンレート:400万円/月
  • ネットバーンレート:350万円/月

 となります。

この場合、収益では月間支出の12.5%(50万円÷400万円)しかカバーできていない状態です。収益化がまだ初期段階にあるか、ビジネスモデルの見直しが必要かもしれませんね。

また将来の事業計画に基づいて、予測バーンレートを算出することも重要です。予測値は資金調達の計画を立てる際の重要な判断材料になります。

スタートアップの資金調達についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひ以下のお役立ち資料も併せて確認してみてください。

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ランウェイは「資金不足に陥るまでの期間」

ランウェイは手元資金が尽きるまでの期間のことです。これは現在の資金残高をバーンレートで割ることで算出されます。次の資金調達までに残された時間を示す重要な指標です。

手元資金が1億円で毎月のバーンレートが1,000万円の場合、ランウェイは10ヶ月です。長いランウェイを確保することは、資金調達における交渉力を高めることにもつながります。

理想的なランウェイ期間や、ランウェイを伸ばすためのポイントを見ていきましょう。

理想的なランウェイの期間は?

理想的なランウェイ期間は業界や成長段階によって適切な期間は異なりますが、おおまかな目安は、以下のとおりです。

  • 起業直後(スタートアップ):12か月から18カ月
  • 成長期:12か月から24か月
  • 一般的な企業:12か月以上

スタートアップの場合、ランウェイは最低でも12か月から18カ月を確保することが推奨されています。これは資金調達の準備や交渉に要する期間を考慮してのことです。ただし、製品開発に長期間を要する業種(例:バイオテクノロジー、ハードウェア)では、より長いランウェイが必要となる場合があります。

さらに事業の本格的な立ち上げ期で数億円規模の調達を行う段階では、もう少しランウェイに余裕があるとよいでしょう。社会的な経済環境が不安定な時期であれば、ランウェイはもっと長く設定する必要があります。不測の事態に備える資金を用意しておきましょう。

また製品開発やマーケット開拓に想定以上の時間がかかることも多いため、時間的にも余裕を持った計画を立ててください。

一般的な企業においては、半年程度のランウェイがボーダーラインと言われています。定期的なランウェイを計算し、資金繰りのタイミングを図りましょう。

ランウェイの計算方法

ランウェイは以下のように算出します。

  • 残りの資金÷ネットバーンレート

たとえば現時点での残りの資産が1,400万円でバーンレートが70万円だった場合、ランウェイは20か月です。

この企業は、あと20か月で資金不足に陥ることが推測されます。理想的なランウェイ期間の範囲内ではありますが、あまり余裕はないかもしれません。必要に応じて資金調達ができるよう、準備を進めておくほうが良さそうです。

定期的にランウェイを計算し、資金の状態を確認しましょう。

ランウェイを把握するメリット

ランウェイを正確に把握する主なメリットは、以下のとおりです。

  • 資金繰りのタイミングがわかる
  • 経営判断を適切に行える
  • 投資家との交渉がしやすい

まず次回の資金調達のタイミングを計画的に設定できるのが、大きなメリットです。資金不足までの期間を予測することで、資金調達の時期や方法の適切な判断が可能になります。

またランウェイは、採用計画や事業拡大の時期を判断する際の重要な指標でもあります。過度な拡大や無理な投資を避け、適切な時期の投資を見極めるのに、ランウェイが役立つのです。

さらに投資家との対話においても、ランウェイは大きな指針となります。資金状態の説明に使用することで、企業の安定性や資金的な信頼感を高められるのです。

そのほかマイルストーンの達成に向けた計画や、緊急時の対応計画を立てる際にも、残されたランウェイの長さが、取るべき施策を判断する目安となります。

ランウェイを伸ばすには

ランウェイを伸ばすには、主に2つのアプローチがあります。

  • 収益を増やすこと
  • コストを削減すること

収益面では製品やサービスの価格設定の見直し、顧客獲得の効率化などのビジネスモデルの見直しが有効です。とはいえ、すぐに収益を増やすのは難しい場合も多いでしょう。一般的なランウェイを伸ばす取組では、事業再生と並行したコスト削減の動きが中心となります。

コスト面では、固定費の見直しが効果を発揮します。固定費の中で大きな割合を占めるのは、人件費や家賃です。採用計画の見直しやリモートワークの活用によるオフィス費用の削減なども検討するとよいでしょう。

ただし過度なコスト削減は事業の成長を阻害します。バランスの取れた判断が必要です。

こうした検討の際に重要となるのが「キャッシュバーン」の管理です。キャッシュバーンとは実際の現金支出のことで、請求書の支払いや前払い費用、在庫の仕入れなどが該当します。こうした現金での支払いのタイミングを調整し、支出の時期を動かすことで、ランウェイを伸ばすことが可能になります。

ランウェイが長すぎる場合のリスク

ランウェイが長すぎる状態、つまり手元資金が必要以上に潤沢な状態は、一見理想的に思えます。しかし実際には、ランウェイが長すぎることにもリスクがあるのです。

特にスタートアップにとって重大なリスクは、以下の2つです。

  • 資金の有効活用ができない
  • 投資家からの評価に悪影響をもたらす

成長市場では、迅速な事業展開とマーケットシェアの獲得が重要です。過度に保守的な資金運用は、競合に市場機会を奪われる可能性があります。

こうした姿勢は、投資家からの評価にも影響します。必要以上の現金保有は、その資金を成長投資に回せていないという、経営効率の悪さを示すシグナルとして捉えられかねません。次回の資金調達時、企業価値評価に悪影響を及ぼす可能性があります。

適度な緊張感を保ちながら、成長投資と財務健全性のバランスを取ることが重要です。

IPOを目指す企業の資金調達方法

IPO(新規株式公開)を目指す企業にとって、成長段階に応じた適切な資金調達は経営の要となります。主な資金調達の方法をまとめました。

  • 自己資金
  • エンジェル投資家からの調達
  • クラウドファンディング
  • ベンチャーキャピタルからの調達
  • 金融機関からの融資
  • 公的支援・補助金

多くの場合、創業期には自己資金やエンジェル投資家からの資金調達が中心となります。近年ではクラウドファンディングなどの新しい資金調達も増えてきました。クラウドファンディングは資金調達と同時に市場での製品評価も得られる利点があり、積極的に活用したい手段のひとつです。

またベンチャーキャピタルからの資金調達も、大きな支えとなります。

さらに金融機関からの融資や、事業会社からの出資も有効です。必要に応じて、公的支援や補助金を活用しましょう。

資金調達は単なる資金の確保ではなく、企業の成長戦略にも直結します。各段階で適切な調達方法を選択し、計画的に実行することが、IPOの成功につながります。

以下の記事では、スタートアップ企業の資金調達方法について詳しく解説しています。ぜひ併せて確認してみてください。

<関連記事>スタートアップの資金調達方法6選!ステージごとの調達方法も詳しく解説!

バーンレート&ランウェイについて解説しました

バーンレート&ランウェイは、スタートアップの財務管理における重要な羅針盤です。バーンレートを適切に管理し、十分なランウェイを確保することで、事業の持続的な成長に貢献します。

一方で過度な資金節約は、成長機会の損失にもつながりかねません。適切なバランスを取りながら、これらの指標を活用することが、企業経営の要といえるでしょう。

特にスタートアップでは、次の資金調達を見据えた戦略的な資金管理がビジネスの成功に直結します。バーンレートやランウェイといった指標を意識しながら、市場環境や事業の成長ステージに応じて、柔軟な判断を行いましょう。


Startup JAM編集部
執筆

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