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建設業経営者必見!資金繰りの基本や課題から改善方法まで徹底解説

建設業経営者必見!資金繰りの基本や課題から改善方法まで徹底解説

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建設業界では工事代金の入金に時間がかかるうえ、材料費や労務費の支払いが多く、資金繰りの管理が重要な課題です。近年は人件費や資材価格の高騰により、資金繰りがさらに難しくなっています。

当記事では資金繰りの基本・建設業特有の課題から、資金繰り改善のための具体的な方法までを解説します。資金繰りを改善したい方は今すぐにでも対策を始め、経営の安定化を図りましょう。

まずは資金繰りの基本について知っておこう

ここでは必ず把握しておくべき資金繰りの基礎知識を解説します。

資金繰りとは

資金繰りとは企業が事業活動に必要となる資金を適切に管理し、入金と支出を効率的に行えるように調整するプロセスのことです。企業の成長と経営の安定を大きく左右する重要な要素で、建設業においても例外ではありません。

具体的な業務は下記のように多岐にわたります。

  • 運転資金を確保するための日常的な現金収支管理
  • 成長戦略に基づいた長期的な資金計画の策定
  • 資金調達手段の選択

特に建設業においては高額な支出が発生しやすく、資金繰りが不十分だと会社の存続が危ぶまれるリスクもあります。経営を安定化させ事業を推進していくには、他の業界以上に徹底した資金繰り管理を行うことが重要です。

<関連記事>資金繰りとは?悪化の原因や改善方法、資金繰り表の作成までわかりやすく解説

資金繰りの重要性

建設業の資金繰りが重要である理由については下記です。

事業の継続性を確保するため・・・資金が不足すると材料費の支払いや従業員への給与支払いが滞り、事業運営に支障をきたす恐れがあります。事業を継続するには十分な運転資金を確保し続けることが重要です。

企業の信用力を維持するため・・・資金繰りの悪化は信用力の低下につながり、新たな取引や融資に悪影響を及ぼします。取引先や金融機関との信頼関係を維持するには、期日通りの支払いが必須です。

無駄なコストを削減するため・・・資金不足により緊急融資や手形割引を利用した場合は、通常より高い金利や手数料がかかります。計画的な資金繰りにより無駄なコストを増やさないことが重要です。

経営判断を迅速化するため・・・資金繰りが悪化すると金策に追われて経営者に余裕が無くなります。経営者が迅速かつ的確な意思決定を行い、ビジネスの機会を逃さないためにも、普段から適切な資金繰りを行いましょう。

資金繰りとキャッシュフローの違い

資金繰りはキャッシュフローと混同されがちですが、さまざまな点において違いがあります。

資金繰り

  • 目的:将来のキャッシュの動きを把握
  • 書類:資金繰り表
  • 内容::将来のキャッシュの動きを予測
  • 特徴:資金残高がマイナスにならないことを目指す

キャッシュフロー

  • 目的:過去のキャッシュの動きをチェック
  • 書類:キャッシュフロー計算書
  • 内容::過去のキャッシュの動きをまとめる
  • 特徴:キャッシュの増減にはこだわらない

日常会話では混同されがちですが、目的や内容が異なるため、それぞれを理解しておく必要があります。

建設業特有の資金繰りの課題とは?

ここでは建設業特有の資金繰りの課題を解説します。

請求タイミングにタイムラグが生じる

建設業の資金繰りにおける最大の課題が、入金にタイムラグが生じることです。多くの建設会社は請負契約で業務を行っており、工事完了後に請求が行われるのが一般的です。工事開始から工事完了までには数ヶ月〜数年と長い期間を要するため、入金までは運転資金で支出を賄う必要があります。

予算超過・工期延長により入金が遅れるケースも珍しくなく、資金繰りをさらに難しくする要因となっています。また手形取引の商習慣が残っており、現金化に時間がかかることも、負担を大きくする要因です。

上述した事情から、建設業の会社が安定した経営を行うには、資金調達の手段を複数確保しておくことが重要となります。

材料費の先払い

建設業界で資金繰りが難しくなる大きな要因として、請負業務に使用する材料費が先払いである点も挙げられます。

請負代金は工事完了後に入金されるのに対し、材料費は工事着手前や工事途中で現金先払いにて支払うのが一般的であるためです。

特に大規模案件を受注した場合や複数の案件を同時進行する場合は、材料費の支払い負担が増大し、運転資金が枯渇してしまうリスクが高まります。

受注から入金までの期間は平均3ヶ月程度かかるため、資金には余裕を持たせておくことが重要です。

労務費や外注費の支払い

建設業の業務には多くの人員を必要とするため、労務費や外注費も資金繰りを圧迫する大きな要因です。

特に普段よりも多くの人員を必要とする大規模工事を受注した場合や複数の案件を同時に受注した場合は、労務費や外注費の支出は膨れ上がり、資金繰りに深刻な影響を与えるリスクがあります。

労務費や外注費の支払いが滞ると、雇用関係の悪化や取引先からの信用失墜を招く原因となるため、資金管理は厳密に行っておく必要があるのです。

建設業の資金繰りを改善する方法とメリット・デメリット

ここでは、建設業の資金繰りを改善する具体的な方法について解説します。

【短期的施策】ファクタリングを活用する

ファクタリングとは事業者が保有する売掛債権・受取手形等をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、必要な資金の調達を行えるサービス。審査が迅速ですぐにでも活用できる点や、借入が不要であるため財務健全性を維持できる点が特徴です。

建設業では工事代金の支払まで時間がかかり、未収の売掛金が多くなりがちですが、ファクタリングを利用すれば早期の現金化が可能となり、資金不足の課題を解決できます。

ファクタリングは建設業と親和性の高いサービスである一方、利用には手数料が発生します。手数料率・審査の期間・手続きの方法などはファクタリング会社により異なるため、細かく確認することが重要です。

メリット

  • 審査が迅速で早期の現金化が可能
  • 借入が不要で財務健全性を維持できる

デメリット

  • 手数料がかかる

【短期的施策】銀行融資を活用する

銀行融資とは金融機関が事業用資金を貸し出すサービスのことです。運転資金・設備資金・工事資金などさまざまな用途に対応可能で、低金利で多額の資金を調達できるのが特徴です。その反面、融資を受けるには厳格な審査を通過する必要があります。

銀行融資の汎用性と安定性の高さは、建設業の資金繰りにおいて非常に有力な手段となり得ます。しかし利益の有無に関わらず返済義務が生じるため、計画的に利用することが重要です。

メリット

  • 低金利で多額の資金を調達できる
  • 汎用性と安定性が高い

デメリット

  • 審査が厳格
  • 返済義務が生じる

【短期的施策】社内コストを削減する

社内コストの削減は建設業の資金繰り改善に効果的な施策です。不要な経費や資材のロスなどを徹底的に見直すことで、余剰資金が生まれ、資金繰りを改善することができます。

削減できるコストの例を下記に挙げます。

労務費・・・人員配置の見直し・アウトソーシングの活用・デジタル化による事務コスト削減・固定費の見直し

材料費・・・一括購入によるコストダウン・資源の再利用・資材ロスの削減・重機の使用効率見直し

外注費・・・コストパフォーマンスの高い業者の選定・長期的な信頼関係構築によるコスト融通

社内コストの削減は利益を上げるよりも簡単に成果を出せ、資金繰り改善に即効性があるのがメリットです。全社的な取り組みを行うことで、短期間で大きな成果を得られるでしょう。

【長期的施策】資金繰り表を作成する

資金繰り表は一定期間の現金収支の管理と予測を行うための表です。支出の金額が大きくタイミングも不規則な建設業においては、資金繰り表を活用することで効率的かつ安定的な資金管理が可能となります。

資金繰り表の基本的な構成は下記の通りです。

  • 期首残高:期間の始まりの時点での現金残高(前月繰越)
  • 収入予定:売上金・入金・前受金・その他等の受取予定金額
  • 支出予定:資材費・労務費・借入金返済・税金等の支出予定金額
  • 当月収支:現金収支の結果である期末残高(期首残高+収入予定-支出予定)

資金繰り表を作成して日々の資金の動きを管理すれば、資金が不足する時期を予測し、支払いスケジュールの調整や資金調達を適切なタイミングで行うことができます。

【長期的施策】キャッシュフロー計算書を作成する

キャッシュフロー計算書とは一定期間の現金の流れを詳細に記録する財務諸表です。この書類を活用することで、建設業特有の不規則な資金の流れを正確に把握し、資金繰りの改善に役立てることができます。

キャッシュフロー計算書の主な構成要素は下記の3点です。

  • 営業CF:売上・仕入・給与支払いなど通常業務における現金の動き※プラスであれば事業運営が健全と判断できる
  • 投資CF:設備投資・不動産購入・売却など、事業の拡大や設備投資等による現金の動き
  • 財務CF:資金調達・資本の返済に関する現金の動き

事業から得た収入がどのように使われているのかを細かく把握できるため、適切な調整を加えることができます。

【長期的施策】全国信用保証協会連合会の信用保証制度を活用する

信用保証制度とは企業が金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が保証を提供することで、スムーズな資金調達を行えるようにする制度です。

利用の際には協会が定める条件を満たし、保証対象・保証内容・保証限度額に応じて算出された信用保証料を支払う必要があります。

同制度を利用すれば、下記のような多くの恩恵を受けることが可能です。

  • 連帯保証人・担保不要で融資を受けられる
  • 融資枠を拡大できる
  • 長期の借入ができる
  • 低金利で融資を受けられる

信用保証協会は47都道府県と横浜市・川崎市・名古屋市・岐阜市の4市に位置しており、地域密着の業務を行っているため、最寄りの協会を利用することができます。

参考:全国信用保証協会連合会 もっと知りたい信用保証

【長期的施策】補助金・助成金を活用する

補助金・助成金は、国や地方公共団体から支給される無償資金のことです。返済が不要であるため資金繰り改善や経営安定には最適な支援策となります。

建設業の資金繰りに活用できる補助金・助成金を下記に紹介します。

  • 事業再構築補助金:新分野展開や業態転換などを支援する制度
  • 働き方改革推進支援助成金:労働環境の改善を目的とした補助金
  • IT導入補助金:生産性向上につながるITツールの導入を支援する制度
  • ものづくり補助金:生産性向上を目的に設備投資や革新的な商品開発などを支援する制度

なお、支給を受けるには厳しい条件を満たす必要があるため、十分な事前準備が重要です。

【長期的施策】顧客との契約条件について交渉する

建設業においては契約条件を見直して顧客と交渉を行うことで、資金繰りを大幅に改善できる場合があります。例えば支払タームの短縮や支払条件の柔軟化を行えば、現金回収のスピードを加速できるでしょう。早期支払いに対する割引や優遇措置を提案してみるのも効果的です。

契約条件の交渉をスムーズに進めるためには契約内容・自社の要求・顧客の要望を整理し、十分な準備を行って顧客が納得できる提案を行うのがポイントです。

このような取り組みを重ねれば資金繰りに負担がかかる要因が緩和され、経営の安定化を図ることができます。

建設業が資金繰りを改善した事例

これから資金繰りの改善に取り組む方は、実際の企業の資金繰り改善事例を参考にするのもおすすめです。

ファクタリングの活用で資金繰りを改善

建設会社A社は社員7名の小規模な建設会社です。丁寧な施工が評価され大規模な工事を受注する機会を得たものの、自社ではリソースが足りないため下請け会社の利用を決定。しかし資金が500万円ほど不足しており、下請け業者への支払いが難しい状況でした。

既に完了した別の工事の請求を行っていましたが、入金は2ヶ月後の予定です。このままでは受注の機会を逃してしまうと考え、ファクタリング会社の利用を決定。審査により売掛債権の価値が確認され、相談からわずか4時間以内に希望額500万円のうち約8割が即時入金されました。

A社は無事下請け会社へ発注を行い、大規模工事案件を無事完遂。この成功を機にA社は信用を獲得し、小規模建設会社から中規模建設会社へのステップアップを果たしました。

経営改善計画策定により財務を再建

従業員数10名の小規模な建設会社であるB社は、4期連続で赤字に陥っていましたが、資金繰りの改善を図り黒字化を達成しました。社長が全てを抱え込む経営体制で経営判断が後手に回っていたこと、メインである得意先の売上減少の影響を受けたことが資金繰り悪化の原因です。

問題を解決するためには、まずは資金繰り表・キャッシュフロー計算書を導入し、経営数値を可視化することで、経理財務体制の整備に尽力しました。また熟練の社員の協力を得て社長の業務の分業化を推進も実施。その後銀行返済・仕入先支払のリスケジューリング、売掛金の回収を行い、約7,000万円規模の資金繰り対策を実施しました。

18ヶ月の期間を経てロスの削減・粗利管理の改善により利益率が改善。4期ぶりの黒字化を達成して会社の財務再建に成功しました。

創業融資制度を活用して運転資金を確保

創業間もない建設会社C社は、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を上手く活用し、創業期の資金繰りが厳しい時期の運転資金を調達しました。同制度は、低金利かつ無担保で最大3,000万円(運転資金は1,500万円)までの借り入れが可能な制度です。

C社は創業期の資金調達に最適な手段であると判断し、600万円の融資を満額獲得。創業期の企業に対して審査が厳しい銀行融資への依存度を抑えながら、会社の運転資金と設備資金を確保しました。

その後は従業員の雇用を増やして事業を拡大し、法人設立まで到達することができました。

資金繰りを見える化して改善ポイントを探そう!

建設業の資金繰りはまさに経営を左右する要となる重要な課題です。現在資金繰りにお悩みの方は、まずは自社の資金繰りを見える化し、現状の把握と改善ポイントの特定を行ってみましょう。状況を整理することで、的確な打ち手を選択しやすくなります。

当記事で紹介した施策を活用すれば、一時的な資金不足の解消から長期的な経営基盤の強化まで、資金繰りに関するさまざまな課題へ対処することが可能です。状況に合わせた施策を少しずつ実行に移し、資金繰りの改善と経営の安定化を目指しましょう。

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Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

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