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統制経費(統制可能経費)とは? 非統制経費との違いや役割、経費管理のポイントも紹介

統制経費(統制可能経費)とは? 非統制経費との違いや役割、経費管理のポイントも紹介

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企業経営において適切な経費管理は、収益性を左右する重要な要素です。なかでも統制経費は管理者の判断で調整可能な経費として、戦略的な経営管理の要となります。

今回は統制経費の基本的な知識から役割まで、実務に役立つ情報をまとめました。経費管理を正しく行うポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

統制経費は「直接管理できる経費」

統制経費とは上司や部門の管理者が、金額を増やしたり減らしたりできる経費のことです。「統制可能経費」と呼ばれることもあります。

まずは統制経費の特徴や、非統制経費との違いを確認していきましょう。

統制経費の特徴

統制経費の大きな特徴は、以下の3つです。

  • 管理者の判断で金額を変更できる
  • 短期間の調整が可能
  • 直接的にコントロールできる

統制経費の最も大きな特徴は、管理者の判断で金額を変更できる点です。例えば業績が好調な時期には販促費を増額して積極的な営業活動を展開したり、経営が厳しい時期には出張をオンライン会議に切り替えて交通費を抑制したりできます。状況に応じた柔軟な調整ができる勘定科目が、統制経費です。

また統制経費は、短期間での調整も可能です。固定費のように長期契約に縛られることがないので、必要に応じて対応することができます。月末に予算の超過が見込まれる場合、残りの期間の消耗品の購入を一時的に抑制するといった対応が可能なのです。

さらに管理者が支出を直接コントロールできることも、統制経費の特徴のひとつです。統制経費は金額や支出そのものの判断を、管理者が行います。規模や必要性を責任者が調整することで、より正確で、現場に則した管理が可能です。

企業の状況や必要性に応じて機動的に調整できる統制経費は、経費管理のカギとなる要素でもあります。

統制経費の例

経費の種類や規模は、企業や業種によっても大きく異なります。ここでは一般的な会計処理で使われる勘定科目から、主な統制経費の例を挙げました。

オフィス関連

  • 消耗品費
  • 備品購入費
  • 通信費 など

営業活動関連

  • 交際費
  • 出張費
  • 販促費 など

人材関連

  • 研修費
  • 採用費
  • 派遣社員費用 など

外部サービスの利用

  • コンサルティング費用
  • 業務委託費
  • システム利用料 など

消耗品費は代表的な統制経費のひとつです。文具やコピー用紙、プリンターのインクなど、オフィスで日常的に使用する備品の購入費用は、使用量や購入時期を管理者の判断で調整することができます。

同様に交際費も、重要な統制経費となります。取引先との会食や贈答品の費用は、予算や状況に応じて調整が可能です。

出張費では頻度や行き先、期間を見直すことで、宿泊費や交通費を調整するのが一般的です。最近ではオンライン会議を活用して出張費を削減する企業も増えています。

さらに社員研修の実施回数や参加人数を予算状況に応じて調整したり、販促活動の規模や媒体を見直したりして支出をコントロールすることも少なくありません。

これらの経費を管理する際は、単純な削減だけを目指すのではなく、業務効率や社員のモチベーション、顧客満足度などにも配慮することが重要です。企業活動全体のバランスを考慮しながら、最適な支出水準を見極めましょう。

非統制経費との違い

統制経費以外の経費を、非統制経費と言います。非統制経費は変更が難しく、管理者の一存では調整しにくいものです。オフィスの家賃や従業員の給与、社会保険料等、法律や契約によって基準が定められているものが該当します。

また非統制経費は固定的な出費なので、予算編成時には既定の予算として扱う必要があります。

統制経費と非統制経費の主な違いは、以下のとおりです。

【統制経費】

特徴

  • 管理者の判断で金額を調整できる
  • 比較的短期間で変更が可能
  • 予算編成時に柔軟な配分が可能
  • 経営状況に応じて増減を検討できる

具体例

  • 消耗品費
  • 交際費
  • 広告宣伝費 など

予算管理

  • 柔軟な予算配分と調整が可能

【非統制経費】

特徴

  • 管理者の判断だけでは変更が困難
  • 契約や法令などで金額が規定されている
  • 長期的な視点での検討が必要
  • 外部要因の影響を受けやすい

具体例

  • オフィス賃料
  • 社会保険料
  • 減価償却費 など

予算管理

  • 固定費として扱い、予定額を確保

統制経費の役割

統制経費は企業の収益性を高め、効率的な経営を実現するための重要な項目です。適切に管理することで経営の柔軟性を高め、業績の向上につなげることができます。

予算管理における、統制経費の役割を見ていきましょう。

統制経費は予算管理の基本

予算管理において統制経費は、重要な管理対象のひとつとなります。統制経費は経営環境の変化に応じて機動的な調整が可能で、企業の収益性に直接的な影響を与えるためです。

予算管理では会計年度ごとの予算を正しく扱うことが重要です。不適切な経費の計上や、私的な費用との混同を防がなくてはいけません。業務上のミスや小さな不正の多くは、統制経費の項目で行われます。責任者がきちんと費用を管理し、不適切な支出がないかチェックすることで、損失を未然に防げるのです。

また社会情勢や顧客ニーズの急激な変化によって、必要な予算配分が変わることもあり得ます。打合せが増えたり、新しい技術の登場で研修が必要になったりしたときも、統制経費をうまく調整する必要があります。

統制経費の予算管理では、コストと効果のバランスを常に意識することが大切です。単に経費削減だけを追求するのではなく、必要な投資は適切に行いながら、無駄な支出を抑制しなくてはいけません。

必要な予算を必要な場所に、必要なタイミングで配分するには、柔軟性の高い統制経費をしっかり管理しておくことが重要なのです。

正確な経営分析に活用する

固定的な出費である非統制経費とは違い、統制経費は一定期間の企業の経営状態を正確に把握する指針としても活躍します。

例えば売上高に対する統制経費の比率を部門ごとに比較すると、各部門の経費効率が明確になります。営業部門では営業経費に対する受注額の比率を分析することで、営業活動の効率性を評価できるのです。こうした分析結果は、部門の予算配分や業績評価に役立ちます。

また統制経費の推移を時系列で分析することで、経営効率の変化も見えてきます。月次や四半期ごとの変動を追跡して経費増加の要因を特定したり、コスト削減施策の効果を検証したりすることが可能になるからです。特に事業環境の変化が激しい時期には、こうした分析は重要な経営判断材料となります。

さらに統制経費の内訳や売上高に対する比率を同業他社と業界平均と比較することで、自社の強みや改善点が見えてきます。他社と比べて販促費の比率が高い場合は、マーケティング施策の効率化を検討する契機かもしれません。

統制経費の分析は単なる経費管理を超えて、経営戦略の立案や改善に直結する重要な情報を提供してくれるのです。

経営コストを適切に管理する

企業の持続的な成長のためには、経営コストを適切にコントロールすることが不可欠です。統制経費は運営コストの管理においても重要な役割を果たします。ここでは、効果的なコスト管理の方法について具体的に見ていきましょう。

企業のコスト管理では、まず「必要な支出」と「削減可能な支出」を明確に区別することが重要です。社員の業務効率に直結する事務用品や、顧客満足度に影響する接待費は必要な支出です。一方、重複した購入や過剰な在庫、非効率な業務プロセスに起因する経費は、見直しの対象となります。

また運営コストの管理では、短期的な視点と長期的な視点のバランスを取ることも重要です。急激なコスト削減は一時的な収益改善につながりますが、社員のモチベーション低下や業務品質の劣化を招く可能性があります。

適切なバランスを保ちながら継続的に改善を進めていくことが、効果的なコスト管理のカギです。

経費管理を正しく行う3つのポイント

経費管理を効果的に行うためには、計画的なアプローチが必要です。ここでは適正に経費管理を行い、有益な情報として企業成長へつなげるための3つのポイントを見ていきましょう。

①経費は定期的に見直す

経費の定期的な見直しは、効率的な経費管理の基盤となります。年度ごとの経費の記録は、資金の流れと企業全体の動きを示す重要な指針です。定期的に見直し、調整を行うことで、企業の動きをスピーディに支えることができます。

まずは月次での実績確認が基本です。予算に対する実績の差異を分析し、超過が見込まれる項目については早期に対策を講じましょう。例えば消耗品費が予想以上に増加している場合、発注方法の見直しや在庫管理の徹底など、具体的な改善策を検討します。

また四半期ごとにより詳細な分析を行うことも効果的です。統制経費の使用状況を部門別、項目別に精査し、経費削減の余地がないか検討します。支出の必要性や費用対効果についても議論することで、より実効性の高い改善につながります。

年度末には経費全体の見直しを行い、次年度の予算策定に活かしましょう。

定期的に経費を見直すことで経費管理の精度を高め、より効率的な企業運営を実現することができるのです。

②予算を超過するときは早めに報告する

予算超過の可能性が見えたとき、現場の従業員が報告をためらうこともあるでしょう。しかし早期の報告と対応こそが、適切な経費管理の要です。

予算超過の兆候を発見したら、まず速やかに上司や経理部門への報告を行います。四半期の半ばで予算の大部分を消化した場合や想定外の支出が発生したときなどは、直ちに報告すべき状況です。早期に費用を調整することで、トラブルが大きくなるのを防げます。

そのためには、平常時から報告と確認のシステム化を進めておく必要があります。現場が仕様した経費が速やかに上層部へ報告され、予算や予定された出費がどの程度残っているのか、視覚的に確認できるように整備しておくと良いでしょう。

「なにが、いくら足りないのか」また「なにが、どのくらい余っているのか」を常に明確にしておくことで、予算超過の危険にもいち早く気づくことができます。

また予算に関する報告の重要性を、社内で共有しておくことも大切です。現場が報告を躊躇することのないよう、風通しの良い職場環境を築いておきましょう。

➂管理作業を効率化する

経費管理は重要な業務ですが、過度な手間や時間がかかっては本末転倒です。管理の効率化とシステム化は業務負荷の低減だけでなく、人為的なミスの予防にもつながります。

最も効果的な手段のひとつは、経費管理システムの活用です。従来の紙やエクセルベースの管理からクラウド型の経費精算システムに移行することで、申請から承認、支払いまでの一連のプロセスを大幅に効率化できます。

領収書のスマートフォン撮影による電子化や、経費データの自動集計も便利です。データとして集計された情報は、精密な分析にも役立ちます。

作業をDX化し、省力化を図ることで、会計業務の負担を最小限に抑えることができるのです。

また明確なルールとガイドラインの設定も効率化の重要なポイントです。経費の計上基準や申請手続きを標準化することで、確認作業の手間を削減し、処理速度を向上させることができます。よくある質問や判断基準をまとめたマニュアルを整備しておけば、各部署からの問い合わせ対応の負担も軽減できます。

経費管理作業の効率化は、より戦略的な経費管理を実現するための重要な取り組みなのです。

統制経費について解説しました

企業が扱う経費のうち、統制経費は管理者に責任において柔軟に調整ができる項目です。予算管理や経営分析において中心的な役割を果たし、企業の経営効率を高めるための重要な項目となります。

効果的な統制経費の管理には、定期的な見直しやスムーズな報告、業務の効率化がポイントです。無駄な支出を抑制し、経費全体を適切に管理することで、企業の収益性向上と持続的な成長が実現できます。

コスト削減だけを追求するのではなく、必要な投資はしっかりと行いながら、バランスの取れた経費管理を心がけましょう。

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Startup JAM編集部
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