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COSOフレームワークとは?種類やメリット、活用方法を解説

COSOフレームワークとは?種類やメリット、活用方法を解説

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COSOフレームワークは、企業や組織のリスク管理や内部統制を強化するために広く採用されているフレームワークです。リスクマネジメントやコンプライアンスを重視する現代のビジネス環境において、COSOの活用は組織の信頼性向上や持続可能な経営に欠かせない要素となっています。本記事では、COSOの基本的な概要や種類、導入によるメリット、具体的な活用方法についてわかりやすく解説し、実務に役立つ情報を提供します。

COSOフレームワークとは?

COSOフレームワークは、企業の内部統制を効果的に構築・運用するための国際的な指針です。その背景や目的、そして世界的な採用状況について詳しく解説します。

COSOの正式名称、設立背景、目的

COSOは「Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission」の略称で、1985年に米国で設立された組織です。当時企業の不正会計や財務報告の信頼性に対する懸念が高まり、これらの問題に対応するための内部統制の枠組みを策定する必要がありました。

COSOの主な目的は、企業の倫理観を向上させ、内部統制を実施し、企業統治を強化することにあります。1992年には「内部統制の統合的枠組み」を発表し、企業が業務の有効性・効率性を追求しながら、財務報告の信頼性を高め、法令を遵守するための指針を提供しました。

COSOフレームワークの世界的な採用状況

COSOフレームワークは、その包括的な内容と実用性により、世界中の企業や組織で広く活用されています。日本でも企業の内部統制報告制度(J-SOX)において参考にされているのが特徴です。また内部監査やリスクマネジメントの分野でもCOSOの指針が用いられ、企業のガバナンス強化や不正防止に役立っています。このように、COSOフレームワークは国際的な内部統制の標準として、多くの組織に採用され、その効果が広く認められています。

<関連記事>J-SOX法(内部統制報告制度)とは?特徴や役割、2024年の改定ポイントを解説!

COSOフレームワークの種類

COSOフレームワークは、企業の内部統制やリスクマネジメントを体系的に構築・評価するための指針として広く認知されています。大きく分けて、以下の2つのフレームワークが存在します。

内部統制の統合的フレームワーク(COSO I)

1992年に初版が発表され、2013年に改訂。企業の内部統制の設計、実施、運用、評価に関する包括的な指針を提供するものです。

全社的リスクマネジメント(COSO ERM)

2004年に初版が公表され、外部環境の変化や企業の戦略的意思決定にリスクを統合する必要性を反映し、2017年に改訂されました。企業の戦略設定や業績向上にリスクマネジメントを統合するための枠組みを提供するものです。

これらのフレームワークは、企業が効果的な内部統制システムやリスクマネジメント体制を構築・維持するためのガイドラインとして活用されています。

内部統制の統合的フレームワーク(COSO I)

内部統制の統合的フレームワーク(COSO I)は、企業が効果的な内部統制システムを構築・運用するための包括的な指針です。業務の有効性・効率性、財務報告の信頼性、法令遵守の達成を目的としています。

概要と目的

COSO Iは、企業の内部統制を5つの構成要素と17の原則に基づいて体系化し、内部統制の設計、実施、運用、評価に関する包括的な指針を提供しています。その目的は、以下の3点です。

  • 業務の有効性・効率性の向上:企業活動の効果的な運営と資源の最適活用を促進する
  • 財務報告の信頼性確保:正確で信頼性の高い財務情報の提供を支援する
  • 法令遵守の徹底:関連法規や規制の遵守を確保し、企業の社会的責任を果たす

5つの構成要素と17の原則

COSO Iは、内部統制を以下の5つの構成要素に分類し、それぞれに関連する17の原則を定めています。

1.統制環境:組織全体の内部統制に対する意識や姿勢を形成する基盤。

  • 組織は、誠実性と倫理観に対するコミットメントを表明する。
  • 取締役会は、経営者から独立していることを表明し、かつ、内部統制の整備および運用状況について監督を行う。
  • 経営者は、取締役会の監督の下、内部統制の目的を達成するに当たり、組織構造、報告経路および適切な権限と責任を確立する。
  • 組織は、内部統制の目的に合わせて、有能な個人を惹きつけ、育成し、かつ、維持することに対するコミットメントを表明する。
  • 組織は、内部統制の目的を達成するに当たり、内部統制に対する責任を個々人に持たせる。

2.リスク評価:組織の目標達成に影響を及ぼすリスクの特定と分析。

  • 組織は、内部統制の目的に関連するリスクの識別と評価ができるように、十分な明確さを備えた内部統制の目的を明示する。
  • 組織は、自らの目的の達成に関連する事業体全体にわたるリスクを識別し、当該リスクの管理の仕方を決定するための基礎としてリスクを分析する。
  • 組織は、内部統制の目的の達成に対するリスクの評価において、不正の可能性について検討する。
  • 組織は、内部統制システムに重大な影響をおよぼしうる変化を識別し、評価する。

3.統制活動:リスクに対応するための方針や手続きの策定と実施。

  • 組織は、内部統制の目的に対するリスクを許容可能な水準まで低減するのに役立つ統制活動を選択し、整備する。
  • 組織は、内部統制の目的の達成を支援するテクノロジーに関する全般的統制活動を選択し、整備する。
  • 組織は、期待されていることを明確にした方針および方針を実行するための手続をつうじて、統制活動を展開する。

4.情報と伝達:内部統制に必要な情報の収集、処理、伝達。

  • 組織は、内部統制が機能することを支援する、関連性のある質の高い情報を入手または作成して利用する。
  • 組織は、内部統制が機能することを支援するために必要な、内部統制の目的と内部統制に対する責任を含む情報を組織内部に伝達する。
  • 組織は、内部統制が機能することに影響をおよぼす事項に関して、外部の関係者との間での情報伝達を行う。

5.モニタリング:内部統制の運用状況の継続的評価と改善。

  • 組織は、内部統制の構成要素が存在し、機能していることを確かめるために、日常的評価または独立的評価を選択し、整備および運用する。
  • 組織は、適時に内部統制の不備を評価し、必要に応じて、それを適時に上級経営者および取締役会を含む、是正措置を講じる責任を負う者に対して伝達する。

これらの構成要素と原則は、相互に関連し合い、効果的な内部統制システムの構築と運用を支えています。

全社的リスクマネジメントのフレームワーク(COSO ERMまたはCOSO II)

COSO ERM(Enterprise Risk Management)は、企業が戦略目標を達成するためにリスクを効果的に識別、評価、管理する枠組みです。企業のガバナンス、文化、リスク対応を一体化させることで、持続可能な価値創出を支援します。

概要と目的

COSO ERMは、リスクマネジメントを企業の意思決定や戦略に統合するために設計されています。その背景には、外部環境の急速な変化や複雑化に対応し、リスクを管理するだけでなく、競争優位性を築くというニーズがありました。このフレームワークの目的は以下の通りです。

  • 戦略目標の達成支援:リスクと機会のバランスを取りながら、目標達成を促進します。
  • 業務の有効性・効率性の向上:企業活動の効果的な運営と資源の最適活用を促進します。
  • 財務報告の信頼性確保:正確で信頼性の高い財務情報の提供を支援します。
  • 法令遵守の徹底:関連法規や規制の遵守を確保し、企業の社会的責任を果たします。

5つの構成要素

COSO ERMは以下の5つの構成要素と、それぞれに関連する20の原則から成り立っています。それぞれがリスクマネジメントの実践に必要な要素を網羅しています。

1. ガバナンスとカルチャー

  • 原則1:取締役会によるリスク監視を行う
  • 原則2:業務構造を確立する
  • 原則3:望ましいカルチャーを定義づける
  • 原則4:コアバリューに対するコミットメントを表明する
  • 原則5:有能な人材を惹きつけ,育成し,保持する

2. 戦略と目標設定

  • 原則6:事業環境を分析する
  • 原則7:リスク選好を定義する
  • 原則8:代替戦略を評価する
  • 原則9:事業目標を組み立てる

3. パフォーマンス

  • 原則10:リスクを識別する
  • 原則11:リスクの重大度を評価する
  • 原則12:リスクの優先順位づけをする
  • 原則13:リスク対応を実施する
  • 原則14:ポートフォリオの視点を策定する

4. レビューと修正

  • 原則15:重大な変化を評価する
  • 原則16:リスクとパフォーマンスをレビューする 
  • 原則17:全社的リスクマネジメントの改善を追求する

5. 情報、伝達および報告

  • 原則18:情報とテクノロジーを有効活用する
  • 原則19:リスク情報を伝達する
  • 原則20:リスク、カルチャーおよびパフォーマンスについて報告する

これらの構成要素と原則を統合的に実施することで、組織はリスクを効果的に管理し、戦略目標の達成を支援することが可能となります。

COSO Iとの違い

目的

  • COSO I(内部統制):内部統制の確立
  • COSO ERM(全社的リスクマネジメント)リスク管理と戦略統合

構成要素

  • COSO I(内部統制):5つ(統制環境、リスク評価など)
  • COSO ERM(全社的リスクマネジメント)5つ(ガバナンス、戦略、パフォーマンスなど)

適用範囲

  • COSO I(内部統制):財務報告、業務効率、法令遵守
  • COSO ERM(全社的リスクマネジメント)組織全体のリスク対応と機会創出

リスク選好度とリスク許容度

COSO ERMでは、COSO Iで扱われていない「リスク選好度」と「リスク許容度」という概念が導入されています。リスク選好度は、組織が追求するリスクの量や種類を示し、戦略的な意思決定に影響を与えます。一方リスク許容度は、特定のリスクに対して許容できる範囲を定め、日常業務やプロジェクト進行の指針となるものです。これらの基準は、組織の目標や外部環境に応じて設定され、ガバナンスの重要な要素となります。

COSOフレームワーク導入のポイント

COSOフレームワークを効果的に導入するには、以下のポイントを押さえることが重要です。

経営層のコミットメント

経営層の積極的な関与は、COSOフレームワーク導入の成功に不可欠です。トップマネジメントが内部統制の重要性を認識し、リーダーシップを発揮することで、組織全体に統制文化が浸透します。具体的には、以下の取り組みが求められます。

  • 内部統制に関する明確なビジョンと方針の策定
  • 必要なリソースの確保と適切な配分
  • 進捗状況の定期的なレビューとフィードバック

組織全体の理解と協力

COSOフレームワークの効果的な実施には、全従業員の理解と協力が欠かせません。各部門が内部統制の役割を理解し、積極的に参加することで、統制活動が組織全体で一貫して行われます。以下の施策が有効です。

  • 内部統制に関する教育・研修の実施
  • 部門間のコミュニケーション促進と情報共有の強化
  • 従業員からのフィードバックを収集し、改善に活用

継続的な改善

内部統制環境は、ビジネス環境や組織の変化に応じて進化させる必要があります。定期的な評価と改善を行うことで、内部統制の有効性を維持・向上させることが可能です。具体的な取り組みとして、以下が挙げられます。

  • 内部監査の定期的な実施と結果の分析
  • リスク評価の見直しと新たなリスクへの対応策の策定
  • 内部統制プロセスの効率化と最適化

専門家の活用

COSOフレームワークの導入には専門的な知識が求められるため、内部統制やリスクマネジメントの専門家を活用することが効果的です。専門家の支援により、導入プロセスの効率化や課題の早期解決が期待できます。以下の方法で専門家を活用できます。

  • 外部コンサルタントの招聘
  • 内部統制に関する専門的なトレーニングの受講
  • 業界のベストプラクティスや最新情報の収集

これらのポイントを踏まえ、組織全体で協力してCOSOフレームワークを導入することで、内部統制の強化とリスクマネジメントの向上が期待できます。

COSOフレームワークの活用事例

COSOフレームワークは、製造業や金融業など多様な業界で内部統制の強化に活用されています。具体的な活用事例を以下に示します。

製造業

生産ラインの管理にCOSO Iを適用し、品質基準の達成と在庫管理の精度向上を図ります。例えば不良品率の削減に向けた統制活動を導入し、サプライチェーン全体でのコスト削減を実現するケースが挙げられるのです。またリスク評価を行うことで、部品供給遅延の可能性を事前に特定し、代替サプライヤーの確保を迅速に行える体制を整えています。

金融業

顧客情報保護を目的とした統制活動を実施することで、サイバーセキュリティリスクへの対応力を強化します。具体的には、不正アクセスやデータ漏洩を防ぐための監視システムの導入や、従業員へのコンプライアンス教育を実施。これにより、金融犯罪リスクを低減させています。

IT企業

プロジェクト管理において、COSO Iの原則を活用し、スケジュールの遅延やコスト超過を防止します。特にリスク評価プロセスをプロジェクト計画に統合することで、技術的課題やリソース不足への対応策を計画段階で策定しており、これによってクライアントとの信頼関係を維持しつつ、効率的な納期遵守を可能にしています。

小売業

在庫管理や店舗運営の標準化にCOSO Iを導入。例えば、リスク評価を活用してシーズンごとの売上変動を分析し、適切な商品補充計画を策定することで、在庫の過剰や不足を防いでいます。また、統制環境の構築により、従業員の行動基準を統一し、不正行為やミスの削減につなげています。

組織の未来を支えるCOSOフレームワーク

COSOフレームワークは、組織の内部統制とリスクマネジメントを強化するための国際的な指針です。その5つの構成要素と20の原則を理解し、適切に適用することで、業務の効率性向上、財務報告の信頼性確保、法令遵守の徹底が期待できます。各業界での活用事例からも、その有効性が実証されています。

COSOフレームワークの導入を検討されている方は、まず組織内での理解促進と経営層のコミットメントを確保することが重要です。さらに、専門家の助言を活用し、継続的な改善を図ることで、内部統制の強化とリスクマネジメントの向上が実現できます。詳細な情報や具体的な導入手順については、専門機関の資料やセミナーを活用されることをおすすめします。

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