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CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは?投資を受けるメリットや事例をわかりやすく紹介!

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは?投資を受けるメリットや事例をわかりやすく紹介!

スタートアップの「資金調達」がよくわかるガイドブック ~基礎から実践まで~

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企業が成長する段階で、資金調達を行うにはいくつかの方法が存在します。CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)もそのひとつで、特に未上場の新興企業(スタートアップ企業やベンチャー企業)に出資・支援を行うことが目的です。CVCは、これから自社の規模を拡大し、IPOやM&Aに向けて成長したいと考えている企業にとって有効な資金調達先といえるでしょう。

「でも、CVCって何かよくわからない…」

「VCとは何がどう違うの?」

「CVCから投資を受けるメリットは?」

こういった疑問を疑問に答えるため、本記事ではCVCの概要、VCとの違い、M&Aとの違い、投資を受けるメリット、投資を受ける場合の注意点、CVCから投資を受けた事例を解説していきます。

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは?

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは、特定の事業会社が自社の資金を用いて組成した、未上場の新興企業に出資や支援を行うファンドです。ここでいう事業会社は投資企業ではなく、その他の業種を本業としています。自社の事業に何かしら関係性のある企業に投資することで、本業とのシナジーを生むことが主な目的です。CVCによる出資は1社単独で行われる場合と、複数の事業会社が共同でファンドを組成して出資する場合があります。

CVC投資の4つの手法

CVCが投資を行う際に用いる手法は、主に以下の4つに分類されます。

  1. 事業会社の本体が直接投資する
  2. 事業会社が出資して子会社や関連会社としてファンドを組成して投資する
  3. 事業会社が既存のVCと連携して専用ファンドを組成して投資する
  4. 既存のファンドにLP(有限責任組合員)として参加することでファンドを通して投資する

①、②は事業会社が主体となってファンドを持つ関係で、投資業務は事業会社が行う必要があります。そのため自由度が高く投資判断がしやすい反面、管理業務の負担が伴います。

一方で③、④は基本的な投資・管理業務は既存のVCやファンドが行う都合上、事業会社は負担軽減が可能です。ただし、複数の企業やVCが関わっているため、出資の判断に対する事業会社の発言権は弱くなります。

CVCとVCの違い

CVCと頻繁に比較される事業体に、VC(ベンチャーキャピタル)があります。VC(ベンチャーキャピタル)は、CVCと同様に新興企業に資金を出資・支援する機関です。

CVCとVCの主な違いは、出資を行う目的です。前述した通り、CVCは事業会社が自社の本業に関係のある新興企業に投資することで、本業とのシナジーで利益をもたらすことを目的としています。これに対して、VCは出資で新興企業の株式を取得し、数年後にその企業の株式価値向上によってキャピタルゲインを得ることが目的です。

こういった目的の違いもあって、出資対象の企業の選定基準も異なります。VCでは業種に関係なく企業の成長性を重視しますが、CVCは本業との相乗効果への期待がより重視されます。

CVCとM&Aの違い

CVCの「関係性のある企業に投資する」という内容は、一面でM&Aによる買収と近いと捉えられる場合があります。いずれの場合も投資する側の企業が、自社のビジネス拡大を目的として投資する点で共通点がみられます。

一方で、CVCとM&Aで異なるのが「必要となる金額」と「対象企業への影響力の強さ」です。

M&Aは合併・買収を意味し、買収された企業の経営権は吸収・買収する側に移ります。ただし、経営権を獲得するためには対象企業の株式を一定以上取得しなくてはならず、必要となる金額は莫大です。

これに対してCVCは、対象企業の経営方針や判断に一定の影響力があるものの、支配しているわけではありません。そのため支援やアドバイス、要望といったレベルの影響力にとどまります。その分少ない投資で経営権は対象企業のままであり、投資が結果失敗に終わってもM&Aほどの損失はありません。

M&Aの方がよりリスクがあり、先々に回収できるリターンが大きい場合に取られる方法であることを覚えておきましょう。

スタートアップ企業がCVCから投資を受けるメリット

CVCはスタートアップ企業の資金調達手段として、上場前の資金調達ラウンドでは代表的な出資元のひとつとなっています。ではスタートアップ企業がCVCから出資を受ける場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは代表的な3つのメリットを解説していきます。

事業会社の本業と連携できる

CVCにおける出資元である事業会社は、自社の本業と関係し利益をもたらすビジネスを行うスタートアップ企業へ投資します。スタートアップ企業が成功すれば事業会社の事業拡大にもつながるため、経営ノウハウや販路、人材などのリソース提供を受けられることが大きなメリットです。スタートアップ企業にとって、出資元企業は自社よりも圧倒的に規模が大きく、その事業会社の本業と連携することで、自社ビジネスの拡大が期待できます。

また出資元の事業会社が、スタートアップ企業の技術やビジネスを自社のプロダクトに組み込むケースもあります。この場合、スタートアップ企業が収益基盤を大きく強化することが可能です。

企業の社会的信用や認知度が向上する

CVCによって規模や影響力の大きな企業から出資を受けることができれば、その影響で投資を受けたスタートアップ企業の社会的信用が向上します。創業したてで金融機関などから融資を受けづらいスタートアップ企業にとって、社会的信用の向上で融資や出資を受けやすくなるのは大きなメリットといえるでしょう。

また、CVCによる出資を受ける際にプレスリリースが発行される場合があります。大企業から発信された出資の情報を目にする関係者は多く、ここに社名が掲載されることで認知度も向上します。成長段階での認知度の向上は、追加の資金調達や上場に好影響を及ぼすため、スタートアップ企業にとって見逃せない利点です。

返済義務が無い資金調達ができる

スタートアップ企業が資金調達を行う方法として、主に出資と融資の2種類があります。融資は一般の金融機関や日本政策金融公庫から、返済期限のある金銭を借り入れる方法です。そのため、返済期限までの間に一定金額ずつ返済を行わなくてはなりません。返済時には利息も合わせて返す必要があり、ビジネスの成長が順調でない場合に資金繰りを圧迫する可能性があります。

一方で投資の場合、融資とは異なり返済義務が無いため資金繰りに負担がかかりません。

返済義務を負うことで生じる返済の精神的なストレスを考えても、返済義務の無い資金調達方法はスタートアップ企業にとってプラスといえるでしょう。

投資を受ける場合の注意点

CVCからの投資は、スタートアップ企業にとって多くのメリットがあります。しかしメリットだけでなく、CVCの性質から来る注意点もあることを知っておかなくてはなりません。成長段階で利用する資金調達手段としてCVCを考えている場合は、以下に示す注意点を踏まえて、利用そのものや出資を受ける事業会社を検討してみましょう。

事業会社の影響を強く受ける

CVCによって事業会社から大きな投資を受けているスタートアップ企業は、事業会社の影響を強く受ける可能性があります。それらの影響が自社に与えるダメージやデメリットにも、注意が必要です。例えば、事業会社の競合にあたる企業との取引が難しくなったり、事業会社の求める事項を優先しなくてはならなかったりといった事態が想定されます。

出資を受けるからには影響を完全に取り除くことはできず、事業会社のリソースを利用する場合にはこの影響がより強くなると考えられます。事業会社の影響と受けられる恩恵のバランスを見極めることが重要です。

経営の自由度が下がる

一般的に投資を受けることで、企業の経営の自由度は下がると言われています。この点は、CVCから投資を受ける場合でも同様です。スタートアップ企業の経営や事業方針に、CVCの母体である事業会社が関与する可能性があります。

投資を受けているからといって、事業方針や経営の内容を強制されるわけではありません。しかし、出資元の意向を無視できないスタートアップ企業側は、経営の自主性が損なわれる可能性があることを認識しておきましょう。

スタートアップ企業ならではの自由な経営やスピード感のある経営判断が阻害されて、結果企業の成長が停滞してしまわないよう、十分注意が必要です。

CVCから投資を受けた企業の実例

ここからは実際にCVCから投資を受けた企業の実例を紹介していきます。

出資元の事業会社や出資を受けた企業を知っていれば、よりCVCの効果やイメージが湧きやすくなります。今後、CVCによる資金調達を検討しているなら、参考にしてみましょう。

株式会社AIメディカルサービス

株式会社AIメディカルサービスは、内視鏡画像による診断を支援するAIを開発しているAIベンチャー企業です。2019年10月に行われた第三者割当増資で、約46億円を調達したと発表しました。VCであるグロービス・キャピタル・パートナーズなどの他、ソニーイノベーションファンドや日本郵政キャピタル、アフラックなどのCVCが出資を行いました。

調達された資金は、AIメディカルサービスが開発するAI製品の医療機器としての承認に向けた臨床試験の費用として利用すると発表されています。

参考:日本経済新聞「AIメディカルサービス、内視鏡AI開発に46億円調達

株式会社エネコートテクノロジーズ

株式会社エネコートテクノロジーズは、次世代型の折れ曲がる太陽電池として期待されている「ペロブスカイト太陽電池」を開発する京都大学発のスタートアップ企業です。2024年7月の出資で、55億円を調達しました。CVCとして出資したのは、トヨタ自動車や日揮グループ傘下のCVCです。調達された55億円は「ペロブスカイト太陽電池」の量産工場稼働開始に向けた資金として利用することが発表されています。

また日揮グループによると、エネコートテクノロジーズへの出資が2022年に続けて追加出資となっていることから、期待度の高さ次第で追加支援が受けられることがわかる事例です。

参考:日本経済新聞「曲がる太陽電池、EV向け量産 京大発にトヨタ系など出資

日揮ホールディングス株式会社公式HP - 2024ニュースリリース「CVCファンドを通じて、次世代太陽電池を開発するエネコートテクノロジーズに追加出資

CVCについて解説しました

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)は、事業会社が本業と関係性のある新興企業(スタートアップ企業やベンチャー企業)に出資・支援を行う投資ファンドです。スタートアップ企業がCVCによる投資を有効活用できれば、返済義務の無い資金調達手段として大幅な事業拡大や企業成長が期待できます。CVCの母体となる事業会社から受ける影響などの注意点を踏まえて、スタートアップビジネスの拡大に役立てましょう。

この記事ではCVCの概要、VCとの違い、投資を受けるメリット、投資を受ける場合の注意点、CVCから投資を受けた事例を解説してきました。

CVCの利用はスタートアップの資金調達ラウンドに密接な関係がある、代表的な資金調達方法です。これを読んだスタートアップ企業の経営者の方が、どのようにCVCによる資金調達を行うかの参考となれば幸いです。


Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

Startup JAM編集

AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」を提供する株式会社LegalOn Technologiesの、「Startup JAM-スタートアップ向けにビジネスの最前線をお届けするメディア-」を編集しています。

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