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デットファイナンスとは?エクイティファイナンスとの違いや主な種類、メリットなどを解説

デットファイナンスとは?エクイティファイナンスとの違いや主な種類、メリットなどを解説

スタートアップの「資金調達」がよくわかるガイドブック~基礎から実践まで~

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デットファイナンスは、事業のスタートアップなどで資金調達をする際に、経営の自由度を高く保ちたい企業におすすめの選択肢の1つです。

ただし今後の事業継続や成功に向けて適切な資金調達を行なうためには、各方法の特徴などを理解したうえで、自社に合うものを選択する必要があるでしょう。

この記事では、デットファイナンスの特徴と種類、メリット・デメリットなどを解説します。スタートアップ時の資金調達方法としてデットファイナンスを検討されている方は、ぜひ記事をチェックしてみてください。

デットファイナンスとは

デットファイナンスとは、いわゆる融資・借入れによる資金調達の総称です。英語表記は「Debt Finance」であり、前半の「Debt」は帳簿上の負債を意味する言葉になります。「負債による資金調達」や「借入金融」などと呼ばれることも多いです。

詳細は後述しますが、デットファイナンスによる資金調達には以下のように多くの選択肢があります。

  • 公的融資
  • 銀行借入(プロパー融資)
  • 銀行借入(ビジネスローン)
  • 社債発行(公募債)
  • 社債発行(私募債)
  • コマーシャルペーパー(CP)
  • シンジケートローン
  • ソーシャルレンディング

デットファイナンスを活用した場合、金利を上乗せした金額の返済を期限までに行う必要があります。

デットファイナンスとエクイティファイナンスの違い

デットファイナンスの概要は、引き合いに出されることが多い「エクイティファイナンス」と比べることでよりイメージしやすくなるはずです。

エクイティファイナンスとは、株式発行による株主からの資金提供や、内部留保などの自己資本によって、外部からの借入れ・融資に頼ることなく必要資金を生み出す方法になります。

ここでは、以下4つの要素からエクイティファイナンスとデットファイナンスの違いを見ていきましょう。

  • 返済義務
  • 株主の権限
  • 貸借対照表上の表記
  • 資本金

返済義務

エクイティファイナンスでは、どこからも借入れ・融資を受けません。この特徴は、借入金の返済義務が生じないことを意味します。一方でデットファイナンスは、外部からの借入れ・融資に頼ることから、返済義務が生じる手法です。

株主の権限

株式発行では、外部の出資者が持株比率に応じた意思決定の権限を持つことになります。また、持株比率50%で取締役の解任、66.7%以上で、企業の合併・分割・解散・定款変更といった重要決定の権限を持つことも可能です。

エクイティファイナンスには、株主の構成比率が変わらない「株主割当増資」などの種類もあります。したがって、エクイティファイナンスの場合、株主の構成比率が変わったケースなどでは権限も変更になるでしょう。

一方デットファイナンスでは、既存株主の持株比率が変わりません。それはつまり、デットファイナンスを通じて必要資金を新たに生み出すタイミングでは、株主の権限が変わらないことを意味します。

貸借対照表上の表記

エクイティファイナンスで調達した資金は、貸借対照表上で「純資産」になります。デットファイナンスでは「負債」です。

資本金

エクイティファイナンスの場合、株式などの増加にともない企業の資本金も増えることになります。一方でデットファイナンスでは、基本的に資本金は変わりません。

ここまで解説した4要素をまとめると、以下のとおりになります。

 

デットファイナンス

  • 返済義務:あり
  • 株主の権限:変わらない
  • 貸借対照表上の表記:負債
  • 資本金:増えない

エクイティファイナンス

  • 返済義務:なし
  • 株主の権限:変わることもある
  • 貸借対照表上の表記:純資産
  • 資本金:増える

デットファイナンスの種類

デットファイナンスは、種類がとても多い資金調達方法です。ここでは、代表的な8種類の概要を紹介しましょう。

  • 公的融資
  • 銀行借入(プロパー融資)
  • 銀行借入(ビジネスローン)
  • 社債発行(公募債)
  • 社債発行(私募債)
  • コマーシャルペーパー(CP)
  • シンジケートローン
  • ソーシャルレンディング

公的融資

政府などが運営する公的機関による融資の総称です。具体的には、日本政策金融公庫が取り扱う以下のようなものが公的融資に該当します。

  • スタートアップ支援資金
  • 新事業育成資金
  • 企業活力強化資金 など

近年では、地方起業家を募る目的で、独自の融資制度を用意する自治体も多くなりました。

公的融資のメリットは、借入れしやすく金利も低いことが多い点です。ただし、手元に入金されるまでに多くの時間を要する傾向があります。具体的な借入れ条件などが知りたい場合は、以下のような各機関の最新情報をチェックしましょう。

参考:スタートアップ支援資金(日本政策金融公庫)

参考:新事業育成資金(日本政策金融公庫)

参考:企業活力強化資金(日本政策金融公庫)

銀行借入(プロパー融資)

プロパー融資とは、信用保証協会の保証がなく、銀行などの民間金融機関から直接受ける融資の総称です。

プロパー融資では保証料が一切かかりません。融資実行までの期間が短く、多額の融資が受けやすい特徴もあります。

ただしプロパー融資は、信用保証協会を介さないことから、審査通過のハードルはとても高めです。創業直後や融資実績がない状態では、審査通過が少し難しいかもしれません。

銀行借入(ビジネスローン)

ビジネスローンは事業資金専用のローン商品です。

ビジネスローンは、民間金融機関のほかにクレジットカード会社などでも取り扱われています。具体的な要件は金融機関によって異なりますが、以下の3つは多くのビジネスローンに共通する特徴になるでしょう。

  • スピーディーな審査回答
  • 審査は決算書が中心
  • 原則は無担保・無保証人

無担保・無保証人のビジネスローンでは、傾向として借入れ限度額は少なめになります。

社債発行(公募債)

デットファイナンスにおける公募債は、市場で社債の情報を公開することで一般の投資家を募る方法です。公募債の募集人数は、金融商品取引法で決められており、不特定多数の投資家を募る形になります。

満期一括償還にすることが多く、融資などと比べて余裕を持った資金繰りがしやすい点が特徴です。社債発行時には、有価証券通知書や有価証券報告書などの提出手続きが必要となります。

社債発行(私募債)

私募債とは、先述の「公募」以外の方法で購入を勧誘する債権のことです。

近年の中小企業では、「信用保証協会保証付私募債」や「銀行保証付(銀行引受)私募債」といった銀行や信用保証協会などが償還をするやり方が主流となっています。また、50人未満の投資家だけに有価証券の買取をお願いする方法も、私募債の一種です。

私募債は、公募債と比べて発行手続きがシンプルです。ただし私募債には、資金調達までのコストが増大しやすい注意点もあります。特に金融機関や信用保証協会を活用する場合、手数料・保証料・利息などがかかるでしょう。

コマーシャルペーパー(CP)

コマーシャルペーパーとは、公開市場で発行される無担保かつ割引形式の約束手形のことです。多くの場合、短期間での資金調達を目的としています。引受人は、金融機関や機関投資家です。

コマーシャルペーパーの発行は、無担保である特徴から、信用度が高く財務内容が良好な企業に限定されています。額面金額は1億円以上です。企業の信用力向上につなげやすい点もメリットでしょう。

シンジケートローン

シンジケートローンは、複数の金融機関で構成されるシンジケート団から融資を受けるものです。銀行などの各金融機関は、1つの融資契約書にもとづき同一条件で個別の融資を行います。

シンジケートローンの魅力は、返済スケジュールや借入条件を柔軟に決定できる点です。アレンジャーという幹事金融機関が取りまとめを行うため、事務手続きの負担を減らせるメリットもあります。

デメリットは複数の金融機関から融資を受けるので、審査が厳しく多くの手数料がかかる点です。

ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングは、いわゆるクラウドファンディングの一種です。「融資を受けたい企業」と「資金提供で利益を得たい投資家」をマッチングする仕組みであることから、融資型クラウドファンディングと呼ばれたりもします。比較的新しい資金調達の方法です。

ソーシャルレンディングには、審査がないことで融資までのスピードが比較的速い利点があります。ただし、金利は銀行などからの融資と比べて高く設定されることが多いです。

デットファイナンスのメリット

デットファイナンスは、複数のメリットによって多くの企業に注目される方法です。ここでは、すべての種類に共通する6つのポイントを紹介しましょう。

  • 借入先の選択肢が多い
  • 持株比率は変わらない
  • 資金計画が立てやすい
  • 資本金は変わらない
  • 節税効果が期待できる
  • 信用力の向上が期待できる

借入先の選択肢が豊富である

デットファイナンスの種類は、先述のとおりとても豊富です。種類が多いと、以下のような条件から自社に合うものを選びやすくなります。

  • 【審査がないものが良い】私募債、公募債
  • 【金利が低いものが良い】公的融資
  • 【融資までのスピードが速いほうが良い】ソーシャルレンディング、プロパー融資 など

多くの選択肢があれば、万が一審査通過しなかった場合もほかの方法で再チャレンジしやすいでしょう。

主体的な企業経営を続けられる

先述のとおり、デットファイナンスでは株式発行などを行わないため、資金調達後の持株比率は変わりません。

それはつまり、資金調達によって新たに経営権を握られたりするリスクが低く、主体的かつ自由な企業経営が続けやすいことを意味します。

資金計画が立てやすい

たとえば、金融機関などからの融資を選択した場合、最初に決められた利息と返済スケジュールにもとづき、毎月コツコツ返済を続けていくことになります。この特徴は、利益に応じた配当金の支払いが求められるエクイティファイナンス(株式発行)にはない利点です。

計画的な返済ができることは、中長期的な事業計画を立てるうえでも魅力的な要素となるでしょう。

節税効果が期待できる

株式発行をしなければ、基本的に資本金は変わりません。この特徴は、資本金が一定以上になったときに支払額が増える法人住民税を抑えられる効果につながります。

たとえば、ある企業のエクイティファイナンス(株式発行)で資本金が1千万円や1億円のラインを超えれば、以下の表のように法人住民税額が上がります。

その点、デットファイナンスであれば資本金は変わりません。資金調達の影響で税額が上がることもないでしょう。

引用:法人住民税(総務省)

ほかにも、デットファイナンスの場合、損金扱いとなった支払い利息が課税対象外になることで、節税効果が得られやすくなったりします。具体的な節税効果は、自社で活用する軽減措置や国税庁などの情報をチェックしてください。

信用力の向上が期待できる

デットファイナンスによる借入れ金額をスケジュール通りに完済できれば、金融機関などからの評価(信用)が上がります。信用力の向上は、次の融資の審査通過や、低金利などの優遇につながるものとなるでしょう。

スタートアップ期のまだ若い企業は、業績も少なく金融機関からの信用力も低くなりがちです。そこでデットファイナンスを利用し、コツコツ返済を続けていくと、将来の大きな事業に向けた信用力の土台づくりが可能となるでしょう。

デットファイナンスのデメリット

デットファイナンスによる資金調達の検討では、デメリットや注意点にも着目しておく必要があります。ここでは、すべての種類に共通する以下4つのデメリットを紹介しましょう。

  • 自己資本比率が低下する
  • 返済の義務・期限が発生する
  • 希望額が必ず融資されるかはわからない

借金が増え、自己資本比率が低下する

自己資本比率とは、企業の安定性や健全性をはかる1つの指標です。具体的には、総資本のうち自己資本が占める割合になります。

デットファイナンスで借入れたお金は、負債(他人資本)であり、自己資本には該当しません。デットファイナンスによる資金調達では、企業の自己資本比率は自ずと低下することになるでしょう。

自己資本比率の低下は、「企業経営するために他人資本が必要である」ということを意味します。それはつまり、借入依存度の高さなどの財務脆弱性が露呈することです。

企業経営において、借金をすること自体は「悪」ではありません。たとえば、「かなりの増収増益が期待できる新事業のために、借金をして設備投資をする」といったことは、前向きな借入れになるでしょう。

ただし理由がどうであれ、借金(負債)が増えすぎてしまうと、株主や取引先などのステークホルダーに「この会社、大丈夫なのかな?」などの不安を与えてしまいます。また、かなり多くの借金を抱えた状態は、さらに銀行からお金を借りるといったことも難しくなるかもしれません。

デットファイナンスによる信用力の低下や悪循環を防ぐためには、デットファイナンスで調達した資金が借金であることを理解したうえで、資産・負債・資本の財務バランスを意識した企業経営を進めていく必要があります。

返済の義務・期限が発生する

デットファイナンスで調達した資金は、期限までに返さなければならない借金です。

またデットファイナンスの返済は、多くの場合「借りた元金をそのまま返せばいい」というわけではありません。融資による資金調達をした場合、利息の支払いも発生します。借入れ金額が大きければ、利息の負担も増大するでしょう。

利息による収益への影響を最小限にするためには、公的融資などの利息が低めの種類を選んだり、あまり欲張らずに必要な分だけ申し込んだりするなどの工夫も必要となります。

希望額が必ず融資されるかはわからない

デットファイナンスは、金融機関や投資家などにお金を融資してもらう特徴から、どちらかといえば中小企業よりも上場企業・大手企業のほうが利用しやすい手法です。

具体的な難易度は種類や融資希望額などで変わりますが、以下に該当する企業はデットファイナンスによる資金調達が成功しにくいかもしれません。

  • 資本金が少なく、財務基盤が弱い
  • 経営体制が脆弱である
  • 経営者に経営判断の決定権がある
  • 経営者と企業の所有分離ができていない

デットファイナンスでは、自社の経営状況に大きな問題がなくても、社会情勢や景気の影響を受けることもあります。

デットファイナンスが向いている企業

ここまで解説した内容をまとめると、以下のような企業がデットファイナンスに向いていると考えられます。

  • 経営の拡大に向けてまとまった資金を用意したい企業
  • 早急に資金調達できる方法を模索している企業
  • 豊富な選択肢のなかから自社に合う方法を見つけたい企業
  • 節税効果も重視する企業
  • 経営権を保持したい企業
  • 期限までに返済できる企業
  • 直近の決算が好調な企業

デットファイナンスと資金繰り表

デットファイナンスで資金調達をする際には、無理のない返済計画を立てるために資金繰り表を作成するのがおすすめです。資金繰り表とは、一定期間内に生じるお金の動きを把握するための表になります。

資金繰り表を作成すると、お金の流れの可視化が可能です。結果として、お金の返済による資金ショートを防ぎやすくなるでしょう。なお、資金繰り表のフォーマットは、日本政策金融公庫や金融機関などのホームページで公開されています。興味がある方はチェックしてみてください。

参考:各種書式ダウンロード(日本政策金融公庫)

参考:資金繰り表・経営(事業)計画書ダウンロード(京都銀行)

デットファイナンスについて解説しました

デットファイナンスは豊富な選択肢のなかから自社に合う方法を選びたい起業におすすめです。また、資金計画の立てやすさや主体的な経営を続けやすい点も魅力になります。

ただしデットファイナンスにも、財務諸表上で脆弱性が露呈するなどの注意点があります。スタートアップ時にデットファイナンスで資金調達をする際には、自社のリスクが最小限に抑えられる工夫を実践してみてください。

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Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

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