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特別注意銘柄に指定されるとどうなる?基準や指定されるデメリットを解説!

特別注意銘柄に指定されるとどうなる?基準や指定されるデメリットを解説!

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上場は多くのスタートアップ企業の目標です。しかし、新規上場や上場維持には厳しい基準があり、すでに上場している企業も維持基準を満たせなければ上場廃止となります。上場廃止にはいくつかのパターンがありますが、その中でも、証券取引所の規程に違反しつつも廃止には至らなかった企業が「特別注意銘柄」に指定されます。

「特別注意銘柄ってなに?」

「どんな理由で特別注意銘柄になる?」

「特別注意銘柄に指定されたらどうなる?」

こういった疑問に答えるため、本記事では特別注意銘柄の概要、指定される基準、指定後の流れ、指定されるデメリット、上場廃止になった企業が再上場する方法を解説していきます。

企業にとって上場廃止は大きなマイナスの影響を与えます。上場廃止につながる特別注意銘柄への指定を避けるため、その概要や基準を確認していきましょう。

特別注意銘柄とは?

日本国内の証券取引所において上場廃止の基準に抵触する可能性があり審査されたものの、上場廃止まで至らないと取引所に判断される場合があります。その中でも、上場を維持するには内部管理体制等を改善する必要性が高い、と判断された銘柄が特別注意銘柄です。旧名称は「特設注意市場銘柄」でしたが、2024年に各証券取引所の有価証券上場規程等の改正と共に名称が変更されました。

特別注意銘柄に指定されると、通常の取引銘柄とは売買取引が区別され、内部管理体制の見直しと整備が必要です。1年経過後に「内部管理体制確認書」を提出しなくてはならず、その内容に基づき審査が行われます。審査の結果、内部管理体制が改善すれば指定が解除されますが、改善の見込みがなかったり特別注意銘柄の指定が長引いたりすると、上場廃止となります。

特別注意銘柄に指定される基準

企業が発行した上場株券等が特別注意銘柄に指定されるには、いくつかの基準があります。各基準の判断は証券取引所の認めるところによるため、ここでは日本取引所グループが公開している指定の基準を紹介していきます。以下は、東京証券取引所の定める基準です。

東京証券取引所では以下に示す①〜⑤の場合で、かつ、その上場企業の内部管理体制等に改善の必要性があると判断した場合に、特別注意銘柄に指定できるものとしています。

①上場会社が以下に掲げる上場廃止基準の各号に該当するおそれがあると東証が認めた後、当該各号に該当しないと東証が認めた場合

  • 有価証券上場規程第601条第1項第6号:支配株主との取引の健全性の毀損
  • 有価証券上場規程第601条第1項第10号a:上場契約違反等
  • 上場規程第601条第1項第19号:反社会的勢力の関与
  • 上場規程第601条第1項第20号:公益又は投資者保護

②上場会社が以下に掲げる事項に該当する場合

【虚偽記載】:上場会社が有価証券報告書等に虚偽記載(有価証券上場規程第2条第30号)を行った場合
【不適正意見等】:上場会社の財務諸表等に添付される監査報告書等において、公認会計士等によって、「不適正意見」又は「意見の表明をしない」旨が記載された場合。
※ただし、「意見の表明をしない」旨が記載された場合であって、当該記載が天災地変等、上場会社の責めに帰すべからざる事由によるものであるときを除く。

 

③上場会社が適時開示に係る規定に違反したと東証が認めた場合

④上場会社が企業行動規範の「遵守すべき事項」に係る規定に違反したと東証が認めた場合

⑤上場会社が適時開示・企業行動規範に係る改善報告書を提出した場合において、改善措置の実施状況及び運用状況に改善が認められないと東証が認めた場合

参考および引用:日本取引所グループ「実効性の確保手段 - 特別注意銘柄への指定

注意が必要な点は以下の2つです。

  • 以上の①~⑤のいずれかに該当する場合で、かつ、取引所側が「内部管理体制等を改善する必要性が高い」と認める場合に特別注意銘柄に指定されること
  • ①は「表に示した内容に該当する恐れがあったが、該当しなかった場合」を示しているため、「上場契約違反」や「反社会的勢力の関与」があったと認められる場合は、特別注意銘柄に指定されない

特別注意銘柄への指定後の流れ

上述した基準に抵触すると認められ、特別注意銘柄に指定された後、企業は証券取引所の求める内部管理体制等の改善を行います。ここでは指定を受けた企業が、その後どのような流れで指定の解除へ向けた行動を行うか見ていきましょう。

指定後の流れを図にしたものが以下の通りです。

参考:日本取引所グループ「実効性の確保手段 - 特別注意銘柄への指定後の流れ

①内部管理体制等の改善

上場している株式銘柄が特別注意銘柄に指定された企業は、指定されたときから1年後に実施される審査までに、指摘された内部管理体制等を改善する必要があります。単に管理体制を見直し整備するだけでなく、適切に運用されていることも示さなくてはなりません。

審査は提出された内部管理体制確認書の内容を元に実施されます。その審査結果に基づいて以下のように取り扱われます。

内部管理体制等が適切に整備・運用されている

 →指定解除または経過観察

内部管理体制等は適切であるものの、運用が適切でない

 →指定継続

内部管理体制等が適切でない、または適切な運用の見込みがない

 →上場廃止

内部管理体制等が適切に整備されているものの、運用が適切でないと判断される場合には、特別注意銘柄の指定が継続されます。その事業年度末を期限に適切な運用を行い、再度審査が必要です。再審査の結果に基づいて、以下のように取り扱われます。

内部管理体制等が適切に整備・運用されている

 →指定解除または経過観察

内部管理体制等が適切に整備・運用されていない

 →上場廃止

②改善後の経過観察

①の内部管理体制等の改善により、体制の整備・運用に問題がなくなったものの、特定の基準に該当する企業はその後のリスクが高いと判断されます。その場合、最長で3事業年度の間は特別注意銘柄の指定を継続して、継続的に審査を実施します。

経過観察の対象となる基準は、以下の通りです。

事業の継続性・収益性が確保されていない場合

  • 直前の財務諸表又は四半期財務諸表に継続企業の前提に関する事項が注記されている場合
  • 各市場区分の利益又は純資産の額に関する新規上場基準を充足していない場合

プライム市場

  • 最近2年間における利益の額の総額が25億円以上
  • 直前の事業年度又は四半期会計期間の末日における純資産の額が50億円以上

スタンダード市場

  • 最近1年間における利益の額が1億円以上

上場維持基準に適合していない場合であって、改善期間内にあるとき

経過観察に入った企業は、各事業年度末に行われる審査で状況を判断されます。それぞれの結果に基づいて、以下のように取り扱われます。

【1回目、2回目】

内部管理体制等が適切に整備・運用されていて、上記の経過観察対象基準に該当しない

 →指定解除

内部管理体制等が適切に整備・運用されているが、上記の経過観察対象基準に該当する

 →指定継続

内部管理体制等が適切に整備・運用されていない

 →上場廃止

【3回目】

内部管理体制等が適切に整備・運用されている

 →指定解除

内部管理体制等が適切に整備・運用されていない

 →上場廃止

特別注意銘柄に指定されるデメリット

企業が特別注意銘柄に指定されると、上場廃止となる恐れがあること以外にもいくつかのデメリットが発生します。ここでは特別注意銘柄になること自体のデメリットを紹介していきます。

上場契約違約金を徴求される

上場企業が以下に示す理由で、市場や証券取引所に対する株主や投資家の信頼に悪影響を及ぼした場合、上場契約違約金を徴求される場合があります。

上場会社が適時開示に係る規定に違反したと東証が認める場合
上場会社が企業行動規範の「遵守すべき事項」に係る規定に違反したと東証が認める場合
その他上場会社が有価証券上場規程その他の規則に違反したと東証が認める場合

引用元:日本取引所グループ「実効性の確保手段 - 上場契約違約金

特別注意銘柄に指定された企業が、この上場契約違約金の徴求対象となる場合が多くあります。実際に2025年1月時点で発表されている上場契約違約金徴求会社一覧によると、徴求対象の企業はいずれも、特別注意銘柄にも指定されています。

市場区分によっても金額が変化するものの、上場契約違約金は決して安い金額ではないため、大きなデメリットです。

ただしすべての企業が対象となるわけではなく、違反の内容や影響度に応じて判断されます。

企業のレピュテーションが低下する

特別注意銘柄に指定されるということは、上場廃止の可能性が高いことに加え、内部管理体制等が適切でないことを表しています。そのため他の企業や株主、投資家などから見れば、特別注意銘柄に指定されるだけで、企業の質が低い(低くなっている)と判断されてしまいます。特別注意銘柄の指定は、証券取引所のホームページなどで公開されていることから、情報もオープンで隠すことができません。

特別注意銘柄に指定されていることにより、企業のレピュテーション(評価)は下がることになり、顧客や投資家の離脱が起こる可能性があります。業績や株価の低下が起これば、企業の価値はさらに下がってしまうため、無視できない影響があると認識しておいた方が良いでしょう。

指定解除にコストがかかる

先述の通り、特別注意銘柄の指定を受けた企業は、年単位で内部管理体制等の改善を行わなくてはなりません。審査を受けるためには、監査法人などの協力によって内部管理体制の整備や運用の客観的なアドバイスも必要になってくるでしょう。一連の体制整備や運用の実施にかかる人件費、外部協力をしてくれる法人への報酬などを考えると、指定解除を受けるまでの間に少なくないコストがかかります。

本来であれば事業に集中できたリソースが、特別注意銘柄の指定を解除するために消費され、かつ年単位の時間を使う必要があります。その影響を念頭に置いて、指定を受けない内部管理体制づくりを心がけなくてはなりません。

上場廃止になっても再上場が可能

特別注意銘柄の指定が解除されず、証券取引所に将来性がないと判断されると、上場廃止となります。しかし、一度上場廃止となった企業でも、審査基準を満たせば再上場の申請が可能です。

過去には、ソフトバンク株式会社や株式会社すかいらーくホールディングスが上場廃止後に再上場を果たしています。ただし、再上場は廃止理由によって通常の新規上場よりも厳しい審査を受ける点に注意が必要です。

新規上場の場合の形式要件は以下の通りです。

新規上場の場合の形式要件

以下の記事では上場基準につて詳しく解説しています。ぜひ併せて確認してみてください。

<関連記事>IPOは審査が厳しい?上場審査の基準や通過のポイントを解説

特別注意銘柄について解説してきました

特別注意銘柄は、上場廃止まで至らなかったものの、内部管理体制等に問題があり改善の必要性があると認められた企業の銘柄です。指定を受けないためには、内部管理体制等の見直しや整備に加えて、適切な運用を行うことが必要になります。特別注意銘柄の指定基準を知っておくことで、自社や関係企業の状況を客観的に判断できるようにしましょう。

この記事では、特別注意銘柄の概要、指定される基準、指定後の流れ、指定されるデメリット、上場廃止になった企業が再上場する方法を解説しました。

違約金の支払いや、企業の評価低下につながる可能性がある特別注意銘柄について、上場企業や上場を目指す企業の担当者の方の参考になれば幸いです。

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Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

Startup JAM編集

AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」を提供する株式会社LegalOn Technologiesの、「Startup JAM-スタートアップ向けにビジネスの最前線をお届けするメディア-」を編集しています。

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