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取締役とは?社長とはどう違う?役割や責任を、会社法からわかりやすく解説!

取締役とは?社長とはどう違う?役割や責任を、会社法からわかりやすく解説!

スタートアップのための戦略的なバックオフィス体制構築とは

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取締役は株式会社を代表し、重要な意思決定を担う役職です。会社の運営を担い、株主の利益を守る責任を持ちます。

しかし「社長」「CEO」など、よく似た役職との違いがよくわからない人も多いのでは。端的に定義すると、取締役は会社法で定められ必ず置かなくてはならない役職、それ以外の肩書は、必ずしも設置しなくて良い役職です。

今回は取締役の役割や責任、種類について、会社法をもとに詳しく解説していきます。

取締役とは

取締役は、会社の業務執行に関する意思決定を行う役職です。会社法では「株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない」(第326条)と定められています。

まずは会社法から、取締役の定義や役割を見ていきましょう。

会社法における取締役の定義

取締役は「役員」の一種です。会社法では、取締役・会計参与・監査役をまとめて役員と定めています(第329条)。役員は会社経営における重要な役割を担う役職で、労働基準法上の労働者には該当しません。

取締役または取締役会は、株式会社の業務を執行し、(第348条)原則として会社を代表する権限を持ちます。

取締役の役割

取締役の役割は、会社に取締役会が設置されているかどうかで大きく異なります。取締役会が設置されている場合と設置されていない場合の、取締役の役割・仕事内容をまとめました。

取締役会を設置している場合

取締役会を設置している場合、取締役は取締役会の決議に従って業務を執行することになります。代表取締役だけで会社の方針を決めることはできません。

取締役会とは、すべての取締役で構成される組織のことです。会社法では、次の株式会社は取締役会を置くことが義務付けられています。

  • 公開会社
  • 監査役会設置会社
  • 監査等委員会設置会社
  • 指名委員会等設置会社

(第327条)

また取締役会設置会社においては、取締役は3人以上必要です。(第331条)

取締役会では、以下の3つの職務を担います。

  • 取締役会設置会社の業務執行の決定
  • 取締役の職務の執行の監督
  • 代表取締役の選定及び解職

(第362条)

なお取締役会が主に以下の重要事項を決定する際は、取締役に委任することができません。

  • 重要な財産の処分と譲受け
  • 多額の借財
  • 重要な使用人の選任と解任
  • 重要な組織の設置や変更、廃止
  • 法務省令で定める、社債募集に関する重要事項
  • 法務省令で定める、体制の整備
  • 法に基づく責任の免除

(第348条)

取締役会を設置していない場合

取締役会を設置していない会社では、取締役は株主総会の決議に基づいて業務を執行します。取締役が2人以上いる場合には、業務の執行は取締役の過半数をもって決定されます。(別に定めがある場合を除く)

なお取締役会がない場合でも、重要事項についての決定を取締役が各取締役に委任することはできません。

取締役の仕事内容

取締役の仕事は、主に以下の5つです。

  • 取締役会への参加
  • 株式総会での説明・対応
  • 経営者への助言
  • 顧客との良好な関係性の構築
  • 損害の賠償

取締役の仕事は企業によっても異なりますが、大きな目的は「会社経営の健全化を目指す」ことです。

取締役は取締役会や株式総会に参加し、企業の現状や業績、将来への展望を話し合います。また顧客や株主を含むステークホルダーに対しては説明責任を負わねばなりません。さらに経営者への助言を行ったり、顧客との関係性をつないだりして、会社の成長を支えます。

一方取締役が会社に損害を与えたときには、賠償の義務を負うこともあります。

取締役の仕事とは会社を支え、成長や発展に責任を持つことだと言えるでしょう。

取締役の任期

取締役の任期は、会社の形態によって異なります。基本的な任期は「選任後2年以内に終了する事業年度の最終定時株主総会の終結時まで」です。任期は定款や株主総会の決議によって、短縮することができます。

そのほか会社の形態ごとの取締役の任期は、以下のとおりです。

非公開会社

  • 定款の定めにより任期を最長10年まで延長することができます。ただし監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社には適用されません。

監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社

  • 取締役の任期は1年です。監査等委員である取締役については、任期の短縮はできません。
  • なお監査等委員である取締役が任期途中で退任した場合、その補欠として選任された取締役の任期は、退任した取締役の残りとなります。
  • また会社が監査等委員会や指名委員会等の設置に関する定款変更を行った場合、その時点で取締役の任期は満了します。

取締役の責任範囲

取締役は任務を怠ったことで会社に損害を与えた場合、その損害を賠償しなくてはなません。

たとえば以下のような場合には、損害賠償責任が発生します。

  • 取締役が会社との間で不適切な取引を行い、会社に損害が生じた場合
  • 取締役が会社の承認なく、会社と競合する取引を行った場合
  • 取締役会で不適切な取引を承認する決議に賛成した場合

(第423条)

取引によって取締役や第三者が利益を得た場合、利益額は会社の損害額として推定されます。また会社に損害が生じた場合、該当の取引を決定したり承認したりした取締役は、任務を怠ったとされる仕組みです。

ただし取締役が監査等委員会の承認を受けて取引を行った場合は、この限りではありません。これは取締役の責任を免除する仕組みのひとつです。

さらに取締役は、株主や取引先などのステークホルダーに対しても責任を負うことになっています。

取締役の選任要件

取締役を含む役員は、株式総会の決議によって選任されます。株主総会で決議されれば、役員はいつでも解任することが可能です。なお正当な理由なく解任された者は、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます。(第339条)

また以下の場合は、取締役になることができません。

  • 法人
  • 特定の法律において罪を犯し、刑の執行後2年以内の者
  • 規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑が執行中の者

(第331条)

取締役の報酬

取締役の報酬等には固定報酬のほか、賞与や株式等、職務執行の対価として受けるすべての財産上の利益が含まれます。定款に定めがない場合、取締役の報酬は株主総会の決議で決定しなくてはなりません。

また給与は全額損金として会計に計上できますが、別途、計上方法の規定が定められています。

なお役員報酬には割増賃金や最低賃金の規定が適用されず、雇用保険や労災保険の対象にもなりません。ただし健康保険と厚生年金保険は対象です。

 

取締役の種類

取締役には、会社での役割や権限に応じていくつかの種類があります。会社法で明確に定められた取締役と、会社が独自に設定する取締役に大別されます。

会社法で規定された取締役

会社法では、主に3種類の取締役が定められています。

代表取締役

会社を代表する権限を持つ取締役です。取締役会を設置している会社では、必ず代表取締役を選任しなければなりません。

一方取締役会が設置されていない会社では、代表取締役を置かないこともあります。代表取締役会がない会社では、各取締役が代表権を持ちます。

 

社外取締役

社外から選出される取締役です。社内の利害関係から独立した立場で、客観的な視点から会社の監督・監査を行います。なお上場会社では2021年3月から、社外取締役の選任が法律で義務付けられました。

 

業務執行取締役

会社の具体的な事業活動に関与する取締役です。社外取締役は、業務執行取締役になることはできません。

代表取締役、取締役会で業務執行者として選定された取締役のほか、実際に業務を執行する取締役が該当します。

法令上の定義がない取締役

会社法には定められていないものの、会社が独自に設定する取締役の役職があります。主に会社内での序列や職務を区別するために用いられる名称です。

専務取締役

社長の次席として位置づけられる役職です。会社の経営を円滑に進めるため、社長を直接補佐する重要な役割を担います。

常務取締役

専務取締役の次の職位に位置づけられます。社長の補佐役として、特に会社の日常的な業務の管理や監督を担当します。

平取締役

代表取締役以外の、代表権を持たない取締役です。代表ではないというだけで、代表取締役と同様に、取締役会での議決権を持っています。

こうした役職は、会社の規模や業態に応じて設定されるものです。具体的な権限や責任は各会社の定款や社内規程によって定められます。

類似する役職等

取締役制度とは別に、会社にはさまざまな役職が設けられています。そのうち取締役と混同されやすく、役割の近い主な役職をまとめました。

社長・会長・CEO

一般的に、会社の代表者を指す名称です。代表取締役が社長を兼ねる「代表取締役社長」という呼び方もあります。対外的に、会社の代表者であることを示すための肩書です。

執行役員

会社法で定める役員とは異なり、会社の意思決定には直接関与しません。経営方針を実際に実現したり、各事業部の業務執行を担当したりする実務的な役割を担います。

取締役になるメリットとデメリット

取締役になることは、大きな権限と機会を得られる反面、重い責任も伴います。会社の経営に携わる立場のメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット

取締役になることで得られる最大の利点は、会社経営へ深く関与できることです。取締役には経営方針の策定から事業計画の立案まで、会社の重要な意思決定への参加が求められます。

また取締役には定年がないことも大きな特徴です。一般の従業員には定年が定められていますが、取締役は会社に必要とされ、健康である限り、経営に携わり続けることは少なくありません。

さらに報酬面でも、役割と責任に見合った待遇を受けることができます。一般的に取締役の報酬は従業員よりも高額となり、会社の業績に連動した報酬制度が適用されることもあります。自身の経営手腕が直接報酬に反映される仕組みと言えるでしょう。

デメリット

取締役には重い責任が伴います。会社の重要事項を決定する立場として、その判断が会社に与える影響は極めて大きくなるからです。誤った判断で会社に損害を与えた場合は賠償責任を負うこともあり、場合によっては第三者への賠償責任も生じます。

また取締役は労働法の保護から外れることにも注意が必要です。従業員ではないので、労働基準法が適用されません。つまり有給休暇の付与や、労働時間の制限といった保護を受けることができないのです。

さらに雇用保険や労災保険にも加入できないというデメリットもあります。退任しても失業給付は受けられず、業務中の事故やケガに対する労災保険の補償もないということです。

取締役になることは経営者としての大きな権限を得る一方で、従業員としての保護が失われることを意味します。

取締役を選任するポイント

企業が取締役を選任する際は、会社の規模や事業内容、経営戦略に応じて、適切な人材を適切な役職に配置することが重要です。

会社法上の取締役

まず基本となるのが会社法で定められた取締役の選任です。代表取締役は、会社を代表し重要な意思決定を行う権限を持ちます。経営手腕と責任感を兼ね備えた人材が必要です。

また社外取締役は、客観的な視点で会社の監督を行う立場になります。業界知識を持ちながらも会社との利害関係のない独立した人材が適していると言えるでしょう。

業務執行取締役は実際の事業運営を担うため、実務経験が豊富で組織をまとめる力のある人材が適任です。

それぞれの役割に適した人材を採用することが、より安定した企業体制の構築につながります。

職務や序列による役職

会社独自の役職として専務取締役や常務取締役を置くと、取締役間の序列や役割分担を明確にすることができます。専務取締役は社長の右腕として、常務取締役は日常業務の管理者として、それぞれの立場で会社の円滑な運営を支えることはよくあるパターンです。

採用の際は優秀な従業員や、理念を共有できる協力者が候補となります。いまいる役員との相性はもちろん、足りない部分を補える人材を選ぶことも大切です。

会社の需要に応じて法定の役職と任意の役職を組み合わせることで、効率的な経営体制を目指しましょう。

取締役について解説しました

取締役は会社の重要な意思決定機関として、大きな権限と責任を持つ役職です。取締役会の有無によって役割は異なりますが、いずれの場合も会社の業務執行や監督において中心的な役割を果たします。また会社法で定められた役割以外に、会社独自の取締役が設定されていることも多いです。

取締役になることは、経営への参画という大きな機会を得られる一方で、重い責任も伴います。会社の状況や自身の能力を十分に考慮した上で、取締役就任を検討することが大切です。

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