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スタートアップをけん引するリーダーたちが語る!成功に導く組織づくりとコーポレート体制の取り組み

スタートアップをけん引するリーダーたちが語る!成功に導く組織づくりとコーポレート体制の取り組み

スタートアップのための戦略的なバックオフィス体制構築とは

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スタートアップが事業の成長と持続可能な成功を実現するために、事業推進を支える強靭なコーポレート部門の構築が重要なことは広く認知されています。しかし、具体的にいつ、どのようなポイントに留意すべきかは手探りの企業が大半と考えられます。今回はスタートアップの事業をリードする皆さまをお招きして、それぞれの知見や経験を語っていただきました。

■ 登壇者

JAM座談会01登壇社ロゴ一覧

スタートアップを持続可能な成功に導くための組織づくりとは?

武田 皆さま、このたびはお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。本日は「スタートアップの舞台裏:強靭なコーポレート体制の作り方」をテーマに、スタートアップの最前線で活躍されている方々と議論してまいります。

JAM座談会01オープニング

吉田 スタートアップを成長させ、持続可能な成功に導くには、事業を支えるコーポレート体制の構築が不可欠です。事業のフェーズによっても、体制づくりのポイントは変わります。

今回はコーポレート体制強化に向けて最初に取り組むべきポイント、事業が拡大局面に入り、選択と集中が必要なフェーズで何をすべきか?といった点について、皆さまのお考えを伺いながら、議論を深めてまいります。

座談会の開始にあたり、まずは皆さまのこれまでのご経歴や現在のお仕事についてお話しいただけないでしょうか。

株式会社Saleshub 江田さま

株式会社Saleshub 江田さま

江田 当社は、全国5万人のビジネスパーソンの紹介によって、大手企業の決済者との商談を獲得できる顧客紹介サービス「セールスハブ」を開発しています。私は高校生のころから小さい事業をスタートし、大学には進学したもののビジネスを続けていたため中退し、その後、会社を立ち上げています。そのため一般的な企業での就業経験がなく、コーポレート部門の構築には苦労しました。本日はそのあたりの経験を踏まえてお伝えできればと思います。

株式会社ビースポーク 綱川さま

株式会社ビースポーク 綱川さま

綱川 当社はAIチャットボット「Bebot」を開発しており、主に自治体や交通機関のDXを支援しています。最近は生成AIを活用した外国人労働者のトレーニング事業にも力を入れています。当社は社員の半分近くを外国人が占めており、多様なバックボーンを持つメンバーで構成された組織づくりの知見をお話しします。株式会社ゼロボード 渡慶次さま

株式会社ゼロボード 渡慶次さま

渡慶次 当社は企業のESG関連データの収集・管理・開示を支援するクラウド基盤「Zeroboard」を開発しており、正社員数は130名ほどです。ここまでは個人の能力とチームワークで事業を伸ばしてきましたが、そのやり方では通用しないフェーズに突入し、ミドルマネージャーの育成など強靭な組織づくりが目下の課題です。Uniforce株式会社 中島さま

Uniforce株式会社 中島さま

中島 当社はクラウド型サービス「Uniforce」の提供及びコンサルティングサービスの両軸で、IPO準備企業の支援や、上場企業の決算開示業務のサポートを行い、企業のガバナンス体制の強化を支援しています。私は当社のクライアント全体を俯瞰している立場ですので、組織づくりにおける企業のリアルな悩みや課題をお伝えできればと思います。

パートナーサクセス株式会社 永田さま

パートナーサクセス株式会社 永田さま

永田 当社は「アライアンスをハックする」をミッションに掲げ、次世代型代理店連携管理クラウド「PartnerSuccess」を展開しています。私は今回が二度目の起業で、一度目は50名規模でビジネスメンバーのみの組織でした。今回は、人数は30名程度ですが、約半分をデザイナーやエンジニアが占め、異なる文化のメンバーを集めた組織づくり特有の課題を日々感じています。株式会社Buddy Cloud 松山さま

株式会社Buddy Cloud 松山さま

松山 当社は愛犬・愛猫向け健康管理アプリ「Buddy Medical Check」の開発や、それに紐づく家庭用検査キットの販売、東南アジアでのオンライン診療などを行っています。ペット業界のデジタル化を通じ、後悔のないペットライフを実現することを目指しています。現在創業2期目で、今回の中で最も若い会社です。

スタートアップのコーポレート体制。最初に取り組むべきことは?

吉田 皆さまの事業フェーズやバックグラウンドを踏まえて、スタートアップの立ち上げ1~2年目の初期において、最優先で取り組むべきことについての考えをお聞かせください。

JAM座談会01江田さま

江田 私は「経営者自身のコーポレートへの意識改革」です。私は一般的な企業での就業経験がないため、コーポレート部門に関する知識はゼロからのスタートでした。

コーポレート部門の業務に関する本を数十冊読み、基礎を学んだ上で、リスペクトを持ってコミュニケーションに取り組みました。コーポレート部門のメンバーに「社長はコーポレートの仕事もある程度は分かってくれているんだ」と安心感を抱いていただき、円滑なコミュニケーションが取れるようになることがスタート時においては大切だと考えています。

JAM座談会01網川さま

綱川 私は「魔法つかいの採用」です。「魔法つかい」というのは、広範囲な業務をそつなくこなせる、何でも屋さん的な存在の社員です。

当社は私と外国人のエンジニア5名で立ち上げたので、細かな雑務も私が対応していまして、コーポレート人材は3年目まで採用できませんでした。今思えば、自分の時間に対する価値を深く考えていなかったと反省しています。

スタートアップは10人のフェーズ・50人のフェーズで全く必要な人は変わってくると思っていて、やり直せるなら、より早い段階からそのフェーズにマッチした「魔法つかい」のようなコーポレート人材を採用します。JAM座談会01渡慶次さま

渡慶次 綱川さんと似ていますが「リベロを採る」です。初期にいきなり法務や経理のスペシャリストを採用するのはコストが高すぎるので、まずは広く浅い知識を持つリベロ人材を確保します。

コーポレートは外注可能な機能も多いので、リベロ人材にその整理も含めて担ってもらい、事業の成長にあわせて段階的に専門組織を作ります。重要なのは、創業者が事業立ち上げに集中できる環境をつくること。そのためにはリベロ人材が1人いるだけで組織運営は非常に楽になりますね。

JAM座談会01中島さま

中島 当社は「目指したい姿からの逆算」です。ここまでの皆さんは自身が事業に集中するために必要なものという目線でしたが、私は最初にこれを持ってほしいと思っています。

もう少し先の大まかな絵を想像し、そこから逆算して何が必要かを考えて準備しないと、やりたいことに集中が出来なくなるリスクが生まれます。「魔法つかい」や「リベロ」も逆算した結果、本来は必要だったはずのものなんですよね。きっと。

シード期の起業家には、目の前の事業開発に集中するあまり、ガバナンスや組織体制の計画をおろそかにする方が少なくありません。「いつかIPOしたい」といった漠然とした目標ではなく、そこから逆算して1~2年単位での中間目標を明確し、その実現に必要なアクションを定義し、まずイメージを描くことが大切です。

吉田 CEOは事業の解像度は高い一方、経営の解像度が必ずしも高いとは言えないケースはあると思います。また事業には不確実性がつきもので、きれいな逆算計画を立てるのは難しい面もあります。具体的にどのような進め方を意識すれば最適解に近づけるのでしょうか。

中島 外部の意見に耳を傾けることが重要です。社内のみで考えた計画には「根拠の無い自信」も相応に含まれます。社内の意見を多く聞き、必要な部分を取り入れて裏付けを取れることで、計画の精度も高まります。

JAM座談会01永田さま

永田 私は「最小・外注化」です。1~2年目のスタートアップは売上も十分に確保できず、コーポレート部門に回せるリソースは限られています。コーポレートだけを見る社員を1人採用するのですら、ハードルは高いでしょう。当社は初期のコーポレート業務は全て業務委託の方に外注し、かつ、初期段階では多くを求めすぎないように心がけました。最初から万能な人はいませんし、時間が経てばそのうち質は高まるだろうと。良い意味で割り切っていましたね。その後だんだん業務が増え、組織も大きくなってきていた2年後には、その方に社員になっていただきました。

中島 最初はお互いカルチャーマッチするかどうかは分からないから、まずはフルコミッションじゃない形から始め、一緒に仕事をしているうちに自社の事業に共感し、成長していただけた方を、そのまま採用につなげる流れがいいですね。

JAM座談会01松山さま

松山 私は「CEOのジョブを考える」です。スタートアップって、結局はCEOが全てみたいなところがあるので、CEOはプロダクト作りやVCとの折衝に集中すべきだと思っています。では、それ以外の業務はどうするかというと、経営視点を持ちつつ、現場でも動けるプレイングマネージャーを集めるのが鍵になります。

スタートアップの初期って、どんなに経営目線があっても、結局はみんな現場に降りて業務を回さないといけないんですよね。だからこそ、実務をこなしながら組織全体を見られる人がいると、めちゃくちゃ強い。ここを最初にしっかり固めて、業務をマニュアル化できれば、あとがすごく楽になります。

最初にどれだけ濃度の高い人材を集められるかが、その後の成長スピードを左右すると思っていて、だからこそ、そこには積極的に投資すべきだなと考えています。

吉田 皆さまの話をまとめると、

  1. CEOは事業にコミットすべき
  2. 目標から逆算した計画を描く
  3. 計画実現の土台作りにはリベロ、「魔法つかい」の人材が重要で、それを社内で調達するか外注するかは投資対効果やリスクを比較して考える
  4. 余力があればプレイングマネージャーを確保できるとなお良い

以上の4点がポイントだと言えそうですね。

成長局面でのコーポレート体制強化に必要なこと

吉田 第一のトークテーマについて、皆さまの経験・知見をお聞きすることができました。続いて第二のトークテーマ「コーポレート体制の強化に必要なこと」に移りたいと思います。例として、30名規模に成長し、資金調達により事業にドライブをかける時期に差しかかったスタートアップを想定し、必要な施策について皆さまの考えを広くお伺いできればと思います。JAM座談会01現場風景1

松山 ずばり「スピリチュアルに走る」です。正直あえて極端な表現をしています(笑)が、コーポレート体制の強化とは、つまるところいかにして社員のエンゲージメントを向上させるかです。コストをかけずにエンゲージメントを高めるには、ある意味スピリチュアル的な要素を取り入れることが有効です。

たとえば、会社のビジョンをより明確にして全社に落とし込むとか、社員全員での瞑想やヨガといったアクティビティなら無料でできますし、時には業務ではなく個々人の想いやキャリアに寄り添うことに振り切った1on1を徹底しても良いでしょう。見える部分の改善より、こういった内側のマインド面のアプローチによって、いかにして社員が離脱しないような帰属意識を高められるかが重要だと考えます。

吉田 確かに30人のフェーズに入ると、一体感を作り上げて、組織の火力を高めていくためにスピリチュアルはとても重要な要素かもしれませんね。

JAM座談会01永田さま2

永田 私は「共通言語」です。30人規模は、まだトップが全員と直接話せますが、徐々に階層ができてくる時期です。バックボーンが異なるメンバーが増える中、共通言語が無いとバラバラになっていきます。

現在、当社は私が入社時のオンボーディングを担当し、事業のビジョン・ミッションから、会社とは?スタートアップとは?といった点まで、私の考えを明文化して伝えています。これを始めた後は、入社後の意識のズレが明らかに少なくなったよう思います。

組織が階層化していくと伝言ゲームが増え、どんどん言語がずれていくため、その共通言語を適切に浸透させられるミドルマネジメントと、明確な目標を共通言語化することも同時に重要だと思います。

渡慶次 私は「スタートアップ2周目(orそれ以上)人材の採用」ですね。大企業で活躍したからといって、スタートアップで同じパフォーマンスを出せるとは限りません。スタートアップ特有の課題やカオスな事象が噴出するからです。

一度それらを経験して耐性や免疫がついている人を要所に配置できると、マネジメントは楽になり、組織も強固になりますね。そして特にコーポレートにおいてはそういう人材が必要かもしれないと思います。JAM座談会01現場風景2

綱川 私は「KAIZEN⇒システム化or外注」です。トヨタ式のカイゼンマインドを根付かせられるかが肝です。無駄を排除し、業務を仕組み化して、本来注力すべき業務に集中できる環境を整える。拡大期に入ったコーポレートこそ絶対にこれが必要です。

それこそ、法務業務ならばLegalOn Cloudのようなシステムを活用すれば良いでしょう。すべての業務を社内で抱えることは難しいため、外注の活用も有効な選択肢です。カイゼンの進捗は定量的に細かくモニタリングし、企業文化として浸透させます。それを当たり前にし、そこをディレクションできる人材には積極的に投資すべきだと考えています。

永田 綱川さんの会社で取り組まれているカイゼンの重要性はよく理解できました。ただ、それを社員に実践してもらうためのインセンティブはどのように設計されていますか?特にコーポレート部門では、成果に対して直接評価をつけるのが難しいこともあると思うのですが、「ただ締め付けられているだけ」と感じさせない工夫などはされていますか?

綱川 きちんとカイゼンが必要なポイントごとに責任者を立ててチームを編成し、そのチームがどれだけ改善できたかをモニタリングできる仕組みを作った上で、出した成果を賞与などで反映できる体制にしています。

JAM座談会01現場風景3

江田 私は「発信とリスペクト」です。営業部門とは異なり、コーポレート部門の成果は目に見えにくいものです。売上のような明確な指標がなく、「何ができたからすごい」といった評価や賞賛を受けにくい側面があります。だからこそ、コーポレートの貢献をリスペクトし、それを適切に発信できる場や企業風土を作ることが重要です。当社では、全社員参加の朝会を設け、社員同士がリスペクトを持って情報を発信し合う文化を大切にしています。

企業が拡大フェーズに入ると、コーポレート部門は少ないリソースの中で、より難易度の高い業務を求められるようになります。その上で、成果が見えづらい点にも配慮しながら、適切に評価し支えていくことが必要です。

吉田 確かに重要なことですね。当社でも 600 名規模になっても同じことやっています。毎週全社員の定例があって、コーポレートを含む各部門からの発信や、代表が自らマイクを取って全社員への情報発信を今でも続けています。

JAM座談会01現場風景4

中島 私は「外部リソースの積極活用」です。そうとは言っても、何でも外注やシステム化をすれば良いわけではありません。脳(思考や意思決定)は社内に置きつつ、手(作業)は外部に頼る、といった適切な切り分けが重要です。たとえば、習得するのにコストがかかったり、一度きりしか発生しないIPO関連のイベントのような業務は積極的に外注して良いと思います。

また、成長の段階によっても必要な人材や業務は変化します。上場2期前ごろまでは社内で業務をカバーできることが多いですが、上場1期前はタスクが大幅に増え、リソース不足が顕著になります。その際、採用による補填か外注の活用かを適切に判断することが重要です。

江田 人的リソースの面では、情報システム担当者の採用は早めに動いた方が良いですね。拡大期は使用するシステムが増え、ファシリティの手配や利用方法のレクチャーなどの負担が想像以上に発生します。先に経営をした知人からの助言で、当社は早期に情報システム担当メンバーにジョインしていただきましたが、結果として大正解でした。

JAM座談会01吉田さん

株式会社LegalOn Technologies 吉田(モデレーター)

吉田 当社のサービスを導入いただいた際のカウンターパートに貴社の情シスの方に立ってもらい、コミュニケーションを取ったことがあります。非常に攻守のバランスが取れた情シスだという印象を持ち、江田さんの「採用して正解だった」という感覚がとても理解できます。

スタートアップのコーポレートは、会社が気持ちよくアクセルを踏める状態を支える「攻め」と、やってはいけないことを止める「守り」のバランスが非常に重要で、このブレーキにならない情シスの存在って本当に大事だなって思います。

最後に皆さまの話を総括すると、30名規模になったスタートアップは、スピードや機動性を保ちつつ仕組化・組織化が必要なタイミングだと改めて分かりました。組織面では共通言語スピリチュアルな要素を用いて社員のエンゲージメントを高め、同じ方向を向いて進むための自社のカルチャーを浸透させる。人材面ではミドルマネージャースタートアップ2周目のタフな人材仕組化と改善をディレククションするブレーン、などの採用を強化する。業務面ではカイゼンを常に行いつつ内製/外注/システム化を判断することが重要と言えそうです。

投下できるリソースが限られる中、いかにリスクを分散しつつ、選択と集中を進め、事業を支える強靭なコーポレート部門をどう築いていくか。皆さまのお考えがとても参考になりました。

本日は皆さまお忙しい中、本当にありがとうございました!

(2025年2月27日収録)

Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

Startup JAM編集

AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」を提供する株式会社LegalOn Technologiesの、「Startup JAM-スタートアップ向けにビジネスの最前線をお届けするメディア-」を編集しています。

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