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グループガバナンスとは何か?導入目的や構築のポイントを解説

グループガバナンスとは何か?導入目的や構築のポイントを解説

スタートアップのための戦略的なバックオフィス体制構築とは

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グループ化した企業が早い段階で構築すべきものとして、グループガバナンスが挙げられます。グループガバナンスの構築によって、企業価値の底上げや、本社と子会社の役割分担の徹底などの実現が可能です。

この記事では、グループガバナンスとはどのような概念なのか、具体的な導入目的や、構築に際して知っておきたいポイントを解説します。会社のグループ化を検討している際には、ぜひその仕組みについてご確認ください。

グループガバナンスとは

グループガバナンスとはその名の通り、グループ全体のガバナンスを強化するための取り組みです。グループガバナンスは会社法と経済産業省の間で定義が分かれており、それぞれの違いを把握しておきましょう。

グループガバナンスの定義

まずは、会社法と経済産業省において、それぞれどのような定義付けがなされているのかを確認します。以下の表は、両者が伝えるそれぞれのグループガバナンスを簡単にまとめたものです。

会社法

  • 株式会社およびその子会社から形成される企業集団において、業務の適正を確保する体制の整備

経済産業省

  • 子会社を保有しグループ経営を行う企業において、グループ全体の企業価値向上を図るためのガバナンス

会社法におけるグループガバナンスは、かなり明確に定義されていることがわかります。上の表の文言は、会社法のなかで直接触れられているグループガバナンスの定義で、「業務の適性を確保する体制」というのがポイントです。例え親会社と子会社で会社が分かれた場合でも、滞りなく業務が遂行されるための仕組みを、会社法は求めます。

一方の経済産業省は、会社法とは異なる視点でグループガバナンスを捉えています。後述しますが、経産省はグループガバナンス強化に向けたガイドラインを一般に公開しました。その中で経産省はグループガバナンスを、企業価値の向上をグループ会社で実現するための体制としています。

二つの定義を整理しましょう。グループガバナンスについて、会社法は業務の適正化を目的とした仕組みと考えています。一方の経産省は、グループガバナンスを企業価値向上、つまり「攻め」の手段として捉えているのが特徴です。これらの考え方は二者択一ではなく、同時に実現ができます。グループガバナンス整備の際には、これらの定義に則って進めていくことが大切です。

グループガバナンスの適用対象

グループガバナンスの適用対象は、基本的には国内で経営される全てのグループ会社です。経産省のガイドラインでは、グループ経営を行う上場企業で、それでいて持続的な成長を目指している企業が構築を進めるべきとしています。

またグループガバナンスは必ずしも、国内有数の大企業にのみ適用するべきというわけでもありません。ガイドラインでは非上場のグループ企業や、今後グループ経営を考えている企業にとっても有効としています。そのため会社の目的や業種、規模を問わず、グループ化を検討している場合には検討しておきたい枠組みです。

参考:経済産業省 グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)

グループガバナンスで目指すべき目的

グループガバナンスを導入するにあたり、どのようなゴールを設定すべきでしょうか。主な目的には、以下の3つが挙げられます。

リスクの最小化

グループガバナンスの実現は、リスクの最小化という面で一定の効果が期待できます。グループガバナンスが正しくグループ内で共有されることにより、グループとしての一体感を保てるからです。子会社と本社で方向性に違いが生まれ、チグハグなグループとなり、運営がままならなくなるリスクを回避できます。

会社法への対応

グループガバナンスの整備を直接義務付ける法律はありませんが、会社法への対応においては重要な取り組みです。会社法では、グループ会社に対し内部統制の体制構築を求めています。会社単体ではなく、グループ全体での適正化においては、グループガバナンスの整備が効果的です。

株主への説明責任の遂行

株主への説明責任を果たす上でも、グループガバナンスは役に立ちます。グループ会社は株主に対し、経営状況や業務における結果を説明しなければなりません。

あらかじめグループガバナンスを整備しておけば、グループ会社であっても説明しやすい状況を作ることができます。グループ一体となった戦略の遂行や役割分担を徹底し、コミュニケーションに齟齬が生まれるリスクを回避できるからです。

コーポレートガバナンスとの違い

グループガバナンスを考える上では、コーポレートガバナンスとの比較においても把握しておくと良いでしょう。両者には大きく分けて、2つの違いがあります。

1つ目は、コーポレートガバナンスが単一企業を対象としているという違いです。グループガバナンスはグループ全体の、複数企業を指す概念であるため、対象範囲が異なることを知っておきましょう。

2つ目は、主体の違いです。コーポレートガバナンスは、株主の視点から見た組織運営を指します。会社あるいは経営者が、株主の利益最大化に正しく寄与しているかをチェックするために設ける枠組みです。一方のグループガバナンスは、経営者を主体とした枠組みです。グループとしての価値向上が正しく行われているか、グループのトップが管理するために整備します。

<関連記事>コーポレートガバナンスとは?経営者が知るべき目的・強化方法を解説

なぜグループガバナンスは重要なのか?

グループガバナンスの整備は、コーポレートガバナンスとは別に求められるようになってきた概念です。グループガバナンスの重要性が高まっている理由には、以下の2つが挙げられます。

グループ全体の価値を維持・向上するため

グループガバナンスの獲得は、グループ全体で企業価値を高い水準で維持し、さらに高めていく上で重要な取り組みです。

グループ会社が抱えやすい問題として、グループ内でのリソース配分などがうまくいかず、会社間の業績や生産性にギャップが生まれるものが挙げられます。グループガバナンスの整備は、このようなギャップの解消に効果的です。グループ内での壁や文化の違いを取り払い、柔軟なグループ経営をもたらし、利益率を高められます。

グローバル競争の激化に対応するため

グループガバナンスが特に求められるようになった理由には、グローバル競争の激化も背景に挙げられます。競合が次々と現れ、マーケットのトレンドも日々変化する中では、迅速な意思決定と行動が欠かせません。

グループガバナンスの実装は、このような環境の変化にも柔軟に対応するため重要です。グループ全体の統制を実現し、臨機応変な対応をグループ全体で実現できるよう促します。

経産省の「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)」について

上でも紹介してきた、経産省のグループガバナンスに関するガイドラインは、以下の5つの事項について解説しています。それぞれの事項への理解を深めることで、建設的で効果の高いグループガバナンス構築が実現するでしょう。

  • グループ設計:グループ全体を一つの組織として、どのように設計するか
  • 事業ポートフォリオのマネジメント:グループ企業が取り組む事業運営において、経営資源をどう配分するか
  • 内部統制:グループとしてのリスク管理と価値向上に向け、どうやって体制を整えるか
  • 子会社経営陣の指名と報酬:子会社の経営陣をどうやって指名するか、その報酬をどうやって決定するか
  • 上場子会社に関するガバナンス:親会社と上場子会社の間で発生しうる利益相反のリスクにどう対処するか

グループ設計は、グループ全体をどのようにひとまとめにしていくかという設計方針の立て方について触れたものです。グループ全体の経営戦略や、本社と子会社の役割について明確にしていくことで、整合性を確保します。

事業ポートフォリオのマネジメントは、リソース配分を目的達成のために適正化する上での、管理体制の構築です。資源を集中すべき事業や子会社とそうでないものを明確にすることで、組織全体で高い収益性を獲得できるよう促します。

内部統制においては、グループ全体で業務の適正化を実現するための取り組みが重要です。リスクマネジメントの実現、および現場におけるコンプライアンス意識の醸成が、グループとしての質を高める上では欠かせません。

グループ全体の一体感の確保には、子会社のトップの決め方にも工夫が求められます。一体的運営と企業価値の向上を両立できる人物の起用や、そのための後継者育成が必要です。

上場子会社に関するガバナンスにおいては、親会社と上場子会社の間にある利益相反のリスクへの対処が求められます。具体的には、親会社は親会社の利益最大化を、株主は子会社単体の利益最大化を目指すリスクへの対象です。

これらの事項への適切な対応によって、経産省は優れたグループガバナンスを実現できるとしています。

グループガバナンスにおける課題

グループガバナンスの実現に際しては、検討すべき課題もあります。以下の3つの懸念事項は、優先して対処しなければなりません。

  1. ビジョンの浸透がグループで十分に進んでいない
  2. グループ本社の役割が消極的なものにとどまっている
  3. M&Aで参画した企業の不十分な統合

グループガバナンスにおけるビジョンやコンセプトの重要性は、紹介している通りです。これが形骸化し、本社以外での共有が不十分だと、期待しているようなガバナンスは発揮できません。グループ本社は、子会社を主体的に取りまとめ、問題解決に取り組むことが大切です。子会社に対しての権限や役割を明確にし、機能的なグループを目指しましょう。

また、外部から参画した子会社については、文化レベルでのグループインに向けて働きかけることが大切です。ルールの整備や浸透に向け、時間をかけて取り組むことが求められます。

グループガバナンス構築の進め方

このように、グループガバナンスの実現に際しては多くの過程を踏まなければなりません。重要なのは、構築の過程で以下のプロセスを踏まえることです。

本社機能を最適化する

グループガバナンスの構築にまず必要なのは、本社機能の最適化です。本社がどこまでの役割を担うのかを整理の上、子会社との連携を強化するための体制を整えます。

本社は単に子会社の管理を行うだけでなく、グループの利益最大化に向けた戦略策定や、シナジーの創出も必要です。その上でリスク管理を徹底し、意思決定の責任を取れると良いでしょう。

子会社の存在感が大きすぎる、あるいは本社機能が極端に消極的だと、グループとしての目的達成が難しくなります。子会社で生まれた成果をきっかけとするグループのシナジーが生まれないなどの問題をもたらし、グループである意味がなくなってしまうからです。

本社が傍観者になることのないよう、責任とビジョンを持ってグループを取りまとめる主体性が求められます。

本社・子会社の方針やコミットの程度を明確にする

グループとしての利益を最大化するには、子会社の役割やそれに応じた適切なリソースの配分が必要です。子会社でやるべきことを戦略的に整理し、客観的に評価することで、グループ会社が一体となって成長を目指せる体制に改善できます。

それぞれの子会社に対してグループとしての方針を通達し、その上でリソースの割り振りを実践することにより、組織力を高められるでしょう。

ルールの整備と実践を進める

グループガバナンス実現に向けたルールの整備によって、現場での実践を促します。業務の進め方やコミュニケーションのプロセスについての取り決めを具体的に行い、認識にギャップが生まれたり、役割分担の機能不全を回避しましょう。

M&Aなどを通じてグループに参画する子会社がある場合、文化的な醸成からスタートしなければなりません。このような組織を傘下に持つ場合、ルールの浸透には特に力を入れるべきでしょう。

モニタリングと改善を繰り返す

グループガバナンスが正しく機能するまでは、繰り返しの効果測定と改善が重要です。内部監査などを行い、運用状況を適宜モニタリングしましょう。

うまくガバナンスが機能していない場合は、どのあたりで問題を抱えているのかの分析に力を入れるのが大切です。どうすれば課題を解決できるのかを考え、有効な解決策を見つけられるまで、PDCAサイクルを回すことが求められます。

グループガバナンスについて解説しました

この記事ではグループガバナンスとは何か、どのように構築していけば良いのかについて解説しました。競争力の強化やリスク管理の強化において、グループ会社におけるガバナンスの構築は不可欠です。

特にM&Aなどを通じてグループインした子会社を抱えている場合、文化的な違いなどを乗り越えるのに時間がかかります。スムーズにシナジーを生み出していけるよう、戦略的な構築プロセスを踏むことが大切です。

またグループガバナンスの構築には、本社が具体的なビジョンを持って、主体的にグループをまとめていく責任と覚悟も求められます。子会社を見守るのではなく、取りまとめていけるような仕組みを整備していきましょう。

スタートアップのための戦略的なバックオフィス体制構築とは

Startup JAM編集部
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