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行動指針とは?ビジネスにおける重要性や作成・浸透のポイントを詳しく解説

行動指針とは?ビジネスにおける重要性や作成・浸透のポイントを詳しく解説

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近年のビジネス環境では、働き方改革やダイバーシティ経営などの影響から、1つの職場内で多様な文化的背景や価値観を持つメンバーが一緒に働くことが多くなりました。

こうしたなかで、すべてのメンバーが自社の成長などを目的に同じベクトルで仕事をするためには、企業が行動指針を作成し、組織内に浸透させることが必要です。

この記事の前半では、行動指針の概要や具体例、作成・浸透で得られる効果などを確認します。そのうえで、記事の後半では、実践編として行動指針の作り方や浸透方法、注意点などを解説しましょう。

行動指針の新規作成や効果的な内容への見直しを考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

目次

行動指針とは

行動指針は、英語で「guidelines for action」などとあらわされる言葉です。これを直訳すると「行動へのガイドライン」になります。

行動指針の具体的な意味や定義は、同じシーンで使われることが多い用語との関連性に注目することでよりイメージしやすくなるはずです。ここでは、以下3つのポイントから行動指針の概要を確認しましょう。

  • 行動指針とMVVの関係
  • 行動指針とミッションステートメントの関係
  • 行動指針との関連性が高い用語

MVVと行動指針の関係

ビジネス環境における行動指針は、以下の図が示すとおり、MVVの一角をなすバリューに該当する概念です。

MVVとは、「ミッション(Mission)」「ビジョン(Vision)」「バリュー(Value)」を総称した概念になります。企業の公式サイトなどでは、MVVの3項目がセットで公開されることが多いです。

バリューにあたる行動指針は、MVVの上位にあたるミッション・ビジョンを実現するうえで、組織や個人が大切にしている行動や、意識すべき考え方などを言語化したものになります。MVVにおけるそれぞれの意味を整理すると、以下のようになるでしょう。

  • 【ミッション(Mission)】いわゆる経営理念。「自分たちはどうありたいのか?」や「何のために存在するのか?」を示すもの。社外に対する使命や役割。
  • 【ビジョン(Vision)】ミッションの実現で「どのような世界を作り出したいか?」を表現したもの。社外の未来像や理想像。
  • 【バリュー(Value)】ミッション・ビジョンを実現するために、社内では「どのような価値観を大切にするのか?」や「どのような組織(従業員)でありたいか?」を表現したもの。

MVVに関連する言葉として、企業理念があります。

企業理念は、「ミッションと同義」もしくは「ミッション+ビジョンと同義」で使われることが多い概念です。ただしなかには、行動指針まで含めたMVVに近い意味で企業理念とする会社もあります。

皆さんが実際に行動指針を作成する際には、上記の用語の厳密な違いをあまり気にせず、原則は「ミッション・ビジョンを実現するために必要な価値観・行動」という認識で作業を進めていくとよいでしょう。

行動指針とミッションステートメントの関係

MVVと似た概念に、ミッションステートメントがあります。

ミッションステートメントは、自社のメンバーやお客様などのステークホルダーが認識・理解しやすいように、組織の使命や存在意義、個人に必要な価値観などを文章化したものです。

ミッションステートメントには、行動指針などのMVVが盛り込まれることが多いでしょう。

<関連記事> ミッションステートメントとは?企業と個人が作成すべき理由や浸透ポイントも解説

行動指針と似た意味を持つ言葉

企業の公式サイトなどでは、以下4つの言葉が行動指針に近いニュアンスで使われることが多いです。これらの言葉が出てきたときには、多くの場合、行動指針と同義と考えてよいかもしれません。

  • クレド
  • 行動規範
  • 社調
  • プリンシパル

行動指針は組織への「浸透」が重要

企業のミッションやビジョンは、従業員が行動指針のとおりに動いてくれてこそ、実現できるものです。それはつまり、行動指針を作成・公開しただけでは、あまり意味のない「絵に描いた餅」になってしまうことを意味します。

自社のミッション・ビジョンの実現を目指すうえでは、行動指針を含めたMVVを全従業員に「浸透」させ、当たり前に「実践」してもらう状態をつくることが大切です。

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行動指針の具体例4選

行動指針は、企業の公式サイトやパンフレットなどで公開されていることが多いです。自社の行動指針に盛り込む内容がうまくイメージできないときには、大手企業などの行動指針を参考にするのも1つでしょう。ここでは、4つの具体例を引用で紹介します。

  • Google
  • トヨタ自動車
  • 東京ディズニーリゾート
  • ローソン

Google

【Googleが掲げる10の真実】

ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
1つのことをとことん極めてうまくやるのが一番。
遅いより速いほうがいい。
ウェブ上の民主主義は機能する。
情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない。
悪事を働かなくてもお金は稼げる。
世の中にはまだまだ情報があふれている。
情報のニーズはすべての国境を越える。
スーツがなくても真剣に仕事はできる。
「すばらしい」では足りない。

引用:Google が掲げる 10 の事実(Google)

Googleは、会社設立の数年後に「10の真実」を策定しました。Googleでは、定期的にリストを見直すことで内容が真実であることを願い、常にこの指針のとおりであり続けることを願っています。

トヨタ自動車

【トヨタウェイ】

ソフト、ハード、パートナーの3つの強みを融合し、唯一無二の価値を生み出す

参考:トヨタ行動指針 |トヨタフィロソフィー(トヨタ自動車)

トヨタ自動車の行動指針は、比較的シンプルです。ただ、この指針はミッション・ビジョンと連動し、トヨタ経営の核として貫かれてきた「豊田綱領」につながるものとなっています。

東京ディズニーリゾート

【行動規準「The Five Keys~5つの鍵~」】

【Safety(安全)】安全な場所、やすらぎを感じる空間を作りだすために、ゲストにとっても、キャストにとっても安全を最優先すること。
【Courtesy(礼儀正しさ)】“すべてのゲストがVIP”との理念に基づき、言葉づかいや対応が丁寧なことはもちろん、相手の立場にたった、親しみやすく、心をこめたおもてなしをすること。
【Inclusion(インクルージョン)】さまざまな考え方や多様な人たちを歓迎し、尊重すること。すべての鍵の中心にあり、他の4つの鍵のどれにも深く関わる。
【Show(ショー)】あらゆるものがテーマショーという観点から考えられ、施設の点検や清掃などを行うほか、キャストも「毎日が初演」の気持ちを忘れず、ショーを演じること。
【Efficiency(効率)】安全、礼儀正しさ、ショーを心がけ、さらにチームワークを発揮することで、効率を高めること。

引用:行動規準「The Five Keys~5つの鍵~」(東京ディズニーリゾート)

東京ディズニーリゾートでは、全キャストの最終到達点である「We Create Happiness ハピネスの創造」を実現するために、上記の行動規準を設定しています。東京ディズニーリゾート内で行われている最高のおもてなしは、5つの行動規準にもとづく判断や行動をすることで実現できるものです。

ローソン

【ローソンWAY】

マチ一番の笑顔あふれるお店をつくろう。
アイデアを声に出して、行動しよう。
チャレンジを、楽しもう。
仲間を想い、ひとつになろう。
誠実でいよう。

引用:グループ理念・ビジョン・ローソンWAY(ローソン)

ローソンでは、グループ理念「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします」と、ビジョン「目指すは、マチの“ほっと”ステーション。」を実現するために、上記5つの行動指針(ローソンWAY)を設定しています。

行動指針を作り浸透させる効果・メリット

行動指針を含めたMVVを作成し、組織への浸透を通じて全従業員が実践できる状態にすると、企業内に以下の効果やメリットが生まれやすくなります。各ポイントを紹介していきましょう。

  • 全メンバーが同じベクトルで仕事に取り組めるようになる
  • 組織と個人の主体性が高まる
  • 組織と個人の意思決定がスムーズになる
  • メンバーのモチベーションが高まる
  • 組織の心理的安全性が向上する
  • 従業員エンゲージメントも向上しやすくなる
  • 採用精度が向上する
  • 話題性や社会的な信頼性が向上しやすくなる

全メンバーが同じベクトルで仕事に取り組めるようになる

行動指針は、全従業員が仕事をするうえで「何を大切にすべきか?」を示すものです。

たとえば、ローソンのように「仲間を想い、ひとつになろう。」を示し、その価値観が組織に浸透すると、仕事のやり方が合わないメンバー同士でいがみ合ったり、困っているメンバーを無視したり……といった問題も起こりにくくなります。

また、組織内で問題が起きたときにも、たとえば「うちの店の行動指針は「仲間を想い、ひとつになろう。」だよね?」と示すことで、各自の価値観のズレを解消し同じベクトルに修正しやすくなるでしょう。

組織と個人の主体性が高まる

行動指針は、企業の憲法に近いものです。それはつまり、行動指針の内容が日本国憲法の「人権尊重」などと同じように、仕事をするなかで最も大切にすべきものであることを意味します。

たとえば、行動指針に「遅いより速いほうがいい。」と書かれていれば、上司や先輩に「納期よりかなり早く仕上げてしまったのですが、問題ないでしょうか?」などと質問する必要もありません。

明確な行動指針が浸透した組織では、新人や若手でも憲法(行動指針)に合わせる形で自らで判断し、主体性を持って仕事に取り組めるようになります。各メンバーが主体的に動く自律的組織をつくるうえでも、行動指針は役立つでしょう。

組織と個人の意思決定がスムーズになる

行動指針があることで、上司や先輩に「この場合はどうしたらいいでしょうか?」などと頻繁に質問する必要がなくなれば、各自の意思決定もスムーズかつスピーディーになります。

近年は、外的環境の変化が起こりやすいVUCAの時代です。こうしたなかで競合よりも早く成果を出し成長を続けていくためには、迅速な意思決定による課題解決が必要となります。

いまの組織でトラブル対応や意思決定のスピードをもう少し上げたい場合は、行動指針の内容を見直してみるのも1つかもしれません。

メンバーのモチベーションが高まりやすくなる

行動指針の内容に則り、自分で意思決定や課題解決ができる環境は、メンバーの自己効力感やモチベーションを高めます。自己効力感とは「やればできる」や「自分ならできる」などのポジティブな自信に近い感覚です。モチベーションはいわゆる「やる気」に近いものになります。

メンバーの自己効力感やモチベーションが高いと、目の前に大きな課題や逆境が生じた場合も、「自分なら大丈夫!」などの自信からチャレンジングな姿勢で課題と対峙できるようになります。

近年は、コロナショックや物価高騰といった外的環境の変化により、ビジネスを進めるうえで課題・逆境が生じやすい時代です。行動指針から自己効力感やモチベーションが高まりやすい仕掛けは、逆境に負けない組織や個人をつくるうえでも必要なものとなるでしょう。

組織の心理的安全性が向上しやすくなる

たとえば、ローソンの指針「仲間を想い、ひとつになろう。」や「アイデアを声に出して、行動しよう。」などは、組織の心理的安全性につながる要素です。

こうした内容を行動指針に盛り込むと、上司や先輩などから無知や無能と思われるような不安も、若手に生じにくくなるかもしれません。

行動指針は本来、心理的安全性の向上を目的につくるものではありません。しかし、自社のミッションやビジョンを実現し続けられる組織をつくるためには、心理的安全性を向上させる仕掛けとして行動指針を活用するのも1つでしょう。

採用精度が向上する

行動指針の内容は、採用戦略を考える際にも役立ちます。

先述の東京ディズニーリゾートを例にすれば、行動指針の内容から、採用ペルソナや採用基準に盛り込むべき以下のような要素が出てくるでしょう。

  • お客様と自分たちの安全最優先で仕事を進められる
  • 礼儀正しい人材である
  • 効率を考えて行動できる
  • 多様な価値観や考え方を尊重できる など

面接質問などで上記の要素を確認することで、自社の価値観に合う人材を採用しやすくなります。

従業員エンゲージメントも向上しやすくなる

従業員エンゲージメントとは、従業員が会社のMVVなどに共感し、自分の仕事や組織などに愛着を持っている状態です。

行動指針を含めたMVVが浸透し、それを実践することが当たり前の組織になれば、従業員エンゲージメントも向上しやすくなります。

また、MVVの内容を盛り込んだ戦略で人材採用を行えば、従業員エンゲージメントが高い状態で入社する社員が増えるかもしれません。

話題性や社会的信用が向上しやすくなる

従業員が指針の価値観にもとづく姿勢で行動するようになると、そこから生じたホスピタリティや対応品質の向上などによって、自社の社会的信頼性や話題性が高まりやすくなります。

このことは、行動指針の浸透・実践が、企業のブランディングに大きな影響をもたらすことを意味します。その内容が自社への口コミやアンケートなどに投稿されると、行動指針を大事にするメリットなども従業員に伝わりやすくなるでしょう。

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効果的なMVVと行動指針の作り方

企業の行動指針は多くの場合、自社のミッション・ビジョンと連動しているものです。

したがって原則は、ビジョン・ミッションと一緒に行動指針を作成するのが理想となります。また、仮に現時点で自社のMVVが存在するにも関わらず、上記のメリットのような好循環が生まれていない場合は、MVVの内容を一度セットで見直し浸透までのステップを進めてみてもよいかもしれません。

ここでは、効果性の高いMVVを作成するためのポイントを紹介します。

  • 効果的なミッション・ビジョンを考える
  • ミッション・ビジョン実現につながる行動指針を考える

効果的なミッション・ビジョンを考える

まず、社外に対する使命・役割(ミッション)と、未来像・理想像(ビジョン)を考えます。ここでのポイントになるのは、以下の3つです。

ワクワクする内容であること

MVVは、全従業員が興奮・熱狂できる内容であることが望ましいです。

本当の意味でワクワクできるMVVをつくるためには、現場の従業員から「仕事をするなかで嬉しかったこと」や「この仕事でどんな課題を解決したいか?」などをアンケートなどでヒアリングすることも1つになります。

経営層〜新人まで幅広い人がワクワクできるMVVは、良い仕事をするうえでのエネルギーを生み出すことでしょう。

チャレンジングな内容であること

すでに当たり前に実現できていることや、特に頑張らなくても達成できる内容では、従業員のモチベーションは高まりません。

一方で、たとえば「世界の貧困をゼロにする」などのハイレベルすぎる内容も、日本の中小企業では影響が及ばない世界的な課題であることから、企業のミッションとしてはあまり現実的ではないでしょう。

そこでおすすめとなるのが、「日本全国に◯◯の支援拠点をつくる」のように少し難しいながらも達成意欲がわいてくる内容です。また、難易度が高いものの頑張り次第で実現に近づける未来のほうが、そのために必要となる行動指針もつくりやすいでしょう。

社会的な価値や貢献に触れていること

自社に好循環をもたらすMVVを作成する場合、「自社が社会にどのような価値をもたらせるのか?」を考えることも大切になります。

たとえば「売上10億円を目指す」や「業界トップシェアを目指す」といった内容は、自社にとって非常に喜ばしい状況である一方で、社会にメリットをもたらすものではありません。

それはつまり、お客様や地域住民などのステークホルダーにとって「心から応援したい」とは思えないミッション・ビジョンであることを意味します。

一方でたとえば「日本全国に◯◯の支援拠点をつくる」などであれば、株主以外のステークホルダーからも注目や応援の声が集まりやすくなるでしょう。

ミッション・ビジョン実現につながる行動指針を考える

理想的なミッション・ビジョンが完成したら、いよいよ行動指針の作成に入ります。以下の流れで進めていきましょう。

  • ミッション・ビジョンの実現に必要な行動・価値観などを考える
  • ミッション・ビジョンに反する行動を考える
  • 行動指針を簡潔な文言で定める
  • 行動指針それぞれに、簡潔な説明文を添える

ミッション・ビジョンを体現する行動を考える

まず、企業がミッション・ビジョンを実現するうえで、各メンバーに必要なことを言語化します。具体的には、以下の項目について考えていくとよいでしょう。

  • 価値観
  • 行動習慣
  • 考え方
  • 意思決定の方法 など

たとえば、「スタッフのサービスと笑顔で、この街を幸せにします」というミッション・ビジョンを考えた場合、そこにつながる行動習慣や価値観には、以下のような内容が出てくるでしょう。

  • スタッフ全員が笑顔で働けるチームを目指す
  • 街のためになるアイデアを積極的に出していく
  • 新たなチャレンジを楽しむ など

ミッション・ビジョンに反する行動を考える

行動指針を通じて自社のベクトルを合わせていくうえでは、「仲間のミスを批判しない」などのNG行動をあげておくことも大切です。「やるべき行動」と「やってはいけない行動」の両方があると、マネージャーやリーダーによる指導やフィードバックもしやすくなるでしょう。

行動指針を簡潔な文言で定める

行動指針は、その内容を暗記・実践してもらうためにも、簡潔かつわかりやすい文章で書くのが理想です。また、行動指針の内容を携帯できるカードや、社内報などに記載することを考えると、最初のうちは5項目程度からスタートするのがおすすめとなります。

行動指針それぞれに、簡潔な説明文を添える

行動指針の文言が簡潔すぎて、各自の解釈が分かれてしまったら本末転倒です。この問題を防ぐためにも、各指針には簡潔な説明文をつけるとよいでしょう。

たとえば、ローソンの行動指針の1つ「誠実でいよう。」であれば、誠実とは具体的にどういう姿勢・状態なのかを簡潔に示すことで、全メンバーの認識が統一されやすくなります。

行動指針を組織に浸透させるためのポイント

作成した行動指針は、全従業員への浸透を通じて日常的に実践されるようになってこそ、効果を発揮するものです。

先述の流れで最適なミッション・ビジョン・バリュー(行動指針)を作成したあとは、以下のポイントを大切にしながら自社に合う方法で浸透させる必要があります。

  • 行動指針に触れる機会や仕掛けをたくさんつくる
  • 人事評価の基準に行動指針の内容を加える
  • 経営層が率先して実践する

行動指針に触れる機会や仕掛けをたくさんつくる

行動指針の浸透とは、「全メンバーがその内容を覚えている」や「その内容を知らないと適切な仕事や意思決定ができない」状態をつくることです。

そのためにはまず、行動指針の完成後に、社長メッセージなどを通じて行動指針を含めたMVVなどを全従業員に共有する必要があります。

共有の際には、MVVの内容や作成の背景に加えて、そのMVVが「これから従業員の仕事とどのように関わってくるか?」というビジョンや具体例も示すとよいでしょう。

社長メッセージからの発表を終えたあとは、現場のマネージャーやリーダーを通じて行動指針を現場に浸透させていきます。具体的には、以下のようなコミュニケーションが効果的になるでしょう。

  • 【全体会議・チームミーティング】今期は行動指針に書かれている◯◯に力を入れて、顧客満足度の向上を目指していきましょう。
  • 【1on1】最近◯◯の意識が少し下がっているね。◯◯は人事評価の項目だから、行動指針をじっくり見直してみて。
  • 【朝礼】先日お客様から◯◯の声をいただきました。これは、私たちが行動指針の◯◯を実践し続けた結果だと思います。 など

行動指針を浸透させる仕掛けには、ほかにも以下のようなものがあります。

  • 社内報
  • 自社の公式サイトやパンフレット
  • 社員表彰制度
  • いつも携帯できる行動指針カード など

人事評価の基準に行動指針の内容を加える

MVVを実現させるためには、全メンバーが行動指針を理解・実践することが大切です。

仮にチーム内に一人でも行動指針を守らないメンバーがいると、自社が目指す品質の実現は難しくなります。場合によっては、お客様からクレームなどが入ることもあるかもしれません。

全メンバーに行動指針を実践してもらうためには、人事評価と行動指針をリンクさせることも大切です。たとえば、メンバーが行動指針に反する対応をした場合に、どういった対処をするかもあらかじめ決めておく必要があるでしょう。また、ポジティブな表彰制度やインセンティブなども、行動指針を守るモチベーションを高めるうえで役立ちます。

経営層が率先して実践する

行動指針の浸透は、経営層が実践する姿勢を見せてこそ成功するものです。

経営層は、行動指針の完成後、浸透などを現場のマネージャー・リーダーに任せきりにするのではなく、自ら実践した成果などを積極的に発信することも必要となります。

また、現場のメンバーに行動指針を浸透させるためには、それを指導するマネージャー・リーダーの積極的な実践も必要となるでしょう。

行動指針の作成・浸透における注意点

作成した行動指針を「絵に描いた餅」にしないためには、作成・浸透の際に以下のポイントを大切にする必要があります。

  • 現場の理解・協力・共感を得る
  • 多様なメンバーで作成チームをつくる
  • 定期的に見直す

現場の理解・協力・共感を得る

行動指針は、現場の全従業員に実践してもらってこそ効果を発揮するものです。

そこで高い効果を得るためには、行動指針の内容が現場にとって現実的なものであり、浸透や実践に対して「自分も協力したい」と感じてもらえることが大切になります。

一方でたとえば、以下のような内容や状況の場合は、経営層や人事部門にとってどんなに素晴らしい行動指針であっても、浸透による成果は得られにくいかもしれません。

  • 内容が複雑すぎて、現場での理解や暗記が難しい
  • 行動指針の内容を実践すると、現場の業務に支障が出てしまう
  • 上司や先輩のなかに行動指針を守らない人がいる

行動指針が「他人事」状態から「自分事」に変えてもらうためには、たとえば、現場に生じている課題や成功事例などをあげたうえで「◯◯を改善する目的でこの行動指針を作成した」などのストーリーテリングを行ってもよいでしょう。ストーリーテリングを通して行動指針作成の背景や想いが伝わると、自分事として認識してもらいやすくなるはずです。

基本的には、作成した指針を一方的に押し付けるのではなく、現場に寄り添う姿勢を見せ続けることが大切になります。

多様なメンバーで作成チームをつくる

多くの従業員やチームに行動指針を自分事にしてもらうには、作成チームに、たとえば営業部・開発部・品質管理部・総務部……といった幅広い部門やチームの人たちを加えるのも1つです。

この場合、現場からの不平不満が出ないようにするために、経営層からたとえば「各部門のリーダーは作成チームに参加してもらいたい」などのメッセージを発信してもらうことも大切になります。

作成チームのメンバーは、社歴や立場が異なっていても構いません。

たとえば、社歴が短い新人や若手が加わることで、外部のフリーランスやお客様といった自社の業務をあまり知らない人でも理解しやすい文章が作成できるかもしれません。また、ダイバーシティ経営に力を入れる企業であれば、外国人スタッフや女性社員などに積極参加してもらってもよいでしょう。

行動指針について解説しました

近年のビジネス環境では、予測できない変化や逆境が生じやすいなかで、行動指針の作成・浸透を行う重要性が特に高まるようになりました。また、ダイバーシティ経営などで多様な属性や働き方の人材が協働する場合も、行動指針を通じてベクトルを合わせることが必要でしょう。

効果的な行動指針に興味がある方は、本記事の流れでぜひ作成・浸透を行ってみてください。


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Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

Startup JAM編集

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