評価面談とは
評価面談とは、上司による人事評価の客観性などを高めるために実施する面談の総称です。人事評価面談やフィードバック面談と呼ばれることもあります。
一般的な評価面談は、四半期または半期に一度のサイクルで実施されることが多いです。主な役割・目的は後述しますが、近年では従業員個人の評価に加えて、人材・組織の開発や活性化などの効果に期待する企業も多くなりました。
評価面談と1on1の違い
1on1(1on1ミーティング/1on1面談)と評価面談の大きな違いは、開催頻度と時間です。
1on1の開催頻度は、週1回や月1回などの高頻度です。実施時間は短く1回につき15~30分ほどが一般的になります。一方で評価面談は、先述のとおり四半期や半年に1度ぐらいのペースで実施することが多いです。
1on1と評価面談は、実施の主体や話題の幅も異なります。
1on1の場合、従業員本人の成長促進や上司・部下の信頼関係を高める目的で開催されるケースが多いです。こうした特徴から、1on1内で語られる話題も仕事や自己成長に限定されることはありません。場合によっては、プライベートや趣味の内容が展開されるケースもあるでしょう。
一方で評価面談は、人事評価の内容や目標達成までの進捗などを共有することが中心です。近年では、人事評価や上司・部下の関係性が多様化しつつありますが、従来型の面談では上司主体で進められることが一般的でした。
評価面談の目的・機能・役割
一般的な評価面談には、以下3つの目的・機能があります。各特徴を見ていきましょう。
- 人事考課
- 人材育成と動機形成
- マネジメント改善
人事考課
評価面談の代表的な目的は、面談で話した内容を人事考課の判断材料につなげることです。人事考課とは、各従業員の業務遂行度・貢献度・能力などを総合的に評価し、昇格・昇給などの人事査定に反映する仕組みの総称になります。
上司と部下は、必ずしも同じ環境で仕事をしているとは限りません。たとえば、「外回り営業だから、週1回の朝礼でしか部下と会わない」などの場合、上司は営業日報や売上などのデータから評価を下さざるを得ないでしょう。
そこで評価面談を行うと、たとえば「次の商談は絶対に成功させたいので、今月は準備に追われていた(だから新規の受注はない)」のような適切な評価につながるリアルな仕事ぶりが見えてくるようになります。
人材育成と動機形成
人事評価の結果を伝えたうえで、上司と部下がじっくり話す時間は、現状の課題整理や解決方法を一緒に考えるためにも必要です。
また、仮に部下に大きな課題があったとしても、「AとBの要素はとてもよくできているね。これでCができたら等級がXになるだろう。」などのポジティブなフィードバックを加えることで、著しいモチベーション低下を防ぎ次の目標設定につなげやすくなるでしょう。
評価の直後に行う面談でのコミュニケーションは、部下の成長に不可欠なやる気を高めるうえでも大切なものとなります。
マネジメントの改善
部下の評価や成果が思うように上がらない背景には、チームなどの体制や上司のマネジメントに問題が潜んでいることもあります。
たとえば、営業成績が上がらず評価が低い部下と面談するなかで、「新人が起こした発注ミスのフォローをしていて、自分の営業活動がまったくできなかった」などの背景がわかると、そこで新人のサポート体制の弱さに気付かされることもあるかもしれません。
成果や評価は高いに越したことはありませんが、組織が抱える本質的な課題を解決するうえでは、その原因を個人に押し付けるだけでなく背景にあるものに注視する姿勢も必要でしょう。
評価面談で重視される3つの評価要素
人事評価や評価面談で重視する要素は、企業ごとに異なるものです。
ただし、評価後の部下に違和感や不満などを生じさせないためには、以下3つの要素を軸にバランスを意識した評価を行う必要があります。各要素の概要とポイントを紹介しましょう。
- 能力評価
- 情意評価
- 業績評価
能力評価
能力評価は、各自が持つスキル・知識などの能力に対する評価です。
たとえば、営業職や管理職で重要とされるラポール形成力などには、現場で経験を積むなかで培われる側面もあります。そのため、ラポール形成力などのスキルは「低いから給料・等級を上げられない」などの単純なものではなく、どちらかといえば各従業員の育成や成長を促すうえで評価項目となるでしょう。
なお、この能力評価の項目は、各自のレベル・役割・目指す職種によっても変わります。たとえば、システム開発現場の場合、「スペシャリストを目指す人材」と「プロジェクトマネージャーを目指す人材」では、求められる能力も大きく変わってくるでしょう。
情意評価
情意評価とは、会社が大事にする価値観や指針に合わせた行動や姿勢があるかを確認するものです。たとえば「異なる価値観や意見も尊重する」や「失敗を恐れず積極的な挑戦をする」なども情意評価につながる項目になります。
各社の情意評価項目は、企業のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)によっても変わるでしょう。
情意評価の特徴は、たとえば「心理的安全性の高いチームを構築している」のように、数値化できない定性的な内容を評価できる点です。また、数的な成果が出しづらい職種や時期であっても、情意評価で本人の姿勢・行動・過程を評価することで、モチベーションの低下などを防ぎやすくなる利点もあります。
業績評価(成果評価)
業績評価は、売上や新規顧客数といった定量的な成果で評価するものです。業績評価の特徴は、高い成果を出した従業員に対しては、評価・等級・給与などのアップというわかりやすくシンプルな評価を行える点になります。
ただし、たとえば営業職の場合、すべての部下が同じ条件・環境下で営業活動をしているとは限りません。仮にある人が新入社員のOJT担当でもある場合、新人への指導やフォローに追われて、本人の営業活動がおろそかになることもあるでしょう。
業績や成果を重視した評価を行う際には、目に見える数字だけで判断するのではなく、面談のなかでその背景にある事情・背景などに耳を傾けることも必要となります。
評価面談の進め方
評価面談を効果的なものにするためには、適切な流れで進めることが大切です。ここでは、一般的な評価面談の進め方と、各ステップのポイントを紹介しましょう。
- 落ち着いて話せる場所と時間を用意する
- 話す内容を事前に用意・共有しておく
- アイスブレイクから入る
- 評価面談の目的を共有する
- 部下に自己評価を述べてもらう
- 上司による評価結果をフィードバックする
- 課題を共有する
- 課題解決の方針を一緒に考える
- 最後のまとめを行う
1.落ち着いて話せる場所と時間を用意する
評価面談を効果的なものにするためには、落ち着いて話せる「環境」と余裕のある「時間」が必要です。部下のなかには、忙しい業務の合間を縫って面談に臨む人もいます。上司はこうした部下に対して「大事な時間をもらう」という謙虚な姿勢が必要でしょう。
面談内では、成果がでない理由として「ほかの人には知られたくない家庭の事情」などが出てくることもあるかもしれません。率直なコミュニケーションを図るうえでも、静かで落ち着ける場所を用意することも大切になります。
2.話す内容を事前に用意・共有しておく
限られた時間を効率よく使うためには、上司・部下のそれぞれが話す内容を用意しておくのが理想です。
多くの企業では、いわゆる人事評価シートを使って面談を行います。このシートのなかで「これまでの振り返り」や「これから挑戦したいこと」などを言語化してもらうと、上司からの問いかけにもスムーズに答えられるようになるでしょう。
また、上司の側も、部下の行動や評価を見て気になっていることがあれば、その内容を事前に整理しておく必要があります。
3.アイスブレイクから入る
アイスブレイクとは、本題に入る前にリラックスするための雑談やゲームなどの総称です。評価面談では、以下のような話題で部下の緊張を解きほぐしてあげるとよいでしょう。
- 最近は雪がよく降るよね。Aくんの地域は除雪が大変だったんじゃない。
- 社内も大谷翔平の話題で持ちきりだよね。休憩室も彼の話で盛り上がっていたんだよ。(※部下が野球に興味がある場合)
- Bさんがデザインしたあのポスター、素敵なピンク色ですね。春らしくて私は好きです。 など
4.評価面談の目的を共有する
評価面談を効果的なものにするうえでは、「この面談は何のために必要なのか?」という目的を最初に共有する必要があります。
たとえば、「Aくんの成長をサポートして、早く係長になってもらうため」や「等級や報酬がアップしない要因を明らかにして、それらを上げていくため」といった部下に寄り添う姿勢を伝えると、あまりよくない評価やフィードバックなども自分事として受け入れてもらいやすくなるでしょう。
一方で「会社の業績を上げるため」や「自社の価値観に合わせてもらうため」といった企業側の事情を突きつけると、評価内容を自分事にしてもらいにくくなります。注意しましょう。
5.部下に自己評価を述べてもらう
面談の目的を共有したら、まず、被評価者である部下に自分の評価を話してもらいます。
自己評価を先に聞く理由は、上司が評価を伝えたあとでは、部下が自分の話を自由に語りづらくなるからです。また、部下の視点(評価)を先に聞くと、上司の視点や評価の問題やお互いの認識のズレが見えやすくなるでしょう。
たとえば、「今月は新人のOJTに多くの時間を使ってしまお、自分の営業活動があまりできなかった。」などの自己評価を最初に教えてもらうと、フィードバックの伝え方・内容も変わってくるはずです。
6.上司による評価結果をフィードバックする
次に、上司の評価を伝えます。
最初に伝えるべきなのは、ポジティブな内容です。そのあとにネガティブな内容・評価を伝えることで、部下の精神的負担を軽減しやすくなります。
また、週1回の1on1のように高い頻度で部下と話す機会がある場合は、評価面談ですべてを一気に伝える必要もないでしょう。
部下のモチベーションや自己肯定感の著しい低下を防ぐためには、部下が受け入れられるボリュームや伝える順番などにも配慮する必要があります。
7.課題を共有する
お互いの評価を話し終えたら、課題の共有に入ります。
ここでの注意点は、上司が部下の課題を一方的に決めつけないことです。話を掘り下げるなかで、部下に「自分のここが間違っていた」などの気づきを感じてもらうコミュニケーションが理想となるでしょう。
部下の気づきを導くことで、納得感を持って課題解決に取り組んでもらいやすくなります。
8.課題の解決方針や次回目標を一緒に考える
部下が抱えている課題には、「部下の努力だけで解決できるもの」のほかに、「上司のマネジメントやサポートが必要なもの」の大きく2種類があります。たとえば、テレアポ営業で思うような成果が出ない場合、課題の中身でやるべきことが以下のように変わってくるでしょう。
- 【テレアポ本数が極端に少ない】出社後にテレアポ営業を3本やってから、外まわり営業に出かけることにする
- 【テレアポの成約率が著しく低い】若手向けの早朝トレーニングに参加してもらう など
課題の解決方針や新たな目標に関しても、「どうすれば解決できそうか?」を本人に考えてもらうことで、当事者意識が生まれやすくなります。
9.最後のまとめを行う
部下にとって納得感のある評価面談にするためには、上司の都合で一方的に終わらないことも大切です。また、ネガティブな雰囲気で終わらないことも大切になります。
新たな課題解決や目標達成に向けて部下のモチベーションを高めるうえでは、今後につながるポジティブな話をするのも一つでしょう。部下が評価に対して感じたことに耳を傾けることで、上司と部下の温度差を埋めやすくなったりもします。
評価面談で使える15つの質問例
上司に評価面談の経験があまりない場合、長い時間のなかで部下に何を質問したら良いのかわからないこともあるはずです。その一方で、評価面談における上司の質問は、部下に新たな気づきを促したりモチベーションを高めたりするうえで、重要な役割を担います。
これから評価面談に臨むなかで、良い質問が思い浮かばない場合は、以下のカテゴリから話の流れに合うものを選ぶとよいでしょう。
【これまでを振り返る質問】
- 掲げた目標に対して、どのような成果を出しましたか。
- 成果を出すために実践した努力・工夫を教えてください。
- 目標が達成できなかった理由はなぜでしょうか。
- 今回の目標は、いまの自分にとって妥当なものでしたか。
- その理由を設定した理由は、なぜでしたっけ。
【上司と部下の温度差を埋める質問】
- 今回の評価を聞いて、どう感じましたか。
- 業務の難易度やボリュームにどう感じていますか。
【部下や組織の現状を知るための質問】
- 最も頑張った仕事・うまくできた仕事はなんですか。
- あまりうまくいかなかった仕事・苦戦した仕事はなんですか。
- やりがいを感じるのはどういう時ですか。
- 社内の人間関係で気になる点を教えてください。
- いま目指しているキャリアについて教えてください。
【今後につなげる質問】
- その課題を解決するためには、何が必要でしょうか。
- 次はどういう目標を立てますか。
- 課題解決や目標達成をするうえで、サポートしてほしいことを教えてください。
評価面談で有効な3つのフィードバック型
評価面談を部下の成長につなげるためには、状況に応じた適切なフィードバックを行うことも大切です。フィードバックには、さまざまな種類や型があります。ここでは以下3種類の概要とポイントを紹介しましょう。
- サンドイッチ型のフィードバック
- ペンドルトン型のフィードバック
- SBI型のフィードバック
サンドイッチ型のフィードバック
サンドイッチ型とは、最初と最後のポジティブな話題でネガティブを挟み込んで伝えるフィードバックです。たとえば、以下のイメージになります。
- 【ポジティブ①】今期はAさんのおかげで良いチームが構築できました。ありがとうございます。
- 【ネガティブ】ただ、Aさん個人の営業成績は少し伸び悩みましたね。
- 【ポジティブ②】チームビルディングは私もサポートするので、来期は自分の営業活動を優先してください。いつも助かっています。ありがとう。
サンドイッチ型には、ネガティブ要素をポジティブ要素で挟み込むことで、部下のモチベーション低下を最小限に抑えられる利点があります。
ペンドルトン型のフィードバック
ペンドルトン型は、心理学者のペンドルトン氏が考案したものです。ペンドルトン型の場合、上司が以下の流れで投げかけることで、部下が自分の課題や今後について主体的に考えられる利点があります。
- 1.話すテーマを確認する
- 2.良かった点を伝える
- 3.改善点を考えてもらう
- 4.今後の行動計画を考えてもらう
- 5.話をまとめる
ペンドルトン型の場合、たとえば最初に「今日は開発プロジェクトのAについて振り返りましょう。」とテーマを伝えます。
そのうえで、「あのプロジェクトは品質もよくてお客様満足度も高かったですね。チームビルディングもうまくいっていると思います。Bくんはあのプロジェクトのなかで、自分にどのような改善点があると思いましたか。」と話を進める流れです。
本人が改善点を挙げたところで、今後の行動計画を考えてもらいます。
SBI型のフィードバック
SBI型とは、以下3つの頭文字をとったものです。
- Situation(状況)
- Behavior(行動)
- Impact(影響)
SBI型のフィードバックでは、上司から見た「状況+部下の行動」を正確に伝えることで、それらがもたらした「影響」の説得力を高めやすくなります。たとえば、以下のようになるでしょう。
- 【状況】先月、A社とB社の営業に同行させてもらったときに気づいたんだけどね。
- 【行動】Cさんは、お客様の話に耳を傾けるよりも、商品紹介などの自分の話がメインのコミュニケーションをとっていたよね。
- 【影響】お客様の話に耳を傾けないと、ラポール形成はできないと思うな。
なお、部下の前で上記から適切な方法を選択できるようになるためには、それなりのトレーニングが必要です。自社における評価面談のレベルアップを図るうえでは、評価者となる上司に適切な質問およびフィードバックのロープレなどを行うことも大切でしょう。
評価面談の失敗事例と効果性を高めるポイント
評価者である上司に面談の研修やトレーニングをする際には、ケーススタディに似たイメージで部下や組織に悪循環をもたらす失敗事例を紹介することも大切です。
「この面談はなぜ失敗したのか?」などの理由・原因の理解は、評価面談のレベルアップにつながるものとなるでしょう。
ここでは、代表的な5つの失敗事例と、そのなかで効果性を高めるためのポイントを解説します。
- 評価面談の目的を理解していない
- 上司の先入観が強すぎる
- 部下の話に耳を傾けられていない
- 十分な会話ができていない
- 部下のモチベーションを意識できていない
- クローズドクエスチョンが中心である
評価面談の目的を理解していない
「なぜ評価面談が必要なのか?」という目的は、上司と部下の双方が理解すべきものです。
仮に上司が面談の目的や役割を理解していない場合、一方的なコミュニケーションなどによって部下のモチベーションや自己肯定感などを下げてしまう可能性もあります。
また、部下のほうも、評価面談の意味や等級・報酬制度と関係性がわからなければ、上司からのフィードバックに対して「面倒くさい」「やりたくない」などのネガティブな印象を持ってしまうかもしれません。
上司と部下が同じベクトルで課題解決や目標達成を進めていくうえでは、「自分たちはなぜ評価面談で話す必要があるのか?」という目的や意味を共有する必要があります。
上司の先入観が強すぎる
上司の先入観や思い込みも、適切な評価やフィードバックが難しくなる要因の一つです。
たとえば、上司がかつて優秀なハイパフォーマーだった場合、自分の部下にも同様の成果を求めたり、「Aさんの努力はまったく足りない。僕が若手の頃は……。」などの相対化や一般化をしてしまったりする問題が起こりやすくなります。
また、ある対象の評価をするときに、目立つ特徴に引きずられるハロー効果なども、評価者が注意すべき認知バイアスの一つです。
評価面談を効果的なものにするためには、上司と部下にどのような関係性があっても、上司は自分の思い込みにとらわれることなく、「ありのままの部下」を評価しようと努める姿勢が必要でしょう。
部下の話に耳を傾けられていない
評価面談で部下の成長を促すうえで大切なのは、上司が「話すこと」ではありません。どちらかといえば、適切な質問を通じて部下に「話してもらうこと」や「考えてもらうこと」を大切にする必要があります。
また、面談時間があまりにも短すぎる場合、評価やフィードバックを伝えることがメインになってしまい、部下の話に耳を傾ける余裕がなくなってしまうでしょう。これでは、部下が自分の課題・目標・解決策などに当事者意識を持つことができません。
評価面談を効果的なものにするためには、上司が部下の話に耳を傾けられるだけのスキルに加えて、時間と精神面の余裕が必要となります。
部下の気持ちやモチベーションを意識できていない
たとえば、部下の課題ばかりを強い言葉で伝えた場合、部下の心は傷つき、前向きな気持ちで課題解決や新たな目標に挑戦することが難しくなるかもしれません。また、定期的な評価面談で何度も傷つくと、上司と部下の信頼関係は崩壊し「この上司の下では働けない……」などの想いから離職を考え始めることもあるでしょう。
評価面談は基本的に、部下の成長につなげるためのものです。
仮に多くの課題や問題行動を抱えた部下であっても、上司が高圧的な態度で問い詰めたりすれば、そこからポジティブな気持ちになることが難しくなります。評価面談を行う上司は、部下のやる気や成長につなげる話し方や意識を身につけることが大切です。
クローズドクエスチョンが中心である
クローズドクエスチョンとは、YesかNoなどの2択から答えを選べてしまう質問の総称です。具体的には、以下のようなものがクローズドクエスチョンに該当するでしょう。
- 今回のプロジェクトはうまくマネジメントできたかな?
- あのやり方で成功すると思ったの? など
クローズドクエスチョンには、自分の成果や課題について本人が深く考えることを妨げてしまう特徴があります。また、上記のような質問を立て続けに行った場合、尋問をしているような状態になるかもしれません。
効果的な評価面談を行うために必要となるのは、オープンクエスチョンを中心とするコミュニケーションです。オープンクエスチョンは、以下のように回答する側が自由に答えを考えられる質問になります。
- 今回のプロジェクトのマネジメントについて、気づいたことを教えてください。
- あのやり方について、どのような印象を持っていましたか。 など
部下に課題などを自分で考えてもらい、その内容に耳を傾ける姿勢を持つと、上司と部下の関係やコミュニケーションも良好なものになっていくでしょう。
評価面談の成功に向けて日頃から大切にすべきこと
上司と部下は、基本的に評価面談の当日だけコミュニケーションをとる関係ではないはずです。一般的な上司と部下は、日頃から一緒に仕事をする仲間であり、その関係は評価面談の前後も続いていくものとなります。
こうした視点を持つと、評価面談の効果性を高めるために、日頃から出来る準備や施策があることに気付かされるはずです。ここでは、評価面談を部下の成長につなげるうえで、上司が日頃から実践しておいたほうがよいことを4つ紹介しましょう。
- フラットな関係を構築する
- 普段から部下に関心を持つ
- 目標設定のフレームワークを身につける
- 傾聴やコーチングなどのスキルを身につける
フラットな関係を構築する
評価面談で部下の話をしっかり聴き、自分の評価やフィードバックを受け入れてもらうためには、普段から以下のように感じてもらえる関係を構築することが大切です。
- この上司には何でも話せる
- この上司の言うことを聞くと良いことがありそうだ(成長できそうだ) など
一方で、部下に上記とは逆の想いがある場合、評価面談だけで成長や好循環をもたらすことは難しいかもしれません。評価面談を効果的なものにするうえでは、まず自分のコミュニケーションや部下との関係性がフラットになっているかを確認したほうがよいでしょう。
傾聴やコーチングなどのスキルを身につける
ここまで紹介した質問やフィードバックは、普段の仕事や1on1などでも使える大切なスキルです。
また、部下の話に耳を傾けるなかで相手の気づきや感情を引き出したり、コミュニケーションを通して良好な関係を構築したりするうえでは、いわゆる傾聴力やコーチングなどのスキルを身につけることも大切になります。
上司に傾聴やコーチングの基本を習得させる方法には、以下のようなものがあるでしょう。
- 傾聴・コーチングが得意な社員による社内研修を実施する
- 外部講師による社内研修を実施する
- 外部研修への参加を促す など
普段から部下に関心を持つ
上司が適切な評価やフィードバックを行うためには、普段から部下の仕事ぶり・キャリア・ライフイベントなどに関心を持つことが大切です。こうしたものに目を向けると、フィードバックにも以下のように奥深さが生まれやすくなるでしょう。
【関心があまりない場合】
- 今月は営業成績が悪かったから、来月はもっと頑張ろう。
【関心がある場合】
- 今月は奥さんの出産で大変であるのに、会社での営業活動も頑張っていたね。大きな成果は出なかったけど、努力していたのはわかるよ。来月も諦めずに頑張っていこう。
人間は誰しも「他人から認められたい」などの承認欲求を持っているものです。日頃から部下に関心を持っていると、奥深いフィードバックによって部下の承認欲求を良い意味で満たしやすくなります。
目標設定のフレームワークを身につける
評価面談で設定する目標は、高ければ高いほど良いわけでもありません。本人が当事者意識を持ち高いモチベーションで達成へと向かううえでは、具体的かつ本人の能力でクリアできる目標を立てることが大切になります。
効果的な目標を立てる際に活用できるのが、目標設定のフレームワークです。
たとえば、SMARTという以下のフレームワークに合わせた目標を設定すると、それを実現するための計画が立てやすくなります。また、明確な目標は、次の評価をするうえでも役立つものとなるでしょう。
- 【Specific(具体的である)】
- 【Measurable(計測できる)】
- 【Achievable(達成できる)】
- 【Related(上位との関連性がある)】
- 【Time‐bound(期限が決まっている)】
フィードフォワードを意識する
評価面談で使えるスキルやフィードバックには、さまざまな種類があります。これらを駆使して会話をするなかで大切にしたいのが、フィードフォワードという考え方です。フィードフォワードとは、相手や自分たちの未来にフォーカスして目標達成や課題解決に向けた意見交換などをする取り組みになります。
上司が常にフィードフォワードを意識すると、仮に部下の業績が著しく悪い時期などであっても、未来に向けたポジティブな話で部下のモチベーションを高めやすくなるでしょう。
評価面談で活用したい2つのツール
評価面談を効率的に進めるうえでは、自社で導入できるツールをうまく活用することも大切です。なかでも比較的すぐに導入できるものに、人事評価シートがあります。また近年では、政府が推進するDXの影響から、人事評価システムを導入する企業も多くなりました。
ここでは、これらのツールの概要を紹介しましょう。
- 人事評価シート
- 人事評価システム
人事評価シート
人事評価シートとは、人事評価の項目や、各従業員の目標・達成度・課題解決の具体策などをまとめた資料の総称です。項目は各社が自由に設定可能であり、インターネット上でも多くのサンプルやフォーマットが公開されています。
人事評価シートを活用すると、上司が伝える評価・フィードバック、部下が設定する目標・課題解決の施策なども整理・共有しやすくなるでしょう。過去のシートは、成長度合いなどの振り返りや、上司が異動したときの引き継ぎにも活用可能です。
人事評価システム
人事評価システムとは、人事評価と目標設定などに関する全データを一元管理するシステムの総称です。人事評価システムを導入した場合、そこから人事評価シートの出力も可能となります。
使える機能はシステムごとに異なりますが、評価データの管理を行う担当者の負担軽減や、客観的な情報分析による適材適所の人材配置などにも役立つものが多いでしょう。
評価面談を受ける部下に意識してもらうポイント
ここまでは、評価面談を実施する企業・上司の視点からポイントなどを解説してきました。
人事評価や評価面談を通じて部下の成長を促すうえでは、部下の側にも大切にしたほうが良い習慣や姿勢がいくつかあります。こうした習慣・姿勢は「評価面談を受けるため」というよりは、「ビジネスパーソンとして活躍するため」に必要なものです。日頃から意識やトレーニングをすることが理想となるでしょう。
ここでは、成長促進に必要な部下側のポイントを簡単に紹介していきます。
- 振り返りの習慣をつける
- 自分のキャリアを中長期的な視点で考える
- 礼儀・礼節をわきまえた言動を心がける
振り返りの習慣をつける
日々の経験を自己成長につなげるうえでは、毎日の振り返りを通じて経験則や気づきを得る習慣が必要です。たとえば、仕事でミスが多くお客様からクレームが入ってしまったと仮定します。
このときに、最近ミスが多発している原因を振り返ると、「展示会の準備で納品前のチェックを怠っている」や「忙しくなると集中力が低下しがちである」などの傾向や経験則が見えてきたりします。
また、その逆でたとえば、お客様からの高評価や成約が多い場合、その理由に注目すると「最近はラポール形成に力を入れている」や「◯◯の影響で自社製品の需要が高まっている」などの傾向・パターンが見えることもあるでしょう。
日々の経験(失敗・成功)を振り返る習慣があると、多くの気づきが得られることで、上司との評価面談でも具体的かつ前向きなコミュニケーションを図りやすくなります。
自分のキャリアを中長期的な視点で考える
近年の日本では、終身雇用や年功序列制度が崩壊し転職が一般化しています。こうしたなかで増えているのが、従業員一人ひとりのキャリアと会社のニーズがマッチするところで、個人の目標設定やキャリアパス・キャリアプランを立てるという企業側のスタンスです。
一方で従業員側には、「自分はどうなりたいのか?」というビジョンを明確にすることが求められる時代になっています。
たとえば、システム開発部門で働く場合、スペシャリストとマネージャーのどちらを目指すかで、重視すべきスキルも大きく変わってきます。また、「依頼されたプログラムを丁寧につくる」や「仕事でミスをしない」などの目先の目標だけでは、モチベーションの維持なども難しくなるかもしれません。
一方で、「自分は32歳までにスペシャリストになる。そのあとは……。」などの中長期的な目標を設定すると、具体的な計画も立てやすくなります。また、上司との評価面談でも、その実現につながる話がしやすくなるでしょう。
評価面談を行う上司は、転職が一般化する時代に優秀な人材の定着を促すためにも、本人の中長期的なビジョンや目標に耳を傾け、サポートする姿勢を見せることが大切になります。
礼儀・礼節をわきまえた言動を心がける
上司と部下のフラットな関係やコミュニケーションは理想ではありますが、そのなかで良い距離感を保つためには、お互いに「親しき仲にも礼儀あり」を意識することが大切です。
また、新卒社員などの場合、学生時代にあまり敬語を使ってこなかった背景から、上司との評価面談がビジネスコミュニケーションのトレーニングになる側面もあるでしょう。
丁寧な言葉遣いやマナーなどは、すべての社会人に必要なものです。仮に評価面談のコミュニケーションで礼儀・礼節が不足していると感じられた場合、上司にはその部分へのフィードバックや支援をすることも求められます。
評価面談について解説しました
評価面談は、部下の現状を把握し、課題解決や成長を促すうえで大切な役割を担います。ただし、効果的な評価面談を実施するためには、日頃からフラットなコミュニケーションを行い、部下との良い関係を築いておく必要があるでしょう。
また、この記事で紹介した基本的な流れを大切にすると、部下の自己評価や気づきなども引き出しやすくなるはずです。ぜひできることから実践してみてください。