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内部統制監査とは?内部監査との違いや改正内容もわかりやすく解説!

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企業経営において内部統制の重要性は高まっています。内部統制の状況を監査する内部統制監査も、その重要性の高まりと合わせて、大きな意義を持つようになってきました。現在では、金融商品取引法に基づき、企業の健全な成長を支える上で欠かせないプロセスです。

「内部統制監査とは、どんなもの?」「内部統制監査と内部監査は違うの?」「改正された内部統制監査は何が変わった?」といった疑問に答えるために、本記事では内部統制監査の概要と間違いがちな類語との違い、内部統制監査報告書、監査実施の流れ、監査に関係する役職者、監査のアサーション、監査基準の改正について解説していきます。ぜひ最後までお読みください。

内部統制監査とは

内部統制監査とは、企業が作成した内部統制報告書が内部統制評価の基準に照らして適切に作成されているかどうかを、外部の監査法人が監査する仕組みです。金融商品取引法に基づく内部統制報告制度(J-SOX法)によって上場企業に義務付けられています。

内部統制は企業が効率的・効果的に活動し、財務報告の信頼性確保と法令遵守を徹底するための仕組みです。内部統制監査は、この内部統制が適切に機能しているかを評価し、改善を促すことを目的とします。内部統制の整備状況、運用状況、評価結果などを監査法人が監査し、必要に応じて企業側に改善を提言するまでが内部統制監査の具体的な実施内容です。

内部統制監査には、よく似た用語や類語が多く存在します。以下ではそれらの類語との違いについて詳しく解説していきます。

内部監査との違い

最もよく似ていて勘違いされやすい言葉に、「内部監査」が挙げられます。

内部監査は企業内部で選定された内部監査人が、企業の業務プロセスや内部統制を評価し、改善を提言します。これは企業が独自で行う内部統制のひとつで、法令や社内規定が順守されていることを確認するのが目的です。

一方で内部統制監査は、外部の監査法人が内部統制報告書の信頼性を保証するもので、監査の主体が企業の外部である点が異なります。また内部監査は任意であるのに対して、内部統制監査は上場企業の義務として法令に定められている点も内部監査との違いです。

会計監査との違い

内部統制監査と近い形式で監査を行う仕組みに、「会計監査」があります。

会計監査は、企業の財務諸表が適正に作成されているかどうかを、外部の監査法人が監査するものです。企業外部の監査法人が行う点は内部統制監査と同じですが、監査する内容が異なります。

内部統制監査では、企業が提出した内部統制報告書と企業の実態を照らし合わせるのに対して、会計監査は財務諸表の内容を監査します。監査法人の監査対象となる書類と監査内容に違いがあることを覚えておいてください。

コーポレートガバナンスやコンプライアンスとの違い

企業の統制に関連する概念として、「コーポレートガバナンス」や「コンプライアンス」があります。

コーポレートガバナンスとは、企業が株主をはじめとする様々なステークホルダーの利益を考慮し、公正かつ透明性の高い経営を行うための仕組みです。またコンプライアンスとは、企業が法令や倫理規範を遵守することを指します。

内部統制はコーポレートガバナンスやコンプライアンスの基盤といえる企業行動です。すなわち内部統制監査によって、内部統制が適切に機能しているかを評価することが、最終的にコーポレートガバナンスやコンプライアンスを向上することにつながる、という関係性を持っています。

内部統制監査報告書とは

内部統制監査報告書とは、企業が作成した内部統制報告書に対する監査人の意見を記載している、内部統制監査の結果をまとめた報告書です。内部統制報告書が適切に作成されているかどうかを、外部の監査法人が独立した視点から評価した結果が記載されています。

また、内部統制報告書と内部統制監査報告書は金融商品取引法(J-SOX法)によって、上場企業が公表を義務付けられている書面です。

内部統制監査報告書の記載内容

内部統制監査報告書に記載される内容には、「無限定適正意見」「限定付適正意見」「不適正意見」「意見不表明」の4つの意見があります。

無限定適正意見

  • 意見の判断基準:内部統制報告書が内部統制の評価基準に準拠して適正に表示されていると判断した場合

限定付適正意見

  • 意見の判断基準:内部統制報告書に重要な虚偽表示はないものの、一部に修正が必要な箇所があると判断した場合

不適正意見

  • 意見の判断基準:内部統制報告書に重要な虚偽表示があり、内部統制が有効に機能していないと判断した場合

意見不表明

  • 意見の判断基準:内部統制監査に必要な証拠が入手できないなどの理由により、監査人が意見を表明できない場合

内部統制監査報告書は、企業の内部統制の有効性に関して監査法人からの情報を、金融商品を購入する側に提供する役割を持っています。投資家や株主はこの報告書を参考に、企業の内部統制の状況を把握し、投資判断を行います。

内部統制報告書との違い

内部統制報告書と内部統制監査報告書は、どちらも企業の財務報告に係る内部統制の有効性を示す書類ですが、作成主体と監査対象において明確な違いがあります。

内部統制報告書は企業自身が自社の内部統制を評価し、その結果をまとめたものです。つまり、企業が「我が社の内部統制は適切に機能しています」と主張する自己評価報告書と言えます。

一方、内部統制監査報告書は企業が作成した内部統制報告書の内容が適正かどうかを、外部の監査人が評価・検証した結果を記載したものです。つまり、監査人が「企業の自己評価は概ね妥当である」または「一部に修正が必要である」といった意見を表明するものです。

両者の関係性をわかりやすく例えるなら、内部統制報告書は企業の「自己診断書」、内部統制監査報告書は医師による「診断結果報告書」のようなものと言えます。企業が自己診断した結果を、専門家である監査人が客観的に評価し、その結果を報告書にまとめるという流れです。

このように、内部統制報告書と内部統制監査報告書は作成する主体と対象が異なるものの、企業の内部統制の有効性を評価するという共通の目標を持っています。

以下の記事では、内部統制報告書について詳しく解説しています。ぜひ併せて確認してみてください。

<関連記事>【サンプルあり】内部統制報告書とは?作成すべき会社や作成・提出のポイントを解説

内部統制監査実施の流れ

ここからは内部統制監査の実際の流れを見ていきましょう。

内部統制監査は、主に以下の7つのステップで実施されます。

①監査の評価範囲の把握

まず企業は、監査において評価対象となる内部統制の範囲を確認します。評価範囲を明確にすることで、企業の現状やリスクとなる要素、財務状況など、監査において評価の対象となる要点を正しく把握することが可能です。

②内部統制の整備・運用状況の評価

評価範囲を把握した企業は、自社の内部統制の整備状況と運用状況を評価します。内部統制が適切に設計されているか、設計された内部統制が実際に運用されているかを確認し、その状況を客観的に評価します。

③内部統制報告書の作成

で確認した内部統制の評価結果に基づいて、内部統制報告書を作成します。内部統制報告書には内部統制の目的、範囲、評価結果、改善計画などが記載されます。

④監査計画の策定

企業から提出された内部統制報告書に基づいて、外部の監査法人が監査計画を策定します。監査計画には、監査の対象となる範囲、監査方法、スケジュールなどが記載されます。

⑤内部統制監査の実施

監査計画に基づいて、監査法人が内部統制監査を実施します。内部統制監査では、内部統制報告書に基づく整備状況、運用状況、評価結果などを確認し、必要に応じて改善を提言します。

⑥内部統制監査報告書の作成

監査法人は内部統制監査の結果に基づいて、内部統制監査報告書を作成します。内部統制監査報告書には、前述した監査人の意見が記載されます。

⑦内部統制報告書と内部統制監査報告書の公表

企業が作成した内部統制報告書と、監査法人が作成した内部統制監査報告書を、金融商品取引法(J-SOX法)に基づいて公表します。

内部統制監査に関わる役職者

内部統制監査を実施するにあたり、それぞれ役割をもつ役職者が関係者として登場します。それぞれの役割や内部統制監査における立ち位置を、以下にまとめていきます。

経営者

経営者は企業の内部統制における、整備と運用の最終的な責任者です。整備や運用の実施状況を正確に把握し、定期的な評価と改善を指示することが求められます。内部統制の仕組みづくりだけでなく、内部統制の機能を維持することも経営者の役割となるため、注意が必要です。内部統制監査にあたっては、自らが主導した内部統制の実態を評価して、内部統制報告書を作成する責任者にも該当します。

取締役会

取締役会は、経営者の主導のもと内部統制に関する基本方針の決定や、整備・運用の監督を行います。内部統制に際して発生しうるリスクを評価することが求められ、逐次適切な現場への対応指示などが必要です。経営者に次ぐ責任を持つため、経営者が行う内部統制の監視や是正も取締役会の役割になります。

監査役会

監査役会は取締役会が行う業務を監査し、内部統制について有効性を評価します。経営者や取締役会からは独立した立ち位置で、内部統制の状況を客観的に判断する役割です。内部統制の運用過程で問題点が発見された場合、取締役会へ報告します。取締役会よりもさらに専門的に監査を行うことで、内部統制監査までに問題点を洗い出すのに不可欠な役割を担います。

内部監査部門

内部監査部門は現場レベルで内部統制の整備・運用状況をチェックする社内部門です。経営者や取締役会の目の届かない内部統制の状況を評価して、改善点があれば提言する役割を持っています。内部監査を実施する上では必須の役割であり、内部統制監査においても、提出する内部統制報告書の作成で重要な役割を果たします。

役職者以外の従業員

ここまでに述べた役職に就いていない従業員は、経営者や取締役会が進める内部統制に従って業務を行います。内部統制は業務の規律や法令の順守を目的としているため、従業員がその必要性や内容を理解して初めて効力を発揮します。内部統制においては最も重要な役割ともいえる、適正な業務の主体が従業員です。

監査法人

監査法人は内部統制報告書に基づき、内部統制監査を実施する主体となります。完全に企業から独立した第三者として、内部統制報告書の内容を監査し意見を表明する役割です。監査法人が提出する内部統制監査報告書が、最終的に企業の内部統制を評価する社会的な基準となります。

内部統制監査の6つのアサーション(監査要点)

監査法人が行う内部統制監査には、6つのアサーション(監査要点)が存在します。監査法人は、企業の内部統制報告書に基づく実態が、アサーションを満たしているかを判断して監査の結果とします。ここからはそれぞれのアサーションについて詳しく見ていきましょう。

実在性

実在性とは資産や負債、取引が実際に存在していることを意味します。例えば、売掛金が架空のものではなく、実際に取引先に対して請求権を持っていることなどが実在性に該当します。監査人は、請求書や契約書などの証拠書類を確認したり、取引先に直接確認状を送付したりすることで、実在性を検証することが可能です。また、実地棚卸や固定資産の現物確認なども、実在性を確認するための手段となります。

網羅性

網羅性とは記録すべき取引や事象がすべて記録されていることを意味します。売上がすべて売上帳に記録されているか、仕入がすべて仕入帳に記録されているかといった帳簿上の記録と財務諸表への反映が確認の対象です。監査人は取引記録の照合や、過去の取引履歴との比較などを行うことで、網羅性を検証します。企業側は内部統制の運用状況を把握し、記録漏れが発生する可能性のある箇所を重点的に確認することなどが重要です。

権利と義務の帰属

権利と義務の帰属とは、企業が資産に対する権利を持ち、負債に対する義務を負っていることを意味します。土地や建物が自社名義であること、借入金が自社の債務であることなどが確認の対象です。監査人は不動産登記簿や契約書などの証拠書類を確認したり、関係機関に照会したりすることで、権利と義務の帰属を検証します。企業は資産の利用状況や、担保提供の有無などを確認することで、権利と義務の帰属を適正に保つことが可能です。

評価の妥当性

評価の妥当性とは、資産や負債が適切な金額で評価されていることを意味します。売掛金が回収可能額で評価されているか、固定資産が減価償却費を考慮して評価されているかといった内容が確認の対象です。監査人は会計基準や税法に基づいて、評価額の妥当性を検証します。また類似の取引事例や、専門家の意見などを参考にすることもあります。

期間配分の妥当性

期間配分の妥当性とは、取引や事象が適切な会計期間に記録されていることを指します。売上が当期の売上として計上されていることや、費用が当期の費用として計上されているかといった、財務諸表上の計上が適切であれば問題ありません。監査人は、請求書の日付や契約期間などを確認することで、期間配分の妥当性を検証します。また、期末日以降の取引についても確認し、適切な期間に計上されているかを判断します。

表示の妥当性

表示の妥当性とは、財務諸表が適切に表示・開示されていることを確認する項目です。例えば、重要な取引や事象が適切に注記されているか、会計方針が適切に開示されているかを確認します。監査人は会計基準や関連法規に基づいて、表示の妥当性を検証します。この項目では、財務諸表の利用者が適切な判断を下せるように、十分な情報が開示されているかが標準的な判断の基準となることを覚えておきましょう。

2024年4月に実施基準が改正

内部統制監査の実施基準は、2023年4月に改訂が公表されたのち、2024年4月以降の事業年度から適用が開始されています。この改正は企業を取り巻く環境の変化に対応し、内部統制の有効性を向上させることが目的です。

この改正の主な変更点は以下の通りです。

  • 内部統制の目的の明確化
  • 不正リスクへの対応強化
  • 評価範囲の見直し
  • 内部統制報告書の記載事項の追加
  • IT活用に関するセキュリティの確保

詳しくは金融庁による「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」からご確認いただけます。

内部統制監査について解説しました

内部統制監査は、企業が行う内部統制の実施結果を客観的に判断するため、外部の監査法人を通じて行う監査の仕組みです。似た単語と混同しやすいものの、それぞれの内容や目的、実施主体を把握することで、切り分けて覚えることができます。

この記事では内部統制監査の概要と類語との違い、内部統制監査報告書について、監査実施の流れ、監査に関係する役職者、監査のアサーション、監査基準の改正について解説してきました。

内部統制監査は、企業にとって内部統制を有効に整備・運用したうえで、監査法人の監査を受ける必要があるため、大きな負担がかかります。監査実施の流れや評価の基準となるアサーションについて、紹介した内容を踏まえて企業の内部統制監査をスムーズに進めましょう。紹介・解説した内容が効率的な内部統制と監査の参考となれば幸いです。


Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

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AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」を提供する株式会社LegalOn Technologiesの、「Startup JAM-スタートアップ向けにビジネスの最前線をお届けするメディア-」を編集しています。

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