startup-jam LegalOn Cloud

IPOのメリットとは?デメリットや審査基準もひと目でわかりやすく解説!

IPOのメリットとは?デメリットや審査基準もひと目でわかりやすく解説!

【IPO準備ガイドブック】フェーズごとに徹底解説!IPOを成功させるためのタスクとスケジュール

無料でダウンロードする

スタートアップ企業やベンチャー企業の成功として、わかりやすい目標のひとつがIPO(新規公開株式)です。国内では上場と同義で用いられるIPOは、さまざまなメリットや注意すべき審査基準が存在します。

「IPOして何がいいのか?」「IPOするための条件ってなに?」といった疑問に答えるため、本記事ではIPOの概要、メリット・デメリット、国内でIPOできる証券取引所、IPOの審査基準を解説していきます。

IPOしたいと考えている企業にとって、今後の参考になる情報をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。

そもそもIPOとは

IPOとは、Initial Public Offering の略称で「新規公開株式」とも呼ばれます。非上場の企業が新たに証券取引所に株式を上場することで、多数の一般投資家に株式を公開することを指します。

IPOをするためには市場ごとに上場基準などを満たしているか審査があり、審査を通過することで上場することが可能です。審査内容は厳しく、企業は主幹事証券会社など協力会社のサポートを受けて、基準を満たすべく年単位の準備を行います。

「IPO」と「上場」の違い

IPOと上場はいずれも「非上場企業が市場に株式を公開する」「多数の一般投資家からの株式売買を可能にする」という点で共通です。一般的にはIPOに成功した企業の株式が上場し、市場で取引されるようになります。厳密に言えば、上場は新規株式の発行を必要としないなど違いがありますが、国内のビジネスシーンではほぼ同義語として扱われます。

「IPO」と「ダイレクトリスティング」の違い

IPOとダイレクトリスティングは、上場時に公開する株式の違いがあります。IPOが新規株式公開であるのに対して、ダイレクトリスティングは新株を発行せず既存の株式のみ上場する手法です。ダイレクトリスティングには、既存の株主が持つ株の希薄化を防ぐ他に、ロックアップ期間無しですぐに売買が可能になるなどのメリットがあります。一方でIPOとは異なり、新規の資金調達手段とはならない点に注意が必要です。

「IPO」と「PO」の違い

IPOとPOの違いは、株式を売り出す企業が既に上場しているかどうかです。

IPOは非上場・未上場の企業が、新規に株式を証券取引所に上場させて売り出す方法である一方、POは既に上場している企業が、増資による新株や大株主の保有株を一般投資家に売却することを指します。公募による株式の取引である点は共通ですが、企業が上場しているかによって使用される方法が異なります。

以下の記事では、IPOの基礎知識や申請の動きをわかりやすく解説しております。ぜひ併せて確認してみてください。

<関連記事>IPOの基礎知識や申請の動きをわかりやすく解説します!

IPOのメリット

IPOには企業だけでなく、企業に関わる株主や従業員にもそれぞれのメリットがあります。どのようなメリットがあるか把握することで、それぞれの利益バランスを考えたIPO準備をスムーズに進めましょう。

ここでは企業、株主、従業員にとってのIPOのメリットを順番に解説していきます。

企業にとってIPOのメリット

スタートアップにとってIPOは単なる「資金調達手段」ではなく、成長戦略の選択肢を大きく広げる重要なステージです。ここでは、スタートアップ企業の視点からIPOのメリットを解説します。

資金調達の幅が広がる

IPOを行うことで、株式を一般投資家のいる市場に公開することができます。株式の流動性が高まることで、新たな株主からの投資を受けられるようになるため、資金調達の幅が広がります金融機関やベンチャーキャピタルからの融資に比べて、大きな規模で資金調達できるのが大きな利点です。

スタートアップにとって「スピード感ある成長」と「資金の継続性」は両立しにくい課題ですが、IPOはその打開策となります。

企業価値と社会的信用の向上

IPOを果たすことで企業の価値は市場によって可視化され、社会的な信用が高まります。さらに会計監査の実施や情報開示体制の整備は、健全な経営の証として外部に示され、顧客や取引先からの信頼も強化されます。これにより、大手企業との取引機会が広がると同時に、企業ブランドの価値向上にもつながり、マーケティング面での波及効果も期待できます。

IPOは単なる資金調達手段にとどまらず、スタートアップが次の成長段階へ進むための「信用通貨」としての役割も果たしています。

優秀な人材の採用と定着

IPOはスタートアップが採用力を高める有効手段です。IPOによって企業の認知度や信用力が向上することで、求職者からの注目度が高まり、応募者の質と量の両面でポジティブな影響を及ぼします。さらに従業員にストックオプションを付与することで、給与に加えて将来的なリターンが見込める点が、大きな魅力として働きます。

人材の確保が成長の鍵ともいえるスタートアップにとって、IPOは「人が集まる企業」へと進化するための重要な一歩となります。

経営体制の強化

IPOに向けた準備プロセスでは、内部統制やガバナンス体制、会計処理の透明性など数多い項目について厳格な整備が求められ、企業の土台である経営体制が大きく強化されていきます。例えば業務フローの標準化、役員・監査機能の明確化、リスク管理の仕組み構築などが進み、結果として組織全体が持続的に成長できる体制へと変化していきます。

IPOを目指す過程は単に形式的な審査基準を満たすことではなく、経営の健全性と長期的な企業価値の向上にに直結する重要な取り組みといえるでしょう。

株主にとってIPOのメリット

IPOを行うことで株主には以下のようなメリットがあります。

株式の売買がしやすくなる

IPO前までは公開されている株式でない関係上、株式の購入・売却に制限がつくことが多くあります。しかしIPOにより株式が公開されれば、自由に売買できるようになるため、現金化が容易になります。

株主にとって、保有する株式の換金性が向上するのは大きなメリットと言えるでしょう。

キャピタルゲインが獲得できる

キャピタルゲインが得られることも株主にとっての大きなメリットです。キャピタルゲインとは株式を売却した際に得られる売買差益を指します。早期からスタートアップ企業に資金を提供するベンチャーキャピタルなどは、このキャピタルゲインの獲得を目的にしている場合が多いです。

従業員にとってIPOのメリット

IPOを行うことで従業員には以下のようなメリットがあります。

個人の社会的信用が向上する

企業の知名度と社会的信用の向上により、そこに所属する従業員として社会的信用を得ることが可能です。人間関係における信用度のみならず、金融機関のローンを組みやすくなったり、転職の際に有利になったりするというメリットもあります。

インセンティブ付与が期待できる

IPOによってストックオプションや従業員持株制度によるインセンティブ報酬が受け取れる可能性があります。業務で挙げた実績が評価される形式の株式報酬などもあるため、単純な金銭的メリットだけでなく業務モチベーションの向上も期待できます。

上場の過程に関与した実績・経験が得られる

上場の過程では、さまざまな体制変更やルール導入が行われ、従業員もそれに応じた対応が必要です。こうしてIPOに関わった実績や経験は簡単に得られるものではないため、自信になると同時にキャリアとしても評価される可能性があります。

IPO準備において、フェーズごとのタスクとスケジュールについて詳しく知りたい方は、ぜひ以下お役立ち資料も併せて確認してみてください。

≫無料ダウンロードはこちらから

IPOのデメリット

多くのメリットがある一方で、企業の目線で見るとIPOに伴って生じるデメリットも存在します。それぞれのデメリットが自社に与える影響を考慮したうえで、IPOを行う準備を始めるかを検討しなくてはなりません。

それぞれのデメリットを詳しく見ていきましょう。

上場準備に3~5年の時間がかかる

上場に必要となる準備は多岐に渡ります。一般的に上場準備の期間は3年程度とされ、場合によっては5年ほどかかる場合もあります。これは審査に上場前2期分の監査が必要となることや、内部体制の整備に時間がかかることなどが理由です。

監査や上場申請準備には、監査法人や主幹事証券会社の協力を得ることが必要です。その選定や審査に対応した内部体制の整備を早期に開始することで、スムーズに上場を進められるようにしましょう。

準備から上場後まで大きなコストが発生する

上場準備にあたって、体制の整備や協力会社への報酬といった多くのコストが発生します。これらのコストは避けることができないため、IPOをするうえで事前に考慮に入れておかなくてはなりません。

また上場後も上場の維持するためのコストが継続的に発生します。人件費や協力会社への報酬の他、上場している市場ごとに上場料などがあるためです。

一例として、東京証券取引所の各市場の上場審査・新規上場料と毎年発生する維持費用を見てみましょう。

プライム市場

  • 上場審査料:400万円
  • 新規上場料:1,500万円
  • 年間上場料(上場時価総額が「50 億円を超え 250 億円以下 」の場合):168万円 

スタンダード市場

  • 上場審査料:300万円
  • 新規上場料:800万円
  • 年間上場料(上場時価総額が「50 億円を超え 250 億円以下 」の場合):144万円

グロース市場

  • 上場審査料:200万円
  • 新規上場料:100万円
  • 年間上場料(上場時価総額が「50 億円を超え 250 億円以下 」の場合):120万円

参考:日本取引所グループ ホームページ 「上場料金」

業績の維持・向上が常に求められる

IPO後に多数の投資家が株式を購入することで、多くの株主から業績の向上が求められるようになります。また東京証券取引所では2022年4月4日の市場区分再編以降、上場維持基準が厳しくなっています。これらの事情により、企業はIPO時の水準を維持するだけでなく、常に向上するよう努めなくてはなりません。業績に対するプレッシャーから短期的な結果に焦り、中長期的な視点を失うデメリットもあるため、注意が必要です。

情報開示の義務が生じる

多数の投資家が株主となったIPO後は、企業情報について開示の義務が生じるようになります。前もって適切な情報開示体制が整えられていなければ、必要な時に情報を発信できず信用の低下につながる可能性があります。

適切な情報開示体制を整え、定期的な株主総会を運営することで、不特定多数の株主と社会に対する説明責任が果たせるように、整備を行いましょう。

国内でIPOできる証券取引所

IPOは証券取引所を通じて株式を市場へ公開することで成立します。証券取引所は金融商品取引法に基づいて株式や債券の売買取引を行う施設です。

国内でIPOできる市場を持った証券取引所は、現在4つ存在しています。それぞれの市場と特徴を簡単に把握して、自社が上場を検討する証券取引所について考えてみましょう。

東京証券取引所

日本取引所グループの子会社であり、一般的に「東証」と呼ばれている国内で最も大きな株式売買代金を持つ証券取引所です。上場基準の異なる4つの市場があり、一般向けとスタートアップ・ベンチャー向けに以下のように展開されています。

一般市場(本則市場)

  • プライム市場
  • スタンダード市場

新興市場

  • グロース市場
  • TOKYO PRO Market

また、2013年1月1日に東京証券取引所と大阪証券取引所が経営統合して日本取引所グループとなりました。このため大阪証券取引所は大阪取引所と名称を変更して、すべての現物株式市場を東証に移管しています。

以下の記事では、東証各市場について詳しく解説しています。理解を深めたい方はぜひ併せて確認してみてください。

<関連記事>

名古屋証券取引所

名古屋株式取引所を前身として、中部地区が地盤となった証券取引所です。2022年4月4日付の上場制度整備後は、以下の市場が展開されています。

一般市場(本則市場)

  • プレミア市場
  • メイン市場

新興市場

  • ネクスト市場

福岡証券取引所

九州の企業を中心に株式が上場している地方証券取引所です。一般向けの市場とスタートアップ向けの市場で計3つの市場があり、2024年現在で以下の市場が展開されています。

一般市場(本則市場)

  • 本則市場

新興市場

  • Q-Board市場
  • Fukuoka PRO Market

札幌証券取引所

北海道の企業を中心に株式が上場している地方証券取引所です。一般向け市場とスタートアップ向け市場の計2つの市場のみであり、最もシンプルな区分けで市場が展開されています。

一般市場(本則市場)

  • 本則市場

新興市場

  • アンビシャス市場

IPOの審査基準

ここまでに述べたようにIPOには市場ごとに厳しい審査があります。ここではその中から代表的な市場の例として、東京証券取引所のスタートアップ企業向け市場である「グロース市場」の審査基準を紹介していきます。具体的な基準を知ることで、目標とするIPOの水準を確認しましょう。

東京証券取引所(グロース市場)の新規上場基準

グロース市場は東京証券取引所に開設されている市場のうち、スタートアップ企業やベンチャー企業向けに展開されている市場です。日本取引所グループが公開している新規上場ガイドブックでは、以下のように定義されています。

グロース市場は、高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場です。そのため、申請会社には「高い成長可能性」を求めています。

引用:日本取引所グループ「2024 新規上場ガイドブック(グロース市場編)

グロース市場における新規上場基準の概要は以下の通りです。

グロース市場の形式要件(概要)

グロース市場

  • 時価総額::ー
  • 株主数:150人以上
  • 流通株式数:1,000単位以上
  • 流通株式時価総額:5億円以上
  • 売買高:ー
  • 流通株式比率:25%

参考:日本取引所グループ ホームページ 「市場構造の見直し」

形式要件と実質基準

前項の新規上場基準にある株主数や流通株式数などの条件は、形式要件と呼ばれます。これに対して経営の健全性や情報開示体制の適切性などを判断する基準として実質基準が存在します。

実質基準は形式基準を満たしていることを前提として評価される基準です。水準は市場ごとに厳しさが異なりますが、どの市場であれ基本的に以下に示す内容が審査対象となります。

  • コーポレートガバナンスと内部統制の有効性
  • 情報開示体制の適切性
  • 企業経営の健全性
  • 事業および経営の中長期的な計画性
  • その他の公益または投資者保護の観点から各証券取引所が求める事項

新規上場基準だけでなく、実質基準にも注意してIPOの準備を進めましょう。

以下の記事では、東証各市場の上場基準について網羅的に解説しています。理解を深めたい方はぜひ併せて確認してみてください。

<関連記事>上場条件とは?プライム・スタンダード・グロースの市場区分ごとに紹介

IPOまでのスケジュールと期間ごとの手順

IPOに至るまでには、3〜5年の時間がかかります。申請において必要な書類作成や、整備すべき社内体制が多くあります。

以下の記事ではIPOまでの全体的なスケジュールと、それぞれの期間ごとの詳細を解説しています。IPOを見据える企業様や、IPO準備中の方は、ぜひ上場準備のマニュアルとしてご活用ください。

<関連記事>上場(IPO)準備の全体スケジュールと期間ごとの具体的な手順

IPOのメリットや審査基準について紹介しました

IPOは企業にとって多くのメリットがあると同時に、準備期間の長さやコスト面でのデメリットも存在する一大プロジェクトです。自社に合った形でIPOを達成するためには、十分な準備と上場する市場や証券取引所選びも重要になるでしょう。また、審査にあたっては形式基準だけでなく実質基準を満たすことも必要になる点に注意が必要です。

この記事ではIPOの概要、メリット・デメリット、国内でIPOできる証券取引所、IPOの審査基準について解説してきました。

スタートアップ企業がIPOを達成してメリットを活かすことができれば、その後も大きな成長を続けることができます。年単位で準備する必要のあるIPOを着実に進めるため、本記事で解説した内容をぜひ参考にしてみてください。

IPO準備ガイドブック フェーズごとに徹底解説!IPOに必要なタスクとスケジュール

Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

Startup JAM編集

AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」を提供する株式会社LegalOn Technologiesの、「Startup JAM-スタートアップ向けにビジネスの最前線をお届けするメディア-」を編集しています。

【IPO準備ガイドブック】フェーズごとに徹底解説!

無料で資料をダウンロードする

AI契約書レビューや契約書管理など
様々なサービスを選択してご利用できるハイスペック製品

製品についてはこちら