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有償ストックオプションの導入で得られるメリットとは?種類やデメリットも解説

有償ストックオプションの導入で得られるメリットとは?種類やデメリットも解説

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従業員のモチベーション向上や離職防止のインセンティブとして、近年採用されているのが有償ストックオプションの制度です。ストックオプションには複数の種類がありますが、有償ストックオプションが選ばれるのにはどんな理由があるのでしょうか。

この記事では、有償ストックオプションとはどのような制度なのか、具体的なメリットや他の制度との違いについて触れながら、詳しく解説します。

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有償ストックオプションとは

ストックオプションとは、自社で発行している株式をあらかじめ決められた価格で購入することができる権利です。ストックオプションは通常の給与報酬と合わせて提供することにより、高いモチベーションの向上につながる施策です。

ストックオプションにはいくつかの種類があり、人気の高い制度の一つが有償ストックオプションです。有償ストックオプションでは、ストックオプションの行使者が金銭を支払うことで新株予約権を取得できます。

購入はすべての人ではなく、特定の条件を満たした人にのみその権利が与えられるのもこの制度の特徴です。条件を満たした上で、初めて定められた価格での購入が可能となります。

そのため、有償ストックオプションの制度は従業員に対して新株予約権をばら撒くことを目的とした制度ではありません。ある程度会社の都合に合わせてもらいながら、ストックオプションの仕組みを活用できる仕組みです。

無償ストックオプションとの違い

有償ストックオプションの仕組みをさらに理解する上で有効なのが、無償ストックオプションとの比較です。無償ストックオプションは、その名の通り無償で従業員が発行価額に関係なく、株式を取得できます。有償ストックオプションの場合、従業員に価格に応じた株式取得分の金銭的な支払いを求めますが、無償はその必要はありません。従業員にとっては無償ストックオプションの方が、気軽に利用できる制度と言えるでしょう。

ただ、言い換えればこれは従業員に身銭を切らせるかどうかの違いであるとも言えます。無償ストックオプションでも、一定のモチベーション向上が期待できるでしょう。一方で有償ストックオプションは権利行使者が自腹で株式を取得することとなるのが特徴です。自腹で株式を取得している以上、損失を生まないために会社を成長に導くという、強力なモチベーションを生み出せます。

もう一つの違いは、行使期間です。無償ストックオプションの場合、新株予約権を締結してから10年以内にその権利を行使し、株式を取得しなければなりません。一方で有償ストックオプションの場合、行使に伴う期限が設けられておらず、権利者の好きなタイミングで取得ができるという特徴を持っています。

有償ストックオプションにおける発行価額と行使価額の違い

有償ストックオプションを理解する上で、知っておきたいのが発行価額と行使価額の違いです。

発行価額について

発行価額とは、ストックオプション一つに対して発生する価格のことです。有償ストックオプションを行使する場合、従業員は発行価額に購入するストックオプションの数を乗算した金額を、会社に支払わなければなりません。多くのストックオプションを手に入れようとするほど、金銭的負担が大きくなるという仕組みです。

発行価額の算定は、

  1. ストックオプションの公正価値の算定
  2. 条件の付与による価値の引き下げ

という2つの手順を踏むことで行われます。

ストックオプションの公正価値は、将来株価がどれくらいまで上昇するかを踏まえて決定します。公正価値は、実際の株価の50%前後に設定されるのが一般的です。公正価値が決定したら、その後条件付けを行うことにより価値の引き下げが行われます。

特定の業績を達成したときにのみ、ストックオプションを行使できるなどの条件付けが特徴です。ストックオプションの価値がさらに引き下がり、最終的な権利行使価格が決定します。そのため、実際の発行価額は株価の10%以下に設定されることも珍しくありません。

行使価額について

行使価額とは、ストックオプションの権利を行使するときに支払うこととなる価格です。行使価額は通常、株価以上の金額で設定されます。実際の算定の際には、直近の株式取引の際に行われた金額を参考の上、行使価額を決めるのが一般的です。

有償ストックオプションの導入に伴い、どのような価格算定が必要なのか、いつそれが必要なのかを整理しておくと良いでしょう。

有償ストックオプションの導入が進む理由

ストックオプションには複数の制度があるのにも関わらず、企業が有償ストックオプションの制度を選ぶのにはどのような理由があるのでしょうか。ここでは主な2つの理由について、解説します。

付与できる株式の数に制限がない

有償ストックオプションには、付与できる株式の数に制限がありません。無償ストックオプションの場合は権利行使価額が1,200万円以下になるよう設定するという決まりがあります。有償ストックオプションであれば有償ではあるものの、大量取得の機会を提供できたり、大株主への付与も可能です。

税制適格要件の制約がない

有償ストックオプションは、無償ストックオプションのような税制的確要件の厳しい制約がない点も喜ばれています。

無償ストックオプションは、税制適格要件を満たす形で運用しないと、大きな累進課税が発生しかねません。一方で有償ストックオプションなら、税制適格要件を満たさずとも、20%程度の譲渡所得課税に抑えられます。節税の観点から、有償ストックオプションが無償ストックオプションよりも選ばれているというわけです。

有償ストックオプションの導入メリット

有償ストックオプションの導入は、企業にさまざまなメリットをもたらすことが期待されます。どのような利点があるのか、ここでまとめて確認しておきましょう。

モチベーション・生産性の向上

上でも触れていますが、有償ストックオプションの設定は従業員や役員のモチベーション改善に効果的です。ストックオプションの取得が有償のため、少しでも高い価格で売却したいというインセンティブが期待できます。また、万が一会社の事業がうまくいかなかった場合、取得の際に支払った金銭はそのまま損失となってしまうのもポイントです。

経営者だけでなく、従業員や役員にも会社の事業に携わる際のリスクを背負ってもらえるようになります。

人材の定着・獲得改善

有償ストックオプションは、将来会社が成長したときに、初めて取得者が利益を得られる制度です。会社が十分に成長するまで、優秀な人材には離れないでもらいたい場合、この制度の活用が役に立つでしょう。

また、会社の成長に対して責任感を持ちたいと考える、ビジョンを持った人材を集める上でも効果的な制度です。優秀な人材に対して、多額のオファーを出すことが難しい場合も、有償ストックオプションの提供により、確保に繋げられます。将来のインセンティブとして、高い効果を発揮するでしょう。

社外協力者への付与によるパフォーマンス向上

有償ストックオプションの便利なところは、社内従業員や役員以外にも付与することができる点です。近年は働き方の多様化に伴い、雇用契約ではなく業務委託契約などによって、社外の人材を効果的に起用するケースが増えています。有償ストックオプション制度は、こういったフリーランスの起用や外部専門家への依頼の際、報酬として提示することが可能です。

働き方に左右されることのない、均等な機会の提供を検討している場合、導入を検討してみましょう。

役員報酬決議の不要

厳密に言うと、有償ストックオプションは報酬としてはカウントされません。そのため、会社法上は同制度を用いる場合でも、役員報酬決議を取る必要がないという強みがあります。

上場企業の場合、役員報酬決議の採択のために株主総会を設ける必要がなくなり、手順の簡略化につながるでしょう。未上場の場合、上場企業とは異なり株主総会における決議が必要となる点は、注意が必要です。

有償ストックオプションのデメリット

有償ストックオプションの実施には、複数のメリットが伴う反面、注意しておくべきデメリットも存在します。

従業員による金銭払込の発生

すでに上述の通り、有償ストックオプションを用いる際には従業員の支払いが発生します。インセンティブとして価値を感じられるほどのストックオプションを取得するには、相応のまとまった資金を事前に用意しなければなりません。そのため、有償ストックオプションの恩恵を受けられるのがある程度キャリアや資産のある人材に限られる恐れがあります。

最近では、有償ストックオプションを給与から天引きする形で取得する方法も選ばれています。必要に応じて、同制度のメリットを最大限引き出せる仕組みづくりに努めましょう。

行使条件の達成が必須

有償ストックオプションを行使するためには、特定の条件の達成が必要です。業績が一定の数値に達することや、株価の高値更新などが挙げられます。要件を達成しないと、従業員は金銭的なリスクを負っているのに、いつまでもその恩恵が得られないことになりかねません。

条件達成が計画通りに進まなくとも、従業員のモチベーションを低下させないような仕組みづくりが必要です。

公正価値算定の負担の発生

有償ストックオプションを採用するにあたり、必要なのが発行価額の設定です。上で説明したように、発行価額の設定には、その過程で公正価値を算定の上、算出が求められます。

難しいのが、どうやって公正価値を算定するかです。適切な算定には専門家の手を借りながら行うことが必要になるため、委託費用が事前に発生することは覚えておきましょう。

有償ストックオプションの主な活用ポイントは?

このように有償ストックオプションは、メリットとデメリットが混在するため使い所に悩むこともあるかもしれません。導入の際には、以下のポイントが当てはまるかどうかを踏まえた、他の制度との比較検討が大切です。

創業者への付与を前提とする

有償ストックオプションは、創業者に付与するための制度として活用すると良いでしょう。というのも、創業者の税負担が小さく抑えられ、最大のリターンを得ることを目的とした制度として有力だからです。

有償ストックオプションは、上で解説したように税負担の小さい制度です。税制適格要件を満たせないことが多い創業者でも、課税額を最小限に抑えられます。上場前にストックオプションを受けておけば、上場後に大きなキャピタルゲインを得られるでしょう。

資金調達が十分でない場合に活用する

有償ストックオプションは、他のストックオプションと同様に、手元資金が心許ない場合に有効なインセンティブ制度です。会社が軌道に乗り、確かな実績を挙げてから取得者に還元できる上、納得感のある報酬を得やすい制度と言えます。

立ち上げて間もないスタートアップでありながら、優秀な人材を求めているという場合によく機能する制度です。

まとめ

この記事では、有償ストックオプションとはどのような制度なのか、具体的なメリットやデメリットに触れつつ紹介しました。ストックオプションを行使するには金銭の支払いが必要ですが、それがかえって良い動機づけになる点が特徴の制度です。

無償ストックオプションに比べて、税制上の優遇措置が充実していることは重要な強みと言えます。節税はもちろん、ストックオプション本来のインセンティブを、最大限引き出すことが可能です。

使いどころをよく理解した上で、制度をフル活用し優秀な人材の確保や会社の成長力確保に役立てましょう。

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