成果評価とは
成果評価は、一定期間内にあげた業績・成果を評価するものです。業績評価と同じ意味になります。たとえば営業職の売上高や、組織全体の業績に対する貢献度などが成果評価の対象になることが多いでしょう。
成果評価と成果主義の違い
成果評価と似た言葉に、成果主義があります。
成果主義は、従業員の報酬や等級・役職などを決める際に、評価期間内の「成果のみ」に着目するシンプルなシステムです。
これに対して成果評価は、人事評価制度のなかで単独で使われるとは限りません。企業によっては、多角的な評価をするために、成果評価と後述する他の評価基準や評価方法を組み合わせるケースもあります。
成果評価は、成果主義の企業で使われることが多い言葉です。ただし、厳密な意味は少し違うと考えてよいでしょう。
成果評価とほかの評価方法の違い
成果評価の特徴は、人事評価で使われる他の評価(能力・情意・行動)との違いに着目することで、よりイメージしやすくなります。以下の順で違いを詳しく見ていきましょう。
- 成果評価と能力評価の違い
- 成果評価と情意評価の違い
- 成果評価と行動評価の違い
成果評価と能力評価の違い
能力評価は、職務遂行に必要な能力・スキルを評価するものです。具体的には、仕事に必要な知識・スキル・資格と、それらをどれだけ発揮できたかを一定の基準で評価していきます。評価対象となる能力は、以下の3つに分けられるでしょう。
- 【潜在能力】現段階で顕在化していない能力
- 【発揮能力】すでに顕在化し成果を出すために使われている能力
- 【保有能力】過去に顕在化した能力
これに対して成果評価では、本人の能力・知識・スキルなどは評価対象となりません。能力・知識・スキルを使って出した成果・業績だけが評価されるイメージになります。
成果評価と情意評価の違い
情意評価は、仕事に対する姿勢や意欲を評価するものです。一般的には、以下の4項目が評価されることが多いでしょう。
- 規律性
- 積極性
- 責任性
- 協調性
情意評価の場合、今月の業績があまり思わしくなくても、たとえば「営業部のメンバーとうまく協力し合えている」や「展示会の準備を最後まで責任を持ってやり遂げた」などの姿勢が見られると、協調性および責任性の面で評価が高くなりやすいでしょう。
これに対して成果評価では、本人の姿勢や意欲は加味されません。仮に協調性や責任性が著しく低くても、評価期間内で高い業績をあげれば成果評価がアップすることになります。
成果評価と行動評価の違い
行動評価とは、高い成果を出している従業員(ハイパフォーマー)の行動を基準とするものです。コンピテンシー評価とも呼ばれます。行動評価の対象は、成果に結びついた行動です。具体的には、以下のようなものになるでしょう。
- 月100万円の売上をあげるために、顧客ニーズに耳を傾けられたか?
- 30万円分の販売をするために、お客様を惹きつけるプレゼンテーションが行えたか? など
一方で成果評価では、上記でいう「月100万円の売上」や「30万円分の販売」などの成果・業績だけが評価されることになります。
成果評価が注目される理由と背景
近年のビジネス環境では、成果・業績に重きを置いた人事評価を行う企業が多くなりました。その背景にあるのは、日本企業で長く続いた終身雇用・年功序列制度の崩壊や、長く続く不況などの影響です。
終身雇用と年功序列が一般的だった頃は、人事評価のなかで勤続年数・年齢・学歴が重視される傾向がありました。このことから、各従業員の業績や組織への貢献度が評価に直結しづらい課題があったのです。それはつまり、高い成果や業績を出し続ける若い世代などからすれば、理不尽ともいえる状況でした。
一方で近年は、終身雇用・年功序列制度が崩壊し、転職が一般化しつつあります。売り手市場の業界も増えるなかで、人事評価などに理不尽さや不公平感を覚えた従業員の離職も発生しやすい時代です。
こうしたなかで優秀な人材の離職を防ぎ、自社で長く活躍してもらうためには、従業員の業績や成果を適切に評価する仕組みが必要でしょう。
またバブル崩壊後の日本では、不況の時代が長く続いています。特に最近では、原材料費や光熱費、人件費なども高騰し、生産性を高めることも難しくなってきました。
この状況で目標を達成し続けるためには、優秀な人材に能力を最大限に発揮してもらい、個人の生産性を高める取り組みも必要です。
成果評価のメリット
成果評価を適切に導入・運用すると、以下の効果やメリットが得られやすくなります。
- 成果を適切に評価しやすくなる
- 従業員のモチベーションが高まる
- 個人と組織の生産性が向上しやすくなる
- 人材育成を進めやすくなる
- 成果が報酬に反映されやすくなる
- 人件費を抑えやすくなる
成果を適切に評価しやすくなる
成果評価を導入すると、売上や販売個数などの業績を総合的な人事評価に反映しやすくなります。これは目に見える成果よりも勤続年数・社歴・年齢などが重視されがちな年功序列制度との大きな違いです。
仮に若手などが高い成果を出しているにも関わらず、社歴や年齢などの影響から納得の人事評価が得られていなかった場合、成果評価を導入することでこの問題の解消・緩和が期待できるでしょう。
従業員のモチベーションが高まる
従業員が数値目標を達成するために多くの努力をしていた場合、成果評価で高い評価を受けると「自分の頑張りが認められた!」などのポジティブな気持ちが生まれやすくなるでしょう。
また年功序列の組織のなかで、自分の高い成果が認められず悔しい想いをしていた従業員も、成果評価の導入によって納得感や満足感が得られやすくなるはずです。
こうしたポジティブな気持ちは、次の目標達成や新たなチャレンジの原動力となる高いモチベーションをもたらします。
個人と組織の生産性が向上しやすくなる
従業員が自分の評価に納得し、高いモチベーションで仕事ができる状態は、個人の生産性を向上させることにもつながります。
またたとえば「今年の売上1,000万円」の達成で高評価を受けた人が「来年の売上2,000万円」を目指すとなれば、現状よりも高い精度の計画を立て仕事の進め方なども工夫することになるでしょう。
こうした計画や工夫によって成果の再現性が高まると、個人の生産性はさらに向上しやすくなります。また成果の再現性を高めるメンバーの増加は、組織全体に生産性アップの好循環をもたらすでしょう。
成果重視の人材育成を進めやすくなる
短期的な成果や業績重視で人材を育てる場合、「本人が達成すべきゴール」や「上司が指導・サポートする内容」なども設定しやすくなります。また成果重視の人材育成であれば、本人の取り組みや上司のフォローなどが適切だったかどうかの振り返りもしやすくなるでしょう。
人件費を最適化しやすくなる
年功序列制度の組織では、以下のように社歴が長いベテラン社員が、高い成果を出し続ける若手よりも高い報酬をもらう問題が発生しやすくなっていました。
- 【社員Aさん(社歴15年)】営業成績は部内で8位、年収700万円
- 【社員Bさん(社歴3年)】営業成績は部内で1位、今年度の社長表彰、年収500万円 など
上記に対する会社の本音としては、高い営業成績を維持し社長表彰も受けているBさんに高い報酬を支払いたいでしょう。しかし、年功序列の組織では、「ベテラン社員の年収・ランクが高く、若手社員は低い」などの慣例があることから、業績があまり高くない人にも多くの賃金を支払わざるを得ない実情があったのです。
そこで成果評価を重視する制度を導入すると、Aさんのように業績が低いベテラン社員の報酬を抑えることで、高い成果を出し続けるBさんなどに適正な賃金を支払いやすくなります。
成果評価のデメリット
先述の効果・メリットは、成果評価が適切に導入・運用された場合に得られるものです。一方で、成果評価の導入に失敗した場合、逆効果になることがあります。
ここでは、成果評価の失敗で起こりうるデメリットと注意点を見ていきましょう。
- 短期目標や高評価されるが重視されがちになる
- チーム力が低下することがある
- 成果評価に不向きな職種や部署がある
- 新しい挑戦が生まれにくくなる
短期目標が重視されがちになる
組織や上司が成果重視の人事評価を行った場合、従業員は評価期間内で「売上1,000万円」や「3万個の販売実績」などの短期的な目標達成に向けた計画実行や努力をしていくことになります。
その場合、たとえば「既存顧客との信頼関係を構築する」や「チームの部下や後輩に、販売力を高めるテクニックを教えていく」といった自分の成果・業績に直結しない目標や仕事は軽視されやすくなるかもしれません。
チーム力が低下することがある
売上や販売個数などの個人成果を重視しすぎた場合、それぞれが自分の業績アップに集中することで、同僚との関係構築やフォローなどまで気が回らなくなるかもしれません。
またたとえばある人が「営業成績3年連続1位」という目標を設定した場合、同じ営業部門のメンバーは「一緒に働く仲間」ではなく、「営業成績を競うライバル」になる可能性もあるでしょう。
近年のビジネス環境では、各種コストの高騰や顧客ニーズの多様化・複雑化などの影響から、個人や組織の目標達成が難しくなっています。またさまざまな外的環境が著しく変化する影響から、ビジネスを進めるなかでの壁や逆境に直面しやすい時代です。
そこで個人の成果を重視しすぎることでチーム力などが著しく低下すると、逆境が生じたときに責任の押し付け合いや足の引っ張り合いなどが起こりやすくなるかもしれません。
成果評価に不向きな職種・仕事・部署がある
以下のような職種・部門は、短期間でわかりやすい成果を出せないことが多いです。
- 企画部門
- 事務職
- 研究職
- 管理職 など
こうした職種に成果重視の人事評価制度を導入した場合、従業員側に不公平感や違和感が生まれやすくなるでしょう。また成果評価が適していると思われがちな営業職や販売職も、以下のような仕事に携わっている時期(人)は、売上や販売個数などの業績目標の達成が難しくなる可能性があります。
- 自分の営業活動の傍らで、新人のOJT研修を実施している
- 後輩が起こした問題の早期解決を目指し、フォローを続けている など
新しい挑戦が生まれにくくなる
成果目標の達成度で人事評価を行う場合、従業員は「確実に目標達成できる方法」を模索することになります。それはつまり、「目標達成を目指すなかで不安要素が多いチャレンジはしない」や「安全志向が強くなる」ともいえるでしょう。
近年のように、顧客ニーズや市場・産業が複雑化する時代は、潜在顧客が多く眠るブルーオーシャンを求めて、新たな領域を開拓することなども必要となります。仮にそこで成果重視の影響から現場のチャレンジ精神が低下すると、放置されたブルーオーシャンが他社に奪われることにもなりかねません。
従業員の反発を招くこともある
たとえば、年功序列による評価が長く続いてきた組織にいきなり成果重視の評価制度を導入すると、これまで年齢・社歴・学歴などで高待遇を受けてきた従業員の人事評価が著しく下がる可能性があります。
その従業員が高い業績をあげていなければ「評価は適切・公平」になるのですが、年齢序列のなかで働いてきた従業員からすれば、納得できないこともあるでしょう。
場合によっては、こうした不平不満から、新たな評価制度や人事部門への反発が生まれる可能性もあります。
成果評価の基準となる3項目
成果・業績を重視する評価では、先述のとおり場合によっては逆効果ともいえる問題が起こる可能性があります。この問題を防ぐためには、成果評価の基準に以下の3項目を取り入れることも一つです。ここでは、3項目の概要と導入ポイントを紹介しましょう。
- 業績目標達成度
- 課題目標達成度
- 日常業務評価
業績目標達成度
業績目標達成度は、たとえば「今期の売上目標500万円」のように、あらかじめ設定された目標への達成度合いを見るものです。ここでの目標は、本人の成果・業績に直結するものになります。
業績目標の設定では、SMARTなどのフレームワークを使い、達成可能な数値と期間も明確にしていく必要があるでしょう。
- Specific(具体的である)
- Measurable(計測可能である)
- Achievable(達成できる)
- Related(上位目標との関連性がある)
- Time‐bound(期限が設定されている)
達成度に対しては、たとえば「達成度100%→評価5、達成度80%以上→評価4、達成度60%以上→……」のように、数値評価を行う必要があります。
課題目標達成度
課題目標達成度は、仕事上の課題目標を設定しその達成度を評価するものです。ここでいう課題とは、あくまで「従業員個人が抱える課題」となります。企業が求める業績と直結させる必要はありません。
具体的な目標は、本人の課題や職種・役割によって大きく変わります。たとえば日々の営業活動が忙しくテレアポ件数が伸び悩んでいる場合は、「テレアポを50件/月以上、評価期間(半年)で300件以上」などの目標を設定できるでしょう。
課題のなかには定性的なものもあるはずです。その場合も、可能な限り数値評価できるようにすることが公平性を高めるポイントになります。
日常業務成果
日常業務成果とは、評価期間とは関係なく日々の業務をするなかでもたらされた成果を評価するものです。日常業務成果の例としては、以下のようなものが考えられます。
- 新しいお客様(3社)と信頼関係を築く
- 心理的安全性が高いチームをつくる など
上記の目標や成果は、企業の業績に直結するものではありません。また信頼関係などの場合、相手次第の側面もありますから、構築までにかなりの長い時間がかかる可能性があるでしょう。
それでも日常業務成果が大切な理由は、自社が抱える本質的な課題の解決や中長期的な成長を促すためには、評価期間を定めない日常的な仕事が不可欠だからとなります。
成果評価の導入前に整備すべきこと
成果評価を導入する際には、まず以下2つの取り組みを通して新制度の失敗を防ぐ土台をつくることが大切です。各ポイントを見ていきましょう。
- 企業理念を明確にしたうえで、社内に浸透させる
- 職務の分担や受け持ち範囲を明確にする
企業理念を明確にしたうえで、社内に浸透させる
企業理念の定義は諸説ありますが、多くの会社で設定しているのは「組織の外に向けた自社の価値」のようなものです。一般的な企業理念は、以下のうち複数要素を含んだものになることが多いでしょう。
- 【mission】自社の使命
- 【purpose】自社の存在意義・目的
- 【vision】自社が目指すゴール
- 【value】自社が大事にする価値観
- 【way】自社が大事にする流儀
企業理念の明確化と社内への浸透が求められる理由は、この概念が「成果を出すために重視すべきこと」や「成果を出すうえでのルール」につながってくるからです。
たとえば営業の仕事で「売上1,000万円を目指す」という目標を設定したと仮定します。そこで自社に「地域のお客様の悩みに耳を傾け、信頼関係のなかで最高の提案をする」という企業理念があれば、売上1,000万円を目指すまでにやるべき行動も自ずと決まってくるはずです。
逆にいえば、上記のような企業理念がない場合、「数値目標さえ達成すればいい」などの考えから、各自が自分の好きな方法で営業活動をすることにもなりかねません。その場合、人によっては「お客様のニーズを無視して高額商品を提案する」などの失礼な対応をする可能性も出てくるでしょう。
こうした問題を防ぎ、自社の価値向上につながる事業を進めるためには、誰もが守るべき憲法のようなイメージで企業理念を明確化し、組織に浸透させることが大切です。
具体的な浸透方法などは、上記のvalueに近い概念である行動指針の記事で解説しています。ぜひチェックしてください。
行動指針とは?|ビジネスにおける重要性や作成・浸透のポイントを詳しく解説
職務の分担や受け持ち範囲を明確にする
たとえば営業部門がチーム全体で目標を達成し、メンバー全員で成長していくためには、売上などの成果に直結しない以下のような仕事も疎かにしない姿勢が大切です。
- トラブルに直面した仲間へのフォロー
- 来年の展示販売会に向けた準備や調整
- 新人・若手が営業力を高めるためのトレーニング実施
- 新製品パンフレットの発注と整理 など
こうした仕事を割り振り各自が責任を持って実施することで、組織全体の成長が促されやすくなります。またたとえば「新人のOJT担当」や「展示販売会のリーダー」といったボリュームが大きい役割を担ってもらう場合は、その仕事の成果や貢献度を含めた総合的な人事評価をする必要があるでしょう。
適切な成果評価を行うためのポイント
成果評価の効果性を高めるうえでは、導入・運用時に以下のポイントを大切にする必要があります。詳しく見ていきましょう。
- 自社(自部門)に合う評価制度を構築する
- 評価基準を統一する
- 過程(プロセス)も評価基準に加える
- 評価者・被評価者に教育を行う
- 評価後にフィードバックを行う
- 成果評価と昇進・昇級は切り離して考える
自社(自部門)に合う評価制度を構築する
人事評価制度は、各部署や職種に合う手法や基準を導入・設計すべきものです。そのため、成果評価に重きを置く制度の構築を目指す場合、まずは「この職種の評価に、成果評価の導入は本当に適切であるのか?」を考える必要があります。
仮に成果中心では適切な評価が難しい場合は、以下のような他の手法や基準と組み合わせることも一つでしょう。
- コンピテンシー評価
- 360度評価
- バリュー評価
- MBO
- OKR
各職種や部門に最適な評価方法を模索中の方は、以下の記事もチェックしてください。
人事評価の項目設計|効果的な人事評価にするための4要素や項目サンプル・テンプレートも紹介
成果基準を統一する
以下のような上司個人の主観による漠然とした評価を防ぐためには、成果基準を統一することが大切です。
- Aさんは頑張ってたくさんの売上をあげた。今期の評価はアップしよう。
- Bさんは毎日残業している。今期は最も頑張ったのではないだろうか。
- Cさんはポテンシャルが高そうだ。今後の期待値込みで評価も高めにしてあげよう。
成果評価の基準設定では、「数値目標の達成率が100%で評価5、80%なら評価4……」のように、誰が見てもわかりやすく不公平感がないものにすることが重要となります。また、数値目標は、先程も紹介したSMARTのフレームワークなどを使い、具体的で達成可能なものを設定することも大切でしょう。
- Specific(具体的である)
- Measurable(計測可能である)
- Achievable(達成できる)
- Related(上位目標との関連性がある)
- Time‐bound(期限が設定されている)
過程(プロセス)も評価基準に加える
成果評価を従業員個人や会社の中長期的な成長につなげるためには、売上や販売個数などのわかりやすい業績に加えて、その業績をあげるうえでの過程も評価する基準が大切です。
たとえば、企業理念で示されている「お客様の話に耳を傾け、まずは信頼関係を構築する」といったバリューや行動指針も、過程の評価基準に加えられる要素の一つになります。
成果と過程の両方を評価できるようにすると、お客様との信頼関係の構築や、新たなチャレンジといった成果に直結しない仕事にも取り組んでもらいやすくなるでしょう。
評価者・被評価者に教育を行う
新しい人事評価の仕組みを導入する際には、全従業員にその目的やメリット、人材育成(自己成長)への活かし方などを理解してもらう必要があります。そのためには、評価者である管理職と、被評価者の一般社員の両方への研修実施が必要でしょう。
評価者研修では、成果評価を行ううえでの心構えや評価のポイント、フィードバックの役割とやり方などをレクチャーしていきます。研修で解説したテクニックなどを身につけてもらうために、面談ロープレなどのアクティブラーニングを実施してもよいでしょう。
被評価者研修では、成果評価の導入で変わることや評価シートの記入方法、評価面談の受け方などを伝えます。また新制度で高評価を得るためのポイントや、報酬・等級との連動性なども解説するのがおすすめです。
なお新しい人事評価制度を導入すると、従業員に不安や違和感、反発などが生じることもあります。評価者・被評価者への研修では、新制度の内容に納得してもらうことも大切です。
評価後にフィードバックを行う
人事評価制度は、従業員を一方的に評価して終わりではありません。評価内容を人材育成につなげるためには、良かった点や改善点をフィードバックしたうえで、次につながる新たな目標を設定してもらうことが大切になります。
仮に成果が思わしくない従業員がいた場合、フィードフォワードの考え方でコミュニケーションを図るのも一つです。フィードフォワードとは、未来の成長や目標達成に着目した意見交換や助言をする手法になります。フィードフォワードでは、否定的な批判をしないことも大切でしょう。
成果評価と昇進・昇給は直結させない
成果評価と等級・報酬は、直結させないのが理想です。その理由は、売上や販売個数などの業績は、市場や社会環境などの影響を受けやすいからとなります。
たとえばコロナショックなどの著しい外的環境の変化が生じた場合、各メンバーがいくら努力しても全く売上が伸びない状況になることもあるでしょう。こうしたなかで成果評価と等級・報酬制度が完全連動していると、売上の著しい減少にともない従業員の役職や基本給なども下げざるを得なくなります。
報酬を従業員の外発的動機づけとして利用したい場合は、ボーナスなどの一時的に多くのお金を支給できる仕組みを利用するのも一つでしょう。
成果評価について解説しました
成果評価は、年功序列制度では高評価されづらい優秀な若手のモチベーションを高めるうえでも活用しやすいものです。ただし、個人と組織の中長期的な成長につながる運用をするためには、企業理念の明確化と浸透や、過程を重視する基準の設定といった細かな準備を進める必要があります。
また成果評価の導入で人材育成の効果を高めるうえでは、記事で紹介した3項目(業績目標達成度・課題目標達成度・日常業務成果)を基準に盛り込むことも大切でしょう。