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ファントムストックとは何か?企業事例も合わせて徹底解説します!

ファントムストックとは何か?企業事例も合わせて徹底解説します!

スタートアップのための戦略的なバックオフィス体制構築とは

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社員のモチベーションアップや優秀な人材を確保するための施策として、自社の株式を活用した報酬制度を導入している企業は珍しくありません。ファントムストックは株式を活用した報酬制度の1つであり、日本企業の中ではまだまだ認知度の低い活用法です。

本記事ではファントムストックの概要やメリット・デメリットを徹底解説します。実際にファントムストックを採用している企業も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

ファントムストックとは仮想株式を社員に付与する制度

ファントムストックとは株式や株式の購入権利を活用するのではなく、企業が設定した仮想株式を与え、株価を基にした業績連動型報酬を現金で支払う制度です。従業員給与としてはもちろん、役員のインセンティブ報酬として導入している企業が増えつつあります。

企業の業績によって報酬金額が変わる性質を持っているため、役員や社員のモチベーションアップにつながります。さらにうまく活用すれば高額な報酬を獲得できるので、優秀な人材を確保する施策としても効果を期待できるでしょう。

ストックオプションとの違い

ストックオプションは企業が社員や役員に対して、一定の価格で会社の株式を購入する権利を与える制度です。

ファントムストックと同様、社員のモチベーションアップや優秀な人材を確保する目的の施策として導入される傾向が強いです。しかし実際の株式に関与する権利を与えるため、株式構成が変化してしまうリスクを有しています。

<関連記事>IPOを目指す企業必見! ストックオプション徹底解説と法務戦略の重要性

ファントムストックを導入する3つのメリット

ファントムストックを導入するかどうかを決めるには、企業と社員の両方の立場で得られるメリットを把握する必要があります。ここではファントムストックを導入するメリットを3つ解説します。

株式に影響を及ぼさない

ファントムストックは企業が設定した仮想株式を付与する制度であり、実際の株式に変化をもたらすことはありません。ストックオプションとは違い、発行株式数が変動することがないので、資本政策などでバランスを整えた持ち株比率を維持しやすいメリットがあります。

株主構成の予期せぬ変動は経営に悪影響を及ぼす原因になりかねないため、経営バランスに影響することのない報酬制度だといえるでしょう。

社員のモチベーションが高くなる

ファントムストックは企業の業績によって報酬金額が変わる性質を持っています。そのため、ファントムストックは役員や社員の業務に対するモチベーションアップ施策として最適です。

自分の頑張りが報酬に直結しているシステムを導入していることは、モチベーションアップだけでなく高スペックな人材を集めやすくなる効果も持っているので、企業の成長を助けてくれる報酬制度だといえるでしょう。

付与時点でのキャッシュフローへの影響が少ない

ファントムストックは付与時点での経費計上が必要ないので、資金を流失することがなく、キャッシュフローの影響が少ない利点もあります。

逆に似たような性質をもつストックオプションは、実際の株価を考慮した経費計上が必要なため、付与時点で経費計上をしなければなりません。

ファントムストックを導入する4つのデメリット

実際の株式に影響を及ぼさない報酬制度が魅力のファントムストックですが、いくつか注意しなければならないデメリットも存在します。ここではファントムストックを導入するデメリットを4つ解説します。

株価に報酬が影響される

ファントムストックで得られる報酬額は、株価に大きく左右されます。そのため、付与した時点での得られる報酬額は不確定であり、株価の動き方によっては想定していた報酬額よりも下回ってしまう場合も少なくありません。

得られる報酬額が減ってしまうと役員や社員のモチベーションが下がってしまうことにつながりかねないので、モチベーションアップの目的が果たせなくなってしまうでしょう。

キャッシュアウト費用が必要になる

ファントムストックが付与した社員や役員に報酬を渡す際に、多額の現金を支払うことも珍しくありません。さらにファントムストックを通して支払う報酬額は、株価によって大きく変わるため、事前に見積もりが立てにくい傾向が強いです。

余裕を持った報酬額の見積もり計画を立てていないと、金額によってはキャッシュアウト時の対応が難しくなってしまうでしょう。

導入している事例が少ない

アメリカでは一般的な報酬制度として多くの企業に採用されているファントムストックですが、日本では採用している企業が少ない傾向にあります。導入事例が少ないがゆえに日本での認知度も低く、優秀な人材を呼び込む施策としての効果がうまく発揮できない可能性があります。

経理上の処理が不明瞭

日本でファントムストックを導入している企業があまりないこともあり、経理上の処理が不明瞭である点も無視できないデメリットとして挙げられます。そのため、自社の人材のみでは対応することが難しい場合も珍しくありません。

適切な会計処理を実施するには外部の専門家に相談する必要があるので、通常の会計処理よりも手間がかかってしまうでしょう。

ファントムストックを導入する注意点

ファントムストックは日本では認知度が低い報酬制度であるため、ただ導入するだけでなく、うまく活用できるようなサポートが必要です。ここではファントムストックを導入する際に気を配りたい、注意点を3つ紹介します。

社員に仕組みを理解してもらう

ファントムストックを社内で上手く活用するには、報酬を受け取る当事者である社員に仕組みを理解してもらうことが大切です。仕組みがわからない状態で制度を導入しても、自分たちへのメリットを感じられないため、モチベーションアップを図ることが難しいでしょう。

社員にファントムストックの仕組みを説明する際には、特に以下の点を強調して説明することをおすすめします。

  • 実際の株式は付与されない
  • 株価によって支払報酬が左右される

権利確定条件を明確にする

ファントムストックの権利確定条件とは、仮想の株式をもとにした報酬を受け取るために必要な条件を指します。条件の設定は在籍期間や業務目標達成時など企業によってさまざまであり、事業拡大や人材の流失に対する防止策として機能させたい等の企業の課題に合わせて設定すると良いでしょう。

権利確定条件を明確にしていないと、社員や役員が活用するイメージを明確につかみにくいため、スムーズな導入が難しくなってしまうでしょう。

キャッシュアウト対策を講じる

ファントムストックの運用で難しい点として、キャッシュアウト時の動きに不明瞭な点が多いことが挙げられます。経理上の処理やキャッシュアウトの費用の見積もりなど、対策が不十分であると経営側に大きなデメリットを与えてしまう事態に陥るでしょう。

ファントムストックの報酬金額に上限を設定する、事前に処理方法を専門家に相談し作業フローを組んでおくなど、キャッシュアウト対策を講じておくことで不測の事態を防止できます。

ファントムストックの会計処理

ファントムストックを上手く活用する鍵は、事前に会計処理の流れを把握することにあります。ここではファントムストックの会計処理方法を、3つのステップに分けて解説します。会計処理が不適切だと会社の信用問題に発展しかねないため、導入を検討している企業はチェックしてみてはいかがでしょうか。

1.権利を付与した時

ストックオプションなどの報酬制度とは違い、実際の株式に影響を与えることがないため、特に会計処理を実施する必要はありません。

2.勤務対象期間の各期末

ファントムストックの権利確定条件を在籍期間に設定している場合、設定している期間の期末に計上することが求められます。ファントムストックの付与対象が役員の場合は、以下のように計上すると良いでしょう。

  • 借方:役員報酬
  • 貸方:引当金

3.現金支払時

ファントムストックの権利を行使し、報酬として現金を支払う際にも費用計上が必要です。会社が報酬を現金で支払う場合は、以下のように計上すると良いでしょう。

  • 借方:役員報酬、引当金
  • 貸方:現金預金

退職給付会計基準の適用可能性

ファントムストックが長期的な報酬制度として退職金の一部として設計されている場合、退職給付債務として処理される場合があります。具体的には、勤務期間に応じて報酬額を按分して計上することが求められるケースもあります。

ファントムストックの税務処理

ファントムストックを適切に運用するには、会計処理だけでなく税務処理にも対応しなければなりません。ここではファントムストックの税務処理方法を、2つのステップに分けて解説します。誤った税務処理を実施してしまうと、国税局からペナルティを課せられてしまうので注意して処理に対応しましょう。

権利を付与した時

ファントムストックの権利を付与した時には、特に税金が発生することがないため、税務処理をする必要はありません。ただし、税務上の観点から将来の支払いに備えた引当金の処理が適切かどうか確認が必要です。

権利確定(株式売却)時

ファントムストックの権利が確定し会社から現金が支払われた際には、所得課税が発生します。支払われた社員や役員は、報酬金額に対して所得税の納付が必要になります。

ファントムストックを導入している企業事例

実際に導入している企業を参考にすることは、ファントムストックを運用するイメージを明確にする効果が期待できます。ここでは、ファントムストックを導入している企業事例を3つ紹介します。付与対象や導入目的も紹介しているので、効果的な条件を設定したい経営者は参考にしてみてはいかがでしょうか。

三菱地所

三菱地所株式会社は東京都千代田区大手町に本社を置く、オフィスビル・商業施設・ホテル・物流施設等の開発や不動産の仲介・コンサルティングなど不動産関係の事業を展開している、日本で屈指の規模を誇る総合不動産デベロッパーです。

三菱地所では執行役、執行役員およびグループ執行役員を対象にファントムストックを実施しています。企業価値の向上を図るインセンティブを与えて、中核となる人材の目的意識を強化するだけでなく、株主と価値観を共有する効果を期待して導入した経緯があります。

クレディセゾン

株式会社クレディセゾンは東京都豊島区東池袋に本社を置く、ペイメント・リース・ファイナンスなど金融事業を手広く実施している企業です。

クレディセゾンでは全社員を対象にファントムストックを実施しています。業績に貢献した社員の努力に対して適切な還元をすることで、企業価値や経営参画に対する意識を向上させる効果を期待して導入した経緯があります。

アイザック

株式会社アイザックは富山県魚津市に本社を置く、環境事業とパッケージ事業の2つの事業を展開している企業です。

アイザックでは全社員を対象にファントムストックを実施しています。会社の業績向上による利益が社員に還元される仕組みを採用することで、社員の挑戦を後押しする風土を構築したいという目的があり、導入を決断した経緯があります。

ファントムストックと違い実際の株式を利用して社員に報酬を与える方法3選

ファントムストック以外にも、社員のモチベーションアップにつながる報酬制度は多くあります。ここではモチベーションアップ効果が期待できる、実際の株式を利用する報酬制度を3つ紹介します。ファントムストックが自社の経営状態にあまりマッチしていないと感じている経営者は、以下の報酬制度も視野に入れてみると良いでしょう。

新株予約権

新株予約権は将来的に企業が発行する株式を一定の条件で購入する権利です。株式を直接購入するよりも低価格で購入できるので初期費用を軽減できる強みがあり、付与対象に社員も含めることで、業務のモチベーションアップへのきっかけにすることも可能です。

従業員持株会

従業員持株会は社員が自社の株式を積立で購入できる制度です。会社の株式を購入する際に、福利厚生の一環として企業が奨励金を支給もしくは特別な税制優遇を実施してくれるので、社員が株を購入しやすくなる効果があります。社員は株を保有していると、会社成長への貢献意識が高まるきっかけにもなるため、モチベーションアップにつながるでしょう。

譲渡制限付株式

譲渡制限付株式は給与の一部として株式を無償で支給する制度です。株式を無償または割安で受け取れる代わりに、一定期間または条件が満たされるまで譲渡や売却が制限されるため、人材を定着させる効果が期待できます。さらに株式付与の条件に業績目標を含めることで、社員の業務意識を高められる施策としても機能させることが可能でしょう。

<関連記事>譲渡制限付株式報酬とはどんな制度?メリットや導入手順を解説

【まとめ】ファントムストックを導入して組織をより活性化させよう!

本記事ではファントムストックの概要やメリット・デメリットを解説しました。給与やボーナス以外の報酬制度を導入することは、社員のモチベーションアップにつながります。

ファントムストックは実際の株式に影響しない特有の強みを持っている報酬制度であるため、ストックオプションなど株式を活用する報酬制度が経営にマッチしなかった企業でも、導入しやすい報酬制度だといえるでしょう。しかし、経費計上のルールが明確になっていないなど運用の難しい要素が複数あるので、導入前に外部の専門家に相談してみることをおすすめします。



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Startup JAM編集部
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