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経営企画部の役割とは?主な業務内容や求められるスキル・経験なども解説

経営企画部の役割とは?主な業務内容や求められるスキル・経験なども解説

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経営企画部が担う役割は、近年のように複雑化するビジネス環境のなかでその重要性が特に高まるようになりました。こうしたなかで経営企画部の組織力を高めるためには、幅広い業務に携われるだけのスキルを持った人材が必要です。

今回は、経営企画部の主な役割や仕事内容などを確認したうえで、経営企画部の人材に求められるスキルや資格などを紹介します。経営企画部の立ち上げや組織力の向上を目指す方は、ぜひ参考にしてください。

目次

経営企画部の役割とは

経営企画部とは、経営トップの参謀として意思決定をサポートする部門です。ここでは、以下のポイントを確認しながら、経営企画部の一般的な役割やこの部門の概要を見ていきましょう。

  • 経営企画部の主な役割と企業規模の関係性
  • 経営企画部長の役割
  • 経営企画部の役割における2つの種類
  • その他経営企画の機能を担う部門
  • 経営企画と事業企画における役割の違い

経営企画部の主な役割と企業規模の関係性

経営企画部の主要な役割は、経営陣の意向を汲み取りながら自社の中長期的な経営方針を決定し、目標達成までの計画立案や実行の旗振りをすることなどです。

ただし、経営企画部における役割や仕事の範囲は、企業規模の影響を受けやすい特徴があります。

たとえば小規模な企業では、経営層と現場の距離が近いことから、そもそも経営企画をする部門が設置されないことも多いです。この場合、経営層が自ら中長期的な経営方針の立案などを行うケースが一般的でしょう。

一方で中規模・大規模の企業になると、目標達成に向けてマネジメントするリソースの量やステークホルダーとのコミュニケーションもかなり増えることになります。また、たとえば従業員が数百人や数千人などの規模になれば、経営層と現場の距離も遠くなる可能性が高いです。

こうしたなかで、経営層と現場の間に入り、各種調整や計画立案、意思決定の支援などを担うのが、経営企画部であることが多いと考えて良いでしょう。

なお株式会社日本総合研究所 総合研究部門 経営企画機能研究チームによる調査「経営企画部門の実態」では、経営企画機能を一部署に集約している企業の割合は、調査対象のなかで全体の6割であることがわかっています。

参考:経営企画部門の実態(株式会社日本総合研究所 総合研究部門 経営企画機能研究チーム)

経営企画部長の役割

経営企画部は、会社の舵取り役ともいえる部門です。そのなかで経営企画部長は、部門内で進んでいるプロジェクトや業務の全動向を把握し、自部門のみならず会社全体がうまく回るように導くリーダー・マネージャー的な役割を担うことになります。

経営企画部の役割における2つの種類

経営企画部の役割や仕事は、多くの場合、以下の2種類に分けられます。

  • 【Running業務(定型業務)】:年次計画の策定と管理・経営会議資料の作成・会議の運営・投資家とのコミュニケーション など
  • 【Project業務(非定型業務)】:新規事業の企画・M&Aの手続き・経営トップのブレーン など

その他経営企画の機能を担う部門

株式会社日本総合研究所 総合研究部門 経営企画機能研究チームによる調査「経営企画部門の実態」によると、経営企画機能を担う部門には以下のようにさまざまな呼称があることがわかっています。

  • 経営企画
  • 企画
  • 経営管理
  • 経営戦略
  • 総合企画

参考:経営企画部門の実態(株式会社日本総合研究所 総合研究部門 経営企画機能研究チーム)

経営企画と事業企画における役割の違い

経営企画と似た言葉に「事業企画」があります。

事業企画はその名のとおり、「1つの事業」に対して目標や事業の方向性などを考えることです。一方で経営企画は、「会社全体」における将来のビジョンや方針に関わる役割を担います。

各事業の方向性は、基本的に会社全体のベクトルと連動するものですから、「経営企画」から降りてきた内容をもとに「事業企画」が立案されるイメージになるでしょう。

経営企画部の重要性が高まる理由と背景

近年のビジネス環境では、経営企画部の重要性が特に増すようになりました。

株式会社日本総合研究所 総合研究部門 経営企画機能研究チームによる調査「経営企画部門の実態」では、今後5年間で経営企画部門の役割の重要性が増すと回答した企業が、76.1%にも及んだことがわかっています。

また、この調査では、今後の5年間で重要性が増すと考えられるものとして、以下のテーマを挙げる企業が多かったようです。

  • 中期経営計画の策定
  • ビジョン・事業領域の設定・再設定
  • M&A戦略・提携戦略推進
  • 新規事業推進
  • 中期経営計画の進捗管理
  • 将来を担う経営人材の育成
  • 組織構造の見直し・拠点再編

参考:経営企画部門の実態(株式会社日本総合研究所 総合研究部門 経営企画機能研究チーム)

こうしたテーマをあげる企業が多い要因の一つとして考えられるのが、近年のビジネス環境がVUCA時代に入っていることです。VUCAとは、コロナショックやウクライナ侵攻のような予測不能な出来事や急速な変化が起こりやすい時代を指す概念になります。

このような状況下では、「今までこうだったから、このやり方で良いだろう」といった過去の成功体験や経験則があまり通用しません。また中長期的な戦略を考えても、外的環境の著しい変化からビジネスの方向性を変えざるを得ないこともあるでしょう。

こうしたなかで経営企画部は、中期経営計画やビジョンなどを考え事業を推進する役割から、その重要性が高まっていると考えられます。

また最近は、終身雇用の崩壊や転職の一般化、少子高齢化社会の加速などの影響から、企業の人・組織に関する課題も起こりやすいです。この状況で人事部門が効果的な採用活動や人材育成を進めていくうえでも、その指針となる経営戦略を立案する経営企画部の役割は大きくなっているでしょう。

経営企画部の基本的な業務内容

経営企画部が担う仕事は多岐に渡ります。ここでは株式会社日本総合研究所の調査「経営企画部門の実態」のなかで、過半数の経営企画部門から「何らかの形で関与」しているとの回答があった業務を簡単に紹介しましょう。

参考:経営企画部門の実態(株式会社日本総合研究所 総合研究部門 経営企画機能研究チーム)

  • 中期経営計画の策定と進捗管理
  • ビジョン・事業領域の設定・再設定
  • 経営トップ直轄の特命プロジェクト推進
  • 単年度予算の編成と進捗管理
  • 新規事業推進
  • M&A戦略・提携戦略推進
  • グループ会社の管理
  • 資本政策・配当政策見直し、IR推進・強化
  • 中期の要員計画と組織構造の見直し・拠点再編
  • 組織風土・文化の改善・改革
  • 取締役会等の会議体事務局
  • コーポレートガバナンスコード対応
  • 海外展開推進
  • コンプライアンス推進
  • CSR・環境経営推進

中期経営計画の策定と進捗管理

中期経営計画の策定と進捗管理は、先述の調査で1位と3位になった重要項目です。

中期経営計画とは、3〜5年の中期で自社の経営方針や数値目標などを定め、株式会社・取引先・従業員などのステークホルダーに示すための計画書のことになります。中期経営計画の作成・公開後は、計画どおりに実施できているかを定期的に確認・見直しする作業も必要です。

ビジョン・事業領域の設定・再設定

ビジョンとは、企業が実現する未来や世界観を指す概念です。いわゆる理想像や未来像といっても良いでしょう。外的環境の変化が著しいVUCA時代にビジネスを進めるうえでは、「どの領域でそのような世界や未来を作り出したいか?」などのベクトルを明確にすることの重要性が高まっています。

経営トップ直轄の特命プロジェクト推進

企業が取り組む事業は、基本は先述の中期経営計画などにもとづき進められるものです。ただし、たとえばコロナ禍のように急速な変化が生じたときには、既存事業の先行き不透明な問題を解決する目的などから、経営陣からの直接的な指示で新規事業などが立ち上がることがあります。

特命プロジェクトの定義は、企業ごとに異なるものです。ただ多くの場合、自社にとって重要な事業になってくるでしょう。

単年度予算の編成と進捗管理

単年度予算の編成とは、中期経営計画で立案した戦略などを単年度に展開し、より具体的な計画を立てることです。この業務では、現場が積み上げてきた数値とトップが掲げる目標のギャップを調整することが求められます。

また編成した予算に対して、中期経営計画と同様に定期的な進捗のチェックと差異がある場合の見直しが必要です。

新規事業推進

新規事業の立ち上げ〜軌道に乗せるまでのリーダーシップをとるのも、経営企画部の役割になることが多いです。近年は複雑化するビジネス環境のなかで、事業推進の難易度も上がっています。

こうしたなかで新規事業を成功させるためには、経営企画部の強力なリーダーシップや課題解決力などが必要となるでしょう。

M&A戦略・提携戦略推進

後継者問題の深刻化などの影響から、日本国内におけるM&A件数は増加傾向にあります。特に事業承継を目的とするM&Aは、2035年頃まで増加が続く見込みです。自社でM&A戦略に力をいれる場合、重要な役割を果たすでしょう

参考:事業承継M&A、潜在需要13兆円超 35年まで増加続く(日本経済新聞)

グループ会社の管理

いわゆる子会社管理と呼ばれるものです。親会社の経営企画部が子会社の経営を適切に管理することで、グループ全体の健全性や業務の効率化を確保する仕事の総称になります。具体的には、内部統制や財務・法務などの間接業務が中心となるでしょう。

資本政策・配当政策見直し、IR推進・強化

資本政策とは、以下のような手法により資金調達や資本構成の最適化、事業継承対策などの目的を実現することです。配当政策は、企業が配当を株主に還元していくための方針になります。

  • 株主移動
  • 第三者割当増資
  • 組織再編 など

また自社に資金を提供してくれる株主・投資家に対しては、投資判断につながる自社の情報を自主的かつ公平に提供することも必要です。IRとは、この提供活動の総称であり日本語では「投資家向け広報」と訳されます。

中期の要員計画と組織構造の見直し・拠点再編

中期の経営戦略をゴールに向けて実行していくうえでは、人の獲得・育成や組織づくりの方向性を考え、採用活動などを行う人事部門につなげていくことも必要です。

特に近年は、人材を資本と捉える人的資本経営の重要性が高まっています。その一方で、終身雇用と年功序列制度の崩壊から、人事混迷の時代が始まったとも言われるようになりました。

こうしたなかで経営企画部が担う中期の人・組織の方向性を考える役割は、その重要性が増しているといえるでしょう。

組織風土・文化の改善・改革

最近では、以下のような人々の価値観や社会の変化などの影響から、自社の組織風土・文化を変えていくことへの必要性が増しています。

  • 終身雇用・年功序列制度の崩壊
  • 早期離職・転職の増加
  • ダイバーシティ・多様性の重視
  • 働く人の価値観の変化
  • 市場・産業の急速な変化 など

また、経営企画部が主導することもあるDX(デジタル・トランスフォーメーション)でも、組織変革が求められるケースも多いです。

取締役会等の会議体事務局

経営企画部では、経営層が集まって定期的に実施する経営会議や取締役会などの運営も担います。具体的な仕事は、以下のようなものになるでしょう。

  • 日程調整
  • 場所や弁当の手配
  • 資料作成
  • 議事録作成 など

最近では、オンラインとオフラインのハイブリッドで実施するケースも増えていることから、情報システム部門との連携も必要な場合があります。

コーポレートガバナンスコード対応

コーポレートガバナンスコードとは、上場企業が実施する企業統治において、参照すべき指針・原則を示したガイドラインの総称です。自社が上場している場合、以下の5原則にもとづく施策や仕組みづくりなどの対応や定期的な見直しなどが求められます。

  • 1.株主の権利・平等性の確保
  • 2.株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  • 3.適切な情報開示と透明性の確保
  • 4.取締役会等の責務
  • 5.株主との対話

参考:金融庁 コーポレートガバナンス・コード

以下の記事では、コーポレートガバナンスコードについて詳しく説明しています。ぜひ併せて確認してみてください。

<関連記事>コーポレートガバナンス・コード(CGコード)とは?2021年の改定ポイントも解説!

海外展開推進

近年では、市場や産業のグローバル化にともない、海外展開に力をいれる企業も多くなりました。仮に自社がこれから海外で事業を始める場合、以下のような仕事を担う必要も出てくるでしょう。

  • 現地での市場調査
  • 現地の取引先との交渉
  • 現地でのPR施策
  • 事業所開設の準備 など

コンプライアンス推進

コンプライアンス推進とは、自社が法令をはじめとする社会規範を遵守するために必要な取り組みです。また、コンプライアンス推進には、企業イメージの維持・向上につながる効果もあります。

近年では、インターネットやSNSの普及により、自社が法令を守らないことなどへの告発が増え、企業の不祥事が明るみに出ることが多くなりました。こうしたリスクを防ぐうえでも、コンプライアンス推進の重要性が高まっているといえるでしょう。

CSR・環境経営推進

CSRとは、会社が組織活動を行うなかで担う社会的責任を指す概念です。環境経営は、企業経営のあらゆる側面に「環境」の視点を取り入れ、地球に大きな負荷をかけない事業活動を目指し、日々の管理・改善を実施していくことになります。

近年では、企業の不祥事が相次ぎ競争も激しくなるなかで、会社が社会から信頼を得ることの重要性が特に増しているでしょう。

また世界の企業が生産活動を続けた結果として、地球温暖化による異常気象なども生じています。自社が環境保全とどのように対峙しているかを行動・報告を通して社会に示すことも大切になっているでしょう。

働く人による経営企画部のイメージと将来性

経営企画部は、先ほど紹介したVUCA時代や人事・組織課題が増加するなどの背景から、各企業における将来的な期待度が高い部門です。ただし、働く人によるこの部門へのイメージは、以下のように2極化しやすい傾向もあります。

  • 経営戦略などに携われる。将来に役立つ経験ができるし、やり甲斐もありそうだ。
  • 経営陣の近くで仕事をすることになる。大変な業務になりそうだ。

経営企画部が自部門の役割を継続的かつ安定的に担い続けるためには、部門内の課題を解決しながら、より良い組織運営をすることも大切です。また、経営企画部の組織を大きくする場合、自部門に合う人材を獲得し育てることも必要でしょう。

ここからは、経営企画部に大変そうなイメージがある理由や、適性のある人材の特徴などを詳しくみていきましょう。

経営企画部の仕事が大変と言われる理由

経営企画部の仕事に大変なイメージが強い背景には、この部門ならではともいえる以下の特徴があります。各理由を詳しくみていきましょう。

  • 経営陣と現場の板挟みになりやすい
  • 幅広く継続的な情報収集や勉強が求められる
  • ハードスケジュールな仕事が発生しやすい

経営陣と現場の板挟みになりやすい

経営企画部は、経営陣と現場の橋渡し的存在です。たとえば、経営企画部が社長の指示で新事業の立案を行ったと仮定します。そこで仮に入念な情報収集や調査・分析、現場からのヒアリングなどを怠った場合、以下のような突き上げに遭うかもしれません。

  • 社長は現場の実態をまったくわかっていない。現リソースでは実施できない。
  • 予算が足りなすぎる。再検討してほしい。 など

また上記の声を社長に伝えても、「難しくても実施してもらう」や「何とか説得してほしい」などの指示から、板挟みに状態に陥ることもあるでしょう。

幅広く継続的な情報収集や勉強が求められる

自社の成長につながる課題解決策や新規事業などを考え、実行していくうえでは、たくさんの情報収集や勉強が必要です。特に近年は、科学技術などの急速な変化が短期間で起こる時代でもあります。

こうしたなかで競合優位性の高い経営戦略を立案するためには、適切な情報を早くインプットするスピード感も求められるでしょう。

仕事が忙しく残業が発生しやすい

経営企画部の業務には、月次や年次などの定型業務と、いわゆるスポットともいえる非定型業務があります。

非定型の仕事は、たとえばコロナショックなどの外的要因や、経営層からの依頼によっていきなり発生することも多いです。また、近年はVUCA時代であることから、対応すべき課題が重なりスケジュールどおりに仕事を進めることが難しくなるケースも多いでしょう。

定型業務で忙しい時期に早期解決しなければならない問題が発生すれば、残業などでの対応が求められるかもしれません。

経営企画部の人材に求められるスキル・経験

経営企画部は、企業の中枢として幅広い業務を迅速に進める必要がある部門です。特に近年はVUCA時代のなかで、従来以上に質が高くスピーディーな仕事が求められるようになりました。

経営企画部で仕事を進めるうえでは、以下のスキルや経験が必要となります。各能力のポイントを見ていきましょう。

  • コミュニケーション力
  • 人間力
  • リーダーシップ力
  • プロジェクトマネジメント力
  • セルフマネジメント力・セルフリーダーシップ力
  • 情報収集・分析力
  • 洞察力
  • 課題解決力
  • 論理的思考力(ロジカルシンキング)
  • 概念化能力(コンセプチュアルスキル)

コミュニケーション力

経営企画部の役割を担ううえで特に重要となるのが、経営陣・現場担当者・投資家などの話に耳を傾け、自分の考えや立案した戦略・計画などをわかりやすく伝えるコミュニケーション力です。

コミュニケーションというと「聞く(聴く)」「伝える(発信する)」のイメージが強いと思います。しかし、経営企画部が仕事を進めるなかでは、経営陣や関連部署と良好な関係を構築するための話し方・聴き方なども求められるでしょう。

また、自分が考えた戦略などをわかりやすく伝え、相手の意思決定や行動につなげるうえでは、プレゼンテーションの能力も向上させる必要があります。

人間力

経営企画部の仕事では、「提案内容を理解・共感してもらい、周囲を巻き込むこと」が求められるケースが多いです。また、経営陣や現場が抱える悩みや実情を「自分だけに打ち明けてもらうこと」が必要なシーンも多くあるかもしれません。

これらを実現するうえで重要となるのが、高い人間性です。平易な表現を使えば、誠実な人柄といえるかもしれません。

人として信頼・尊敬される状態であるからこそ、経営陣の参謀として企業の中枢で働けることになります。また、現場の担当者から率直な意見を引き出したり、新事業に協力してもらったりするうえでも、高い人間性が必要でしょう。

リーダーシップ力

リーダーシップ力とは、目的・目標を設定しメンバーをゴールに向けて先導する能力です。

近年は、プロジェクトを進めるなかでコロナショックなどの外的環境の変化や大きな問題が起こりやすい時代になります。こうしたなかで課題を解決しながら目標達成をするためには、メンバーを鼓舞しながら周囲を牽引するリーダーシップの能力が特に大切になるでしょう。

マネジメント力

マネジメント力は、目標達成に必要なリソース(資源)を管理・運用する能力です。ここでいう資源は、ヒト・モノ・カネ・情報・時間などが中心になるでしょう。

たとえば、経営企画部門が新規事業を主導する場合、先述のリーダーシップ力とマネジメント力を両輪で回すイメージになります。

セルフマネジメント力・セルフリーダーシップ力

経営企画部の業務は、先述のとおり外的環境の変化や経営陣からの突発的な依頼などによって、ハードになることが多いです。

こうしたなかで、設定したスケジュール内で高品質の仕事を続けるうえでは、自分自身をゴールに導くためのセルフリーダーシップ力やいわゆる自己管理力(セルフマネジメント力)が必要となります。

また、ハードな状況で仕事をするなかで不可欠とされるメンタルタフネスも、どちらかといえば自己理解によるストレスなどへの適切な対処やセルフコントロールの要素が強いでしょう。

情報収集・分析力

経営戦略などを立案するためには、社内外から多くの情報を収集し、自社に必要なものを抽出・活用する能力も必要です。また、効果的なデータ分析を行ううえでは、以下のようなビジネスフレームワークの理解・活用も求められるでしょう。

  • STP分析
  • SWOT分析
  • 5F分析
  • ロジックツリー
  • OKR
  • OODA
  • 6W2H など

以下の記事ではフレームワークについて詳しく紹介しています。ぜひ併せて確認してみてください。

<関連記事>競合分析の手順は?フレームワークや気をつけるべきポイントを紹介!

洞察力

洞察力とは、「見えない部分を見抜く力」や「物事や課題の本質を見抜く力」です。仮に何らかのビジネスを進める場合、自分たちの見えないところに本質的な問題や潜在的なニーズが潜んでいることがあります。

また近年は、過去の成功例や実績にもとづく戦略が通用しないVUCA時代でもあります。こうしたなかで経営戦略などを立案するうえでは、自分の知らない領域に関心を持つ姿勢なども必要でしょう。

課題解決力

経営企画部が立案した戦略や計画どおりにプロジェクトなどを進めるためには、途中で発生する課題を主体的かつ迅速に解決することも大切です。課題とは、ゴールと現状の間に生じるギャップのことになります。

最近は、たとえばコロナショック・ウクライナ侵攻・コストの高騰のような外的環境の著しい変化が重なることで、企業の課題も複雑化しやすくなっています。こうしたなかで、ゴール到達への確実性を高めるうえでは、課題をいち早く察知し試行錯誤しながら解決する力が求められるでしょう。

論理的思考力(ロジカルシンキング)

論理的思考力とは、自社の現状・課題・与えられた情報などをフレームワークなどにと仕込み、要素分解や因果関係の整理などを行いながら、ゴールへの道筋を導き出す考え方です。

たとえば経営陣に新たな戦略を提案する場合、「自分はなんとなく戦略Aが好き」などの情緒的・感情的な話だけでは、相手がその内容への理解・納得・共感に至る可能性は低いでしょう。

一方で自社や市場の現状をフレームワークに落とし込み、「BとCの理由から、戦略Aが最善と考えます」と提案すれば、円滑で建設的なコミュニケーションが進みやすくなるはずです。

また論理的思考力は、力強いビジョンでメンバーをゴールに導くリーダーシップを発揮するうえでも、不可欠なスキルになります。

概念化能力(コンセプチュアルスキル)

概念化能力とは、「多くの情報・知識から、複雑な事象を概念化する力」や「形がないものを扱う力」などを指す能力です。

たとえば、複雑化する時代のなかで、従来の概念にとらわれない画期的なサービスやビジネスモデルを構築したり、これまで経営陣も気づかなかったポイントに課題解決策を見出したりするうえでも、概念化能力が必要となります。

ちなみに概念化能力は、先述のロジカルシンキングなどを含めたかなり多くの要素からなるスキルです。たとえば、従来の概念にとらわれない戦略立案をするためには、前提を疑い自分の思考の偏りを見つける批判的思考(クリティカルシンキング)が求められます。

また、新事業を始める際には、経営者寄りの視点だけでなく現場の意見などにもフォーカスする多面的視野や受容性なども必要になってくるでしょう。

こうした考え方から、概念化能力を高めるうえでは、以下のような姿勢・スキルをバランス良く身につけることが大切です。

  • ロジカルシンキング
  • ラテラルシンキング
  • クリティカルシンキング
  • 多面的視野
  • 受容性
  • 柔軟性
  • 知的好奇心
  • 探究心
  • チャレンジ精神
  • 俯瞰力 など

なお、概念化能力は、経営層などの高い職位で仕事をする人に不可欠な能力です。経営企画部の場合、経営層の考えを汲み取ったり一緒にビジネスモデルを考えたりすることが日常になります。そういう意味でも概念化能力が特に大切になるでしょう。

経営企画部で働くうえで役立つ資格

経営企画の仕事は、資格なしでもできることが多いです。ただし、自分の仕事内容に合った専門資格を取得しておくと、レベルの高い戦略策定や経営陣とのコミュニケーションが効果的に行えるかもしれません。ここでは、経営企画部の業務に役立つとされる9つの資格を簡単に紹介しましょう。

  • FP&A(経営企画スキル検定)
  • 日商簿記検定試験
  • 情報処理技能検定
  • TOEIC
  • 中小企業診断士
  • USCPA(米国公認会計士)
  • MBA(経営学修士)
  • 公認会計士
  • 税理士

FP&A(経営企画スキル検定)

FP&Aは、海外の先進企業においてCFOの傘下で確立されている部門のことです。

主な業務は日本の経営企画部とよく似ており、この検定の公式サイトには「分析、予測、計画の策定、業績報告といった業務を通じて、経営や事業の意思決定プロセスに貢献する」と書かれています。

最初は基本コースとなるスタンダードCFOから受験してみるとよいでしょう。

参考:FP&A(経営企画スキル検定)公式サイト

日商簿記検定試験

企業における経営成績と財務状況を調査・分析するうえでは、簿記の技能を理解・保有しておくと便利です。日商簿記検定試験は、数ある簿記検定のなかで最もよく知られるものとなります。

従来は3級・2級・1級とステップアップするのが一般的でしたが、2017年から初学者向けの簿記初級というカテゴリも受験できるようになりました。

参考:簿記|商工会議所の検定試験

情報処理技能検定

情報処理技能検定は、文部科学省が後援する試験です。日本情報処理検定協会が主催するものとあわせると、以下の10カテゴリが用意されています。

  • 日本語ワープロ検定
  • 情報処理技能検定 表計算
  • 情報処理技能検定 データベース
  • 文書デザイン 検定
  • ホームページ 作成検定
  • プレゼンテーション 作成検定
  • 文書入力スピード 認定(日本語・英語)
  • プログラミング技能 検定
  • 情報デザイン 検定(Webページ)

経営企画部の仕事では、情報の収集・分析や資料作成といったさまざまなシーンでコンピュータを使うことになります。仮に上記のなかに苦手な分野がある場合、実務で使う前に技能検定を受験しておくのも一つでしょう。

参考:各種試験のご案内|日本情報処理開発協会

TOEIC®

海外展開の戦略立案や、海外拠点のスタッフなどとコミュニケーションを図るうえでは、TOEIC®などの資格取得を通じて語学力を高めておくことも大切です。

TOEFLが国際的に広く認められている資格であるのに対して、TOEIC®はリスニングとリーディングに絞られていることから受験しやすいものになります。TOEIC®スコアが700〜800点以上あると、英語力を仕事に活かしやすくなるでしょう。

参考:TOEIC(一般社団法人国際ビジネスコミュニケーション協会)

中小企業診断士

中小企業診断士とは、中小企業の経営課題に対して診断・助言を行う資格および登録制度です。中小企業支援法にもとづく国家資格になります。

この試験合格に向けた勉強を行い合格すると、中小企業経営者に対する経営面の助言はもちろんのこと、金融機関から融資を受けるうえで必要とされる経営改善計画書などの作成も可能となります。

参考:中小企業診断士とは(中小企業庁)

USCPA(米国公認会計士)

その名のとおり、米国の公認会計士資格です。難易度は、日本の公認会計士よりも低めとされています。全問英語での出題です。

自社の海外展開にともない、現地の取引先などと交渉・調整などをする可能性があったり、将来的にアメリカで起業などをしたかったりする場合は、取得を目指すのも一つでしょう。

MBA(経営学修士)

MBAとは、Master of Business Administrationのことです。これは、経営学の大学院修士課程の修了にともない授与される学位になります。ここまで紹介したような試験・資格ではありません。

MBAプログラムでは、経営企画部の役割に直結する以下のような知識・スキルを体系的に学べます。

  • 経営戦略
  • ファイナンス
  • マーケティング
  • コミュニケーション力
  • 課題解決力
  • 論理的思考力
  • リーダーシップ力 など

公認会計士

公認会計士とは、自国企業における財務情報の正しさを保証する資格です。

公認会計士になると、会計・監査や経営に関する専門知識と豊富な知見を通じて企業の財務諸表の監査を実施し、独立した立場からの意見表明や信頼性の確保などが可能となります。

また、経営戦略の立案・組織再編・システムコンサルティングなどの助言も、公認会計士の代表的な仕事です。日系企業であれば、USCPA以上に重宝される資格となるでしょう。

参考:公認会計士の使命と仕事内容(日本公認会計士協会)

税理士

税理士は、いわゆる税金のスペシャリストです。税理士には独占業務があり、この資格を持っていると以下のような税務代理が行えるようになります。

  • 税務官公署への申告・申請
  • 税務調査の立会い
  • 税務官公署への異議申し立て など

また、税理士は、税務・経理・会計分野の専門知識を活かし、企業経営のコンサルティングに携わることも多いです。この資格を取得することで、節税や相続面の助言も経営者に行いやすくなるでしょう。

参考:税理士|職業詳細(厚生労働省・職業情報提供サイト)

経営企画部に向いている人の特徴

経営企画部の場合、経営陣の参謀として「自社の成長」や「経営課題の解決」といった正解のない問いと多方面から向き合うことになります。この仕事で高い成果を出し続けるためには、先述のスキルとあわせて以下のような資質をバランスよく兼ね備える必要があるでしょう。

  • 市場や社会などの動向に常にアンテナを張り続けられる人
  • 自分の専門外のことにも関心を持ち、成長意欲を持って学び続けられる人
  • 正解がない問いに対して、諦めずに考え抜く力が高い人
  • ステークホルダーとの良い関係構築がうまい人
  • 相手を巻き込んだり動かしたりする力に長けている人
  • 事務処理能力が高い人
  • 数字に強い人
  • 固定概念にとらわれない人
  • 主体的な姿勢を持っている人
  • 広い視野を持ち、多角的な物の見方ができる人 など

具体的に必要な資質・スキルは、自社の業種や経営企画部の業務範囲によっても変わります。たとえば、自社がIoT企業であったり、業務のDX化で組織変革を行ったりする場合、以下のようないわゆるデジタルリテラシーが求められることもあるでしょう。

  • IT最新動向
  • AI
  • IoT
  • RPA
  • クラウド

経営企画部の組織強化に向けて新たな人員補充をする際には、自社の経営戦略や現場で生じている問題点などから、適切な人材の資質・スキルを洗い出してみてください。

経営企画部からのキャリアパス

近年のビジネス環境には、終身雇用が崩壊したことで雇用の流動化や転職の一般化が生じています。それはつまり、従業員の転職が当たり前になったということです。

こうしたなかで優秀な人材を獲得するためには、経営企画部の経験を活かせるキャリアパスを面接・面談のなかで伝え、経営企画部の魅了づけや仕事の意味づけをしていくことも一つになります。

ここでは、経営企画部のメンバーが目指すことが多い、4つのキャリアパスを紹介しましょう。

  • 自社の経営幹部候補
  • 海外拠点の責任者
  • 他社の経営企画部に転職
  • 独立・起業

自社の経営幹部候補

経営企画部で活躍するには、先述のとおり上位層に不可欠なコンセプチュアルスキルなどが必要です。こうした能力を活かして経営陣への適切な提案や戦略立案などを続けていると、その実力・実績が認められて将来の経営幹部候補としてステップアップできる場合があります。

海外拠点の責任者

経営企画部のなかで英語などの語学力が高い人材は、自社の事業が海外進出などをする際に、その拠点の責任者として抜擢されることがあります。

海外拠点の責任者として活躍するうえでは、異なる文化や価値観を持つ外国人と良好なコミュニケーションを図るための能力を身につけたり、海外市場の動向などに目を向ける意識も必要でしょう。

他社の経営企画部に転職

近年では、ビジネス環境が複雑化するなかで、経営方針や戦略立案できる人材が引く手あまたの存在になっています。

そのため、たとえば「もっと大きな会社で戦略立案したい」や「グローバルな視点で経営企画に携わりたい」といった場合、他社の経営企画部への転職もキャリアの選択肢に入ってくるでしょう。

独立・起業

経営企画部は、将来的に独立・起業したい人にもおすすめです。経営陣の参謀として調査分析や戦略立案などに携わった経験は、自分が会社を立ち上げるときに活かせます。

また、経営陣に提案や助言ができるほどの知識や経験がある場合、経営コンサルタントになるのも一つでしょう。

海外企業にも経営企画部はある?

海外企業では、日本企業のように経営企画に特化した部署を設けるケースはそう多くありません。

その理由は、海外先進企業の場合、事業戦略・企業財務・管理会計などの知識を持つ専門家が、数字のマネジメントや戦略策定をしていることが一般的だからとなります。これは、実務経験をもとに属人的な手法で経営企画を担うことが多い日本企業との大きな違いになるでしょう。

また、こうした専門家を置かない場合、マーケティングや営業などの各事業部が自ら戦略立案や予算決定をするケースも多いようです。

経営企画部の役割を解説しました

経営企画部が企業内で担う役割は、VUCA時代のなかでとても大きくなっています。コロナショックのような外的環境の変化や競合に負けない企業を作るためには、経営企画部の組織力を高めることも大切です。人員補強などを検討している場合は、ぜひ本記事で紹介したスキルや知識などを参考にしてください。

スタートアップのための戦略的なバックオフィス体制構築とは

Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

Startup JAM編集

AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」を提供する株式会社LegalOn Technologiesの、「Startup JAM-スタートアップ向けにビジネスの最前線をお届けするメディア-」を編集しています。

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