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シリーズAとは?資金調達成功の準備・プロセス・成功のポイント

シリーズAとは?資金調達成功の準備・プロセス・成功のポイント

スタートアップの「資金調達」がよくわかるガイドブック ~基礎から実践まで~

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シリーズAラウンドは、スタートアップ企業が本格的な成長を目指すために、事業拡大の資金を調達する重要なフェーズです。この段階では、製品やサービスの開発強化、人材確保、マーケティングなどに充てるための資金が求められます。本記事では、シリーズAの定義や目的、調達方法、成功に必要な準備とポイントを詳しく解説し、実際の成功事例やシリーズA後の成長課題にも触れ、資金調達を目指す企業にとって役立つ情報を提供します。

シリーズAとは?

シリーズAとは、スタートアップ企業が事業を本格的に成長させるために行う資金調達の初期段階の1つです。このフェーズは、プロダクトやサービスが市場に受け入れられ始めた段階(Product-Market Fit、PMF)が達成されていることが条件となる場合が多く、単なる事業アイデア段階ではなく、一定の市場実績や顧客基盤があることが求められます。シリーズAの投資家は通常、スタートアップの成長可能性や将来的な収益性に基づいて投資を判断します。

シリーズAは投資ラウンドの1つ

シリーズAは、スタートアップが資金を調達する「投資ラウンド」の1つに位置付けられます。投資ラウンドとは、スタートアップ企業が投資家から段階的に資金を調達する際の成長段階を示す指標です。それぞれのラウンドごとに目的や特徴が異なります。シリーズAはその中でも重要な位置付けにあり、事業の本格的な成長を支えるための資金調達フェーズです。各ラウンドと比較して違いを確認していきましょう。

各資金調達ラウンドの種類と特徴

資金調達ラウンドは、企業の成長ステージに応じて以下のように分類されます。

プレシード

  • 資金調達の目安:数百万円~数千万円
  • 資金調達の目安:1~3ヶ月
  • 主な投資家:エンジェル投資家、アクセラレーター
  • 企業の状況:アイデア段階、初期プロトタイプ開発中

シード

  • 資金調達の目安:数千万円~数億円
  • 資金調達の目安:3~6ヶ月
  • 主な投資家:エンジェル投資家、VC
  • 企業の状況:プロトタイプ開発、市場適合性検証中

シリーズA

  • 資金調達の目安:数億円~十数億円
  • 資金調達の目安:約6ヶ月
  • 主な投資家:ベンチャーキャピタル、CVC
  • 企業の状況:PMF達成、収益性実証済

シリーズB以降

  • 資金調達の目安:十数億円~数百億円
  • 資金調達の目安:6ヶ月~1年
  • 主な投資家:大手VC、機関投資家
  • 企業の状況:収益モデル確立、大規模成長段階

投資ラウンドは、企業の成長段階を示すだけでなく、投資家にとっても企業の将来性を見極める重要な指標となります。シリーズAはその中でも事業拡大の基盤を築く重要なステップです。シリーズAは、プレシードやシード段階と比較すると、企業の成長性や収益性が具体的に評価される段階です。一方で、シリーズB以降はさらなる事業拡大や市場での地位確立を目的とするため、調達額や投資規模が大きくなります。

シリーズAにおける資金調達方法と特徴

シリーズAラウンドでの資金調達では、スタートアップの成長を支える重要な手段として、以下の方法が一般的です。それぞれの特徴、投資基準、利点と注意点を整理して解説します。

1.ベンチャーキャピタル(VC)からの出資

VCの概要ベンチャーキャピタルは、成長が見込まれるスタートアップに出資し、株式を取得することで将来の株式売却(EXIT)によるキャピタルゲインを目指します。現在の業績よりも将来の成長性を重視し、積極的な経営支援を通じて企業価値の向上を図る点が特徴です。

独立系VCの特徴と投資基準

特徴

独立系VCは、特定の組織に属さない独立した投資会社です。柔軟で迅速な意思決定が可能であり、親会社の制約を受けずに幅広い業種やビジネスモデルへの投資が可能です。特に急速に変化するスタートアップ市場において、投資基準に基づく独立性とスピードが強みとなります。

投資基準

  1. 市場ポテンシャル:市場規模や成長性を重視。将来の拡大性が鍵となります。
  2. PMF(プロダクトマーケットフィット)の達成状況:顧客ニーズに適合したプロダクトやサービスが評価対象。
  3. 収益モデルの明確性:利益を生む仕組みの具体性が求められます。
  4. 経営チームの能力:リーダーシップ、柔軟性、経験が重視されます。

メリット

  • 柔軟性:特定の業界や親会社の戦略に縛られず、幅広い投資が可能。
  • 迅速な意思決定:市場環境の変化に対応しやすい。
  • 独立性の尊重:過剰な干渉を避け、スタートアップの独自性を支援。

デメリット

  • 事業リソース提供の制約:CVCと比べて、事業シナジーを提供しにくい場合がある。
  • 短期志向の傾向:EXITを前提とするため、長期的なパートナーシップには限界がある。

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の特徴と投資基準

特徴CVCは事業会社の投資部門として、親会社との事業シナジーを重視した出資を行います。親会社の事業ノウハウやネットワークを活用することで、スタートアップの成長を加速させる点が特徴です。

投資基準

  1. 親会社の事業との関連性:既存事業との連携可能性を評価。
  2. リソース活用の協業可能性:技術やネットワークとの統合性が重要。
  3. 長期的価値の創造:短期利益ではなく、事業戦略との整合性を重視。

メリット

  • 事業シナジー:親会社のリソースを活用し、スタートアップの成長を促進。
  • 信頼性の向上:大手企業からの出資が市場での認知度や信頼性を高める。
  • 早期資金提供:事業初期の資金ニーズを迅速に満たす。

デメリット

  • 柔軟性の制約:親会社の方針が意思決定に影響する場合がある。
  • 競合他社との関係構築の制限:取引が難しくなる場合も。

2.金融機関からの融資

特徴金融機関からの資金調達は、株式を希薄化せずに資金を確保できる方法です。特に、日本政策金融公庫などの政府系金融機関は創業支援融資を提供しており、スタートアップにとって現実的な選択肢となります。

方法

  • 銀行融資:担保や事業計画を基に、低金利で長期的な資金を調達可能。
  • 政府系金融機関の融資:保証人不要や低金利などの優遇条件で資金を得ることが可能。

メリット

  • 株式を手放さずに資金調達が可能。
  • 安定した返済計画を基に、長期的な事業運営を支援。

デメリット

  • 資金調達に時間を要する場合がある。
  • 返済義務により、キャッシュフローの管理が課題となる可能性がある。

シリーズAラウンドでは、スタートアップの成長ステージや資金調達の目的に応じて、VCと金融機関の両方を適切に選択することが重要です。VCは成長性を重視し積極的な支援を提供する一方で、金融機関は安定した資金を供給するための選択肢として有効です。それぞれのメリットとデメリットを理解し、バランスの取れた資金調達戦略を立てることが成功への鍵となります。

シリーズA資金調達のプロセスと成功に必要な準備

シリーズA資金調達は、スタートアップが事業を成長させるための重要なステップです。ここでは、準備段階から契約締結までのプロセスを段階的に解説し、それぞれのステップで必要な準備や注意点を具体的にご紹介します。

準備段階:計画と資料作成が鍵

資金調達の成功は、準備段階でどれだけ質の高い資料を揃えられるかに大きく左右されます。この段階では、投資家に対して事業の魅力を伝えるための土台をしっかり整えましょう。

必要な準備

  • 事業計画書の作成:明確なビジョンと市場分析を盛り込み、事業の成長性を示します。具体的な目標数値やスケジュールを含めると説得力が高まります。
  • 財務諸表の準備:過去の収益やコストのデータ、将来の財務予測を正確に提示します。透明性が信頼を得る鍵です。
  • ピッチ資料の作成:投資家向けのプレゼンテーション資料を作成し、簡潔でわかりやすい表現を心がけます。

これらの準備が整うことで、投資家との交渉がスムーズに進みやすくなります。

投資家探し:適切なパートナーの選定

資金調達を成功させるためには、自社に合った投資家を見つけることが重要です。それぞれの投資家の特性を理解し、自社のステージやニーズに合うパートナーを選びましょう。

主な投資家の種類

  • VC(ベンチャーキャピタル):高いリターンを求めるプロフェッショナル集団。成長性のある企業に興味を持つ傾向があります。
  • CVC(コーポレートベンチャーキャピタル):母体企業とのシナジーを重視。戦略的パートナーとしての支援を期待できます。
  • エンジェル投資家:個人投資家で、スタートアップ初期の支援を得意とします。フレキシブルな交渉が可能です。

適切な投資家を見つけるには、自社の事業ステージや目標に基づいてリストを作成し、ネットワークを活用しましょう。

交渉・デューデリジェンス:信頼構築と検証

投資家が決まったら、次は条件交渉とデューデリジェンス(投資家による企業調査)の段階です。このプロセスは、双方の信頼関係を築く重要なポイントでもあります。

注意すべき点

  • 条件交渉:出資額や株式の割合、事業運営への関与などを具体的に話し合います。妥協点を明確にしておくことが重要です。
  • デューデリジェンスの対応:投資家から求められる企業の財務状況や法的リスクの調査に迅速かつ正確に対応します。透明性を持つことが信頼構築につながります。
  • 将来のビジョン共有:長期的な目標や戦略についても議論し、相互理解を深めます。

適切な交渉を通じて、投資家との良好な関係を築くことが成功のカギです。

契約締結:最終ステップでの確認事項

交渉がまとまった後は、投資契約を締結するステップです。契約内容を細部まで確認し、双方にとって納得のいく合意を目指しましょう。

確認すべきポイント

  • 投資契約の内容:出資額、株式比率、配当条件、経営への関与範囲などを明確にします。
  • 法的リスクのチェック:専門家の助けを借りて、契約内容が法的に問題ないことを確認します。
  • 契約後のフォローアップ:契約締結後も、投資家との関係を維持し、定期的な進捗報告を行いましょう。

慎重な確認を行うことで、後々のトラブルを防ぐことができます。

シリーズAの資金調達時に注意すべきポイント

シリーズAラウンドでの資金調達は、スタートアップの成長において重要なステップです。成功を収めるためには、以下の点に注意を払う必要があります。

資金が余裕なうちに交渉する

資金調達の交渉は、資金に余裕がある段階で始めることが望ましいです。資金が逼迫してから交渉を始めると、投資家に足元を見られ、不利な条件を受け入れざるを得ない状況に陥る可能性があります。資金的な余裕がある時期に交渉を始めることで、条件の詳細な検討や他の投資家との比較を行うことができるでしょう。

バリュエーションの適正な算出

企業価値(バリュエーション)の適正な算出は、投資家との交渉において重要な要素です。市場動向や競合他社の状況、自社の成長性などを総合的に分析し、現実的な評価を行うことが求められます。過大評価は投資家の信頼を損ね、過小評価は企業の価値を低く見積もることになります。適切なバリュエーションを設定し、投資家と建設的な交渉を進めることが重要です。

株式の希薄化

新たな株式発行による資金調達は、既存株主の持ち株比率を低下させる「株式の希薄化」を引き起こします。これにより、経営権や意思決定への影響力が減少する可能性があります。将来的な資金調達計画を考慮し、現在のラウンドでの株式発行量を慎重に検討することが必要です。また、既存株主とのコミュニケーションを密にし、理解と協力を得ることも重要です。

投資契約の内容

投資契約には、出資額や株式比率だけでなく、配当条件、経営への関与範囲、将来的な株式売却の制限など、多岐にわたる条項が含まれます。これらの内容を十分に理解し、不利な条件が含まれていないかを確認することが重要です。専門家の助言を求め、契約内容を慎重に精査することで、後々のトラブルを防ぐことができます。

投資家との相性

投資家とのビジョンや価値観の一致は、長期的なパートナーシップを築く上で不可欠です。短期的な利益追求だけでなく、企業の成長戦略や社会的な使命に共感してくれる投資家を選ぶことで、協力的な関係を築くことができます。投資家との面談やコミュニケーションを通じて、相互理解を深める努力が求められます。

経営権を譲渡しすぎない

資金調達の際に、過度に経営権を譲渡してしまうと、企業の独自性や意思決定の迅速性が損なわれる可能性があります。出資比率や取締役会での議決権など、経営権に関わる要素を慎重に検討し、必要以上の譲渡を避けることが重要です。自社のビジョンや戦略を守るためにも、経営権のバランスを適切に保つことが求められます。

成功事例:シリーズAで資金調達

シリーズAラウンドで資金調達を成功させた国内スタートアップの事例を3社ご紹介します。それぞれの調達額、資金使途、その後の成長、さらに成功要因を具体的に分析し、他の企業が参考にできるポイントを提示します。

1.株式会社AIメディカルサービス

  • 調達額:2018年8月に約10億円を調達
  • 資金使途:内視鏡診断支援システムの研究開発費に充当。また、医療機関との連携強化を目的とした事業拡大にも資金を投じました。
  • その後の成長:資金調達後、製品化が進み、日本国内の医療機関での導入が増加。さらに、海外市場への進出準備も開始し、グローバル展開を目指しています。

成功要因と参考ポイント

  • 技術力の高さ: 医療現場のニーズに応える高度なAI技術が支持を獲得。
  • 明確な市場ターゲット:内視鏡検査領域に特化し、専門性を高めた。
  • 医療機関との密接な連携:実際の医療現場での実証実験を通じて製品を磨き上げた。

2.株式会社Scalar

  • 調達額: 2022年10月に約15億円を調達
  • 資金使途: データベースミドルウェアの開発、国内市場でのマーケティング強化、米国市場進出の準備。また、サポート体制の充実にも投資。
  • その後の成長: 資金調達後、国内での市場シェアを拡大し、米国市場でのパートナーシップ構築を進めています。電子文書管理や証拠保全の分野での利用が拡大。

成功要因と参考ポイント

  • 独自技術の開発: 他社にない信頼性の高いデータ管理技術を提供。
  • 市場ニーズの把握: 企業間取引やデータ保全の課題を解決する製品開発に注力。
  • 強固な投資家基盤:複数の大手企業やベンチャーキャピタルの支援を受け、安定した資金調達を実現。

3.株式会社SalesNow

  • 調達額: 2022年8月に約2億円を調達
  • 資金使途:セールス支援ツール「SalesNow」の開発強化、人材採用による組織体制の強化、営業部門向けのカスタマーサポート体制の構築。
  • その後の成長:営業支援ツール「SalesNow」が中小企業を中心に高い支持を得て、利用者数が大幅に増加。収益モデルの多角化にも成功しています。

成功要因と参考ポイント

  • 顧客ニーズに即したサービス設計: 営業現場の効率化を実現する実用的なツールを提供。
  • AI技術の活用: 営業データの分析と効率化を支援し、他社との差別化を実現。
  • 中小企業市場の攻略: 大手企業に比べてニーズが強い中小企業をターゲットにした戦略が奏功。

補足

  • 2024年11月にシリーズAエクステンションラウンドにて6.5億円の調達

※エクステンションラウンド:シリーズA以降でシリーズB未満のラウンドのこと

これらの企業は、それぞれの分野で革新的な取り組みを行い、シリーズAラウンドでの資金調達を通じてさらなる成長を遂げています。技術革新、市場ニーズの的確な把握、戦略的パートナーシップの構築、適切な資金活用などが成功の要因として挙げられます。これらのポイントは、他のスタートアップ企業にとっても参考になるでしょう。

シリーズA調達後の企業成長に向けた課題と次のステップ

シリーズAでの資金調達を達成した企業は、さらなる成長を目指して次のステップに進む必要があります。以下では、事業拡大、人材採用、組織体制の構築、次の資金調達に関する課題とその解決策を具体的に解説します。

事業拡大:新規顧客獲得と市場開拓

資金調達後、事業を拡大するためには新規顧客の獲得や市場の開拓が不可欠です。まず既存市場でのシェア拡大を図り、次に新たな市場への進出を検討します。市場調査を徹底し、ターゲット顧客のニーズを把握することで、効果的なマーケティング戦略を立案できます。また製品やサービスのラインナップを拡充し、多様な顧客層に対応することも重要です。これにより、収益源の多角化と安定した成長が期待できます。

人材採用:適切な人材の確保と育成

事業拡大には、適切な人材の確保と育成が鍵となります。まず企業のビジョンや文化に共感し、必要なスキルを持つ人材を採用することが重要です。採用プロセスを明確化し、効果的なリクルーティング手法を導入しましょう。また既存の従業員に対しても継続的な教育やトレーニングを提供し、スキルアップを促進します。これにより、組織全体の能力向上と持続的な成長が可能となります。

組織体制の構築:ガバナンスの強化

事業の拡大に伴い、組織体制の再構築とガバナンスの強化が求められます。明確な組織図を作成し、各部門の役割と責任を明確化することで、業務の効率化と意思決定の迅速化が図れます。また内部統制やリスク管理の体制を整備し、コンプライアンスを徹底することも重要です。これにより、企業の信頼性が向上し、持続的な成長の基盤が築かれます。

次の資金調達:シリーズB以降への準備

シリーズAの成功を踏まえ、次の資金調達ラウンド(シリーズB、C、Dなど)に向けた準備を進める必要があります。まず事業計画や財務状況を定期的に見直し、投資家に対して透明性の高い情報提供を行いましょう。また既存の投資家との関係を強化し、新たな投資家の開拓も積極的に行います。これにより、資金調達の選択肢が広がり、企業の成長戦略を柔軟に実行できます。

シリーズAの資金調達を成功させるためには

シリーズAの資金調達は、スタートアップ企業が更なる成長を遂げるための重要なステップです。成功には、事前の綿密な準備、適切な投資家の選定、そして交渉における戦略的な視点が欠かせません。本記事で解説したポイントを踏まえ、資金調達のプロセスをしっかりと理解することで、企業は成長の加速に必要な資金を獲得し、未来を拓くことができるでしょう。

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執筆

Startup JAM編集部

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