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シリーズDとは?定義や資金調達の金額・方法・実例までわかりやすく解説!

シリーズDとは?定義や資金調達の金額・方法・実例までわかりやすく解説!

スタートアップの「資金調達」がよくわかるガイドブック~基礎から実践まで~

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スタートアップ企業の成長段階を示す言葉として、よく耳にするのが「シリーズD」です。

「シリーズDとは、そもそも何?」

「シリーズDの資金調達の目安はどのくらい?」

こういった疑問をお持ちの経営者の方のために、本記事ではシリーズDの概要と資金調達ラウンドについて、関連用語、定義、資金調達額と期間の目安、資金調達方法、資金調達の実例を解説していきます。

シリーズDとは

シリーズDとは、成長段階においてシリーズCを超えて成長した企業が、より大きな資金調達を行うラウンドです。

シリーズDのスタートアップ企業は、安定した事業をさらに拡大・展開したり、新たな事業を始めたりする段階に来ています。そうなると必然的に必要になるのが、莫大な資金です。事業内容にもよりますが、数十億円規模の資金を調達して事業の成長や創出にあてることもあります。

スタートアップ企業のゴールともいえるイグジットに向け、こういった資金調達を必要とする段階が、資金調達(投資)ラウンドにおけるシリーズDです。

資金調達(投資)ラウンドとは

資金調達(投資)ラウンドは、投資家がスタートアップ企業に投資を行う段階を、ラウンドと呼ばれる段階に区切って表した名称です。資金を調達したいスタートアップ企業視点では「資金調達ラウンド」、投資を検討する投資家視点では「投資ラウンド」と呼ばれます。

大きく「シード」「アーリー」「ミドル」「レイター」のステージに分かれ、その中にシリーズDのようなラウンドが含まれます。

それぞれのステージ・ラウンドの区分と概要は、以下の通りです。

シード:エンジェル / プレシード / シード

  • 企業に向けた準備
  • アイデア段階または大枠のビジネスが定まった段階

アーリー:プレシリーズA / シリーズA

  • ビジネスを開始した直後の段階
  • 事業がリリースされて間もない時期

ミドル:プレシリーズB / シリーズB

  • 事業と経営が軌道に乗り始めた段階
  • 製品やサービスの評価に合わせて機能追加や新プロダクトの開発を行う

レイター:シリーズC / シリーズD

  • 事業が安定し、黒字経営が継続できるようになってきた段階
  • イグジットを具体的に検討する時期

スタートアップ企業は自社の成長段階をラウンドに当てはめ、最適な資金調達方法を選びます。特にシリーズDに該当する企業はイグジットを目指す場合も多く、必要となる資金は大きな額になるため、注意が必要です。

シリーズD以外の資金調達(投資)ラウンドを知りたい方は、以下の記事を参照してみてください。

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シリーズDに関連する用語

シリーズDや資金調達ラウンドについて考える上で、知っておかなければならない用語がいくつか存在します。ここではそれらの用語をかいつまんで解説していきます。

イグジット(EXIT)

スタートアップ企業の創業者や投資家が、保有する株を売却し投資額を回収することを指します。M&AやIPOによって行うのが一般的です。スタートアップ企業にとって短期間にイグジットを達成することが、ひとつの目標となります。

IPO(新規公開株式)

「Initial(最初の) Public(公開の) Offering(提供品)」の頭文字をとった単語です。株式所有をごく少数の株主に限定していた未上場企業が上場し、広く投資家向けの株式を公開することを指します。資金調達の幅を広げる他、企業知名度や社会的信用の向上が期待できるメリットがあります。

優先株式

普通株式に比べて優先的な権利をもつ株式です。リスクの高いスタートアップ企業に投資する場合のリスク管理として投資家が利用します。剰余金の優先配当や残余財産の優先分配の権利があり、定款に定めて登記することで発行する株式です。優先株式がアルファベット付きの名称で発行されることに由来して、ラウンドの名称はアルファベットで表されています。

例)A種優先株、B種優先株 → シリーズA、シリーズB

シリーズDの定義

シリーズDを含めた資金調達ラウンドに、明確な範囲区分や定義はありません。

ただし前述の通り、シリーズDは事業が安定しM&AやIPOによるイグジットを検討できる段階です。イグジットに向けて十分な売上を出すため、多くの資金を必要として追加の資金調達をおこなうのが、シリーズDの段階と言えます。

事業規模の拡大と並行して新たな事業に着手しており、組織管理やイグジットに向けてスタッフ増員をする場合も多くなります。シリーズEやFへ続くこともありますが、基本的にはシリーズDがスタートアップ企業の最終資金調達ラウンドです。

シリーズDにおける調達額と期間

シリーズDの段階で調達する資金の用途は主に以下の通りです。

  • 事業拡大(研究開発)
  • 新規事業創出
  • 人材採用
  • 海外展開
  • 販売促進
  • M&A、IPOへ向けた準備

多岐に渡る用途のため、資金調達額は標準でも数十億円規模になります。

場合によっては、シリーズDのみで総額百億円を超える資金調達を実施する場合もあります。

またそれらの資金を調達するのに、数か月から半年程度の時間が必要です。

数十億円規模となると、資金を提供する投資家やファンド、金融機関との交渉や法的手続きに相応の時間がかかります。

また、この期間は事業内容や投資家の状況によって大きく変わる場合があるため、専門家と資金が調達できる時期を確認しつつ計画を立てなくてはなりません。

スタートアップの資金調達についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひ以下のお役立ち資料も併せて確認してみてください。

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シリーズDの資金調達方法

シリーズDにおける資金調達の方法にはいくつかの種類があります。それぞれメリットとなる要素があり、自社に適した方法の選択がその後の企業成長に欠かせません。これからシリーズDに進む企業は、以下に挙げる資金調達方法を専門家を交えて検討しましょう。

VCやCVCから出資を受ける

VCやCVCからの出資は、主な資金調達方法の1つです。

VC(ベンチャー・キャピタル)は、主に新興企業(ベンチャー企業)に資金を提供し事業拡大をサポートする組織です。シリーズDにおいては、大規模な資金調達が必要となるため、複数のVC・CVCから出資を受けます。

VC・CVCの出資を受けるメリットとして、経営支援やノウハウ、人材の提供が受けられる点が挙げられます。そのため出資を交渉するVC・CVCを選定するにあたり、以下のような条件の検討が必要です。

  • 自社に適した経営支援を受けられるか
  • 自社のメイン、関連事業を今後拡大するノウハウが獲得できるか
  • 自社に必要となる人材を紹介してもらえるか

特にCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)は、事業内容に関連性がある企業に対してのみ投資を行うため、自社に適したノウハウを持っている場合があります。

PEファンドから出資を受ける

PE(プライベート・エクイティ)ファンドは非公開株式への投資を行うファンドで、投資家からの出資で未上場企業の株式を購入します。

特徴として、ファンドが持つ経営ノウハウを用いて、投資する企業の企業価値向上をサポートする点が挙げられます。業種やステージに合った専門性を持っているファンドを選択することで、最大限企業価値を向上させることが可能です。

またPEファンドが目指すイグジットはM&Aであるため、M&Aに関するサポートが受けやすい点も特徴です。M&Aに向けた戦略の専門家が多数在籍するファンドを選べば、最終的なイグジットで最も適したM&A先を紹介してもらえる可能性があります。

自社のイグジットとしてM&Aを想定している場合は、有効な選択肢と言えるでしょう。

金融機関からプロパー融資を受ける

事業が安定してきているスタートアップ企業にとっては、金融機関から融資を受けるのも有効な資金調達方法です。投資を受ける形式と異なり、株式流出を防げる利点があります。

中でも審査の厳しい通常の融資ではなく、プロパー融資を受ける方法がスタートアップ企業のシリーズDにおける資金調達に適しています。

プロパー融資は信用保証協会の保証を利用せず、金融機関から直接融資を受ける形式です。信用保証協会の保証が無い分、審査が厳しいという特徴があります。しかしその分、審査を通れば保証料が安く金利も低いのが利点です。また、シリーズDまで進んでいる企業であれば一定の信用があるため、プロパー融資の審査は通りやすくなっていると考えられます。

日本政策金融公庫の支援を受ける

日本政策金融公庫では基準を満たしたスタートアップ企業に対して、最大20億円のスタートアップ支援資金を融資しています。保証人が必要なく、長期間の提供を前提としているため金融機関と比べると返済期間が長い点も特徴です。

資金の使い道には設備資金及び長期運転資金に含まれるものが指定されています。長期運転資金には一時的な施設等の賃借費用を含むため、操業の補助となる資金として利用可能です。スタートアップ企業の事業拡大フェーズに合わせた制度となっており、シリーズDの資金調達の一部として適した選択肢と言えるでしょう。

また、新たに発行した新株予約権を日本政策金融公庫が取得し、必要な資金を無担保で供給する仕組みも用意されています。

支援は日本公庫各支店の中小企業事業の窓口から相談することができます。

シリーズDの資金調達の実例

ここからは実際にシリーズDの段階にある企業が資金調達を行った実例を見ていきましょう。

エンタープライズ向け生成AIプラットフォームを開発する、ストックマーク株式会社の事例です。ストックマーク株式会社は、PEファンド大手のポラリス・キャピタル・グループ株式会社から総額45億円の資金調達を行いました。ストックマーク株式会社は自社プロジェクトの拡張・競争力強化に加え、大規模言語モデル開発への投資に資金を活用すると発表しています。

資金調達の背景として、多くのテクノロジー企業に投資してきたPEファンドであるポラリスからの出資を受けることに意義を感じていると言います。先述の通りPEファンドは、特定の業界に合った経営ノウハウを持ち、その提供を受けられることも出資を受けるメリットです。ストックマーク株式会社は、この企業価値向上のノウハウを取り込むことを期待して資金調達先を選定しました。

シリーズDラウンドにある企業が実際に資金調達を実施した事例として、ぜひ参考にしてみてください。

参考:PR TIMES「ストックマーク シリーズDラウンドでポラリスより45億円の資金調達を実施 エンタープライズ向け生成AIプラットフォームのリーディングカンパニーへ

シリーズDについて解説しました

シリーズDは、事業の安定してきたスタートアップ企業がさらなる資金調達を目指すラウンド(段階)です。それまでの成長や事業の内容に合わせて資金調達方法を検討し、イグジットを目指す段階の指標としましょう。

この記事ではシリーズDの概要と資金調達ラウンドについて、関連用語、定義、資金調達額と期間の目安、資金調達方法、資金調達の実例を解説してきました。

スタートアップ企業にとって、資金調達ラウンドの考え方は創業前から利用できる指標です。最終的な目標に向かってビジネスを進める上で、本記事で解説した内容も参考にしてみてください。


Startup JAM編集部
執筆

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