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株式発行の仕組みを図解付きで解説!具体例を用いて基本的な流れも説明

株式発行の仕組みを図解付きで解説!具体例を用いて基本的な流れも説明

スタートアップの「資金調達」がよくわかるガイドブック ~基礎から実践まで~

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株式発行は株式を発行して資金を調達する方法で、資金集めだけでなく企業成長にもつながります。株式発行を理解するには「株式とは何か」という基本知識に加え、発行の手順やプロセスを把握することが大切です。

本記事では、株式発行の仕組みや基礎知識を、具体的な図や例を交えてわかりやすく解説します。起業やスタートアップを目指す方にとって必須の知識ですので、ぜひご参考ください。

株式発行の仕組み

株式発行による資金調達を行う仕組みは下記の通りです。

会社が自社の株式を新たに発行し、発行された株式を投資家が購入(=出資)することで、資金調達を行う仕組みです。

出資された会社側は、資金を元手に利益を上げることを目指します。

逆に出資した投資家は利益を上げた場合の配当金を受け取り、出資した会社が成長し株価が上がれば、株式を売却して利益を得られるようにもなります。

株式発行の基本的な知識

冒頭で解説した株式発行の仕組みを元に、ここからは株式発行の基本的な知識を解説します。

実際に資金調達した際の例を用いながら解説するので、上記の図が理解できなかった方もぜひ参考にしてください。

株式の概要と発行の目的

株式とは会社が資金を集める際に発行する有価証券の一種です。

会社は株式を発行し、投資家に購入してもらい、資金を調達できます。発行した株式を購入した投資家は株主となり、会社の一部を保有することになるのです。

そのため会社が利益を上げた場合には配当金としてその利益の一部を受け取る権利(自益権)や、株主総会に参加して会社の重要な決定に加わる権利(共益権)を得られます。また株主は取得した株を売買して利益を得ることも可能です。

株式発行によって会社側は、大規模な資金調達が可能になります。融資とは違い、返済義務がない点から、金融機関からの借り入れに依存せず自己資本を増やせるため、財務健全性を高められるようにもなるのです。

株式発行による資金調達の例

株式発行による資金調達について、具体例を用いながら解説します。

例えばあなたがAさん、Bさんと共同で株式会社を設立したとしましょう。この時100株を発行し、

  • あなた:30株
  • Aさん:20株
  • Bさん:50株

を所有しているとします。経営を続ける中で「新規事業に挑戦したいと思ったものの資金が足りない」という状況に陥りました。この際に必要なのが資金調達です。

代表的な資金調達としては​​株式発行や融資、資産売却の3つの方法がありますが、ここでは本記事の主題である株式発行による資金調達の例を見てみましょう。

最初の100株に対して、

  • あなた:30株
  • Aさん:20株
  • Bさん:50株

となっているので、持株比率は

  • あなた:30%
  • Aさん:20%
  • Bさん:50%

となります。

ここでさらに株式を新たに発行し、発行した株式を購入してもらい、資金を得る方法が株式発行による資金調達です。

例えば会社が追加で100株を発行し、新規事業に興味を持った投資家Cさんが追加の100株分購入したとしましょう。これで会社の合計発行株数は200株となりました。

株数は

  • あなた:30株
  • Aさん:20株
  • Bさん:50株
  • Cさん:100株

となり、

持株比率は

  • あなた:15%
  • Aさん:10%
  • Bさん:25%
  • Cさん:50%

になります。

Cさんは株主となり、株主総会にも参加し、協議を重ねて事業を進めていくうちに、数年後新規事業は成功。Cさんは会社の利益から配当金を得られるようになります。

新規事業によってあなたの会社の価値は上がり、最終的にCさんは株を他の人へ売却し、大きな利益を得られるようになりました。

株式発行以外での企業の資金調達手段

ここまで解説した通り、株式発行は資金調達の一手段です。株式発行以外にも、主に資金調達の手段には以下の方法があります。

  • 融資
  • 資産売却

融資

融資は金融機関(主に銀行)から資金を借りる方法です。

株式発行とは違い、借入金には返済義務があり、利息をつけた上で返済する必要があります。

また事前に審査を受ける必要がある点にも注意が必要です。審査の際には、事業計画や返済計画の細かい内容を提出する必要があり、特に設立間もない会社にとってはハードルが高いというデメリットもあります。

一方で融資は経営権に関与されないというメリットがあります。経営に影響を及ぼすことなく資金を得られ、経営の独立性を保ちたい場合には有効な手段です。

また手続きが整えば素早く資金を確保できるため、緊急時にも使いやすい手段となっています。

なお金融機関だけでなく、公的機関からの公的融資を利用する方法もあります。公的融資は創業間もない会社や審査に通りにくい会社向けに提供されていることも多く、比較的利用しやすいのが特徴です。

資産売却

資産売却は会社の保有している資産を売却して資金を調達する方法です。売却できる資産の例としては下記が挙げられます。

  • 不動産:オフィスビルや倉庫、店舗などが該当。オフィスの一部を売却し、必要な分だけ賃貸で利用する方法もある。
  • 設備:生産機械や大型プリンター、使用されていないPC・モニターなど。業務で必要なくなった設備が含まれる。
  • 余剰在庫:売れ残った製品や部品、旧モデルの商品など、流行が過ぎて需要がなくなったものや、売れ残った在庫が該当。
  • 知的財産権:特許や商標、著作権など、自社で開発した技術やアイデアを他社に売却し、ライセンス料や売却益を得ることが可能。

資産売却によって、不要な資産を整理し、経営資源の見直しや効率化を進められるようになります。また余剰在庫を処分すると、保管スペースを確保できるという点もメリットです。

しかし売却する資産の選定やタイミングを誤ると、経営に影響を与える可能性があり、企業価値が低下するリスクも伴います。そのため資産売却での資金調達を実施する場合には、慎重な判断と計画を元に行いましょう。

なお融資や資産売却以外での資金調達の手段としては、社債の発行やクラウドファンディング、事業譲渡、補助金の利用も挙げられます。

株式の種類

改めてここからは株式発行について、詳しく解説します。

まずは株式の種類を理解しておきましょう。株式には主に普通株式と優先株式、劣後株式の3種類があります。

  • 普通株式:一般的に発行される株式です。株主には議決権や配当受取の一定の権利が与えられます。株価が上昇すれば利益を得られる可能性もあり、株式売却によるキャピタルゲイン(売却益)も期待できるのです。
  • 優先株式:普通株式よりも優遇された権利や条件が与えられた株式です。配当や残余財産の分配を与えられ、安定した収益が見込めます。その反面、議決権については与えられていない(もしくは制限されている)ため、経営への影響力は持つことはできません。
  • 劣後株式利益の配当金や残余財産の分配などが、普通株式よりも優先度が下がる株式です。その特徴から企業の業績悪化や倒産の際、株主が受ける影響が大きい反面、業績が良い場合には配当が多くなることもあります。

会社側の視点から見ると、普通株式は経営に介入されるリスクが高まりますが、優先株式は経営に介入されないという違いがあります。一方で、後者については発行時・発行後の負担が大きくなるという特徴があるため、しっかり把握しておきましょう。

株式発行の方法

株式発行の方法には、大きく分けて3つの種類があります。

  • 公募増資
  • 第三者割当増資
  • 株主割当増資

それぞれ特徴が異なるため、違いを理解しておきましょう。

公募増資

公募増資とは既に上場(※)している会社が特定多数の投資家に対して新株を発行して資金調達を行う方法です。

広範囲の投資家に対してアプローチを行うため、多額の資金を調達できる点や株主層の拡大、株式の流通量の増加を図れる点がメリットとして挙げられます。

一方で新たに株主が増え、既存株主の持ち株比率が希薄化する点や、利益分散に起因する株価下落を招く恐れがある点がデメリットです。関連して公募増資は既存の投資家からの反発を招きやすい傾向にあります。

そのため新規・既存両方の投資家への情報提供や資金調達の意義の説明を十分に行い理解を得る必要があります。

※会社が株式を証券取引所に公開し、一般の投資家が株を売買できるようにすること。多数の投資家から注目され、株を買ってもらいやすくなるため、資金調達が容易になり、知名度や信用も高められるようになる。

第三者割当増資

第三者割当増資とは会社が特定の第三者(投資家)に絞って新株の発行を行い資金調達を行う方法です。会社が上場していない場合は、主にこの手段で新規に株式を発行します。

第三者割当増資は新株発行の対象者を事前に指定できるのが特徴です。意図しない対象に株式を付与することが無いため、主に戦略的パートナーシップや資本提携を目的とするケースが多い方法となります。

なお第三差割当増資は、素早く多額の資金を調達できることから、会社の成長拡大や経営危機からの脱却に役立てられるのがメリットです。

一方で特定の第三者への優遇発行となるため、既存株主の持ち株が希薄化するといったデメリットもあります。

株主割当増資

株主割当増資とは既存株主の持ち株比率に応じて新株の割当を行い、資金調達を行う方法です。株主は持ち株が多いほど、より多くの新株の割当を受けられるようになります。

株主割当増資においては、既存株主の持ち株が希薄化しにくく、株主構成を安定化させつつ資金を調達できるのがメリットです。株主にとっては、自身の持ち株比率を持ち株比率を増加させる機会となり、会社の成長に伴う利益が還元されるという利点があります。

株主割当増資は会社側と株主の双方に恩恵のある方法ですが、手続きが煩雑で時間と労力がかかる点や、株主の資金状況や意志決定次第では未引受が発生する可能性がある点には留意しておく必要があります。

株式発行の流れ

株式発行の流れは下記の通りです。

  1. 募集事項の決定
  2. 投資家への通知
  3. 募集株式の割当て・通知
  4. 出資金の払込みと登記

公開会社(※)・非公開会社によって手続きも変わってくるため、順を追って見ていきましょう。

※株数・譲渡制限の無い、自由に株式を譲渡できる株式を発行できることを定めている会社を指す。会社法上では厳密に異なるものの、一般的には公開会社=上場企業と捉えられている。

1. 募集事項の決定

まずは株式を発行する上での募集事項を固めます。決めるべき募集事項は次の通りです。

  • 募集株式の種類・数
  • 払込金額と算定方法
  • 払込期日または期間
  • 増加する資本金及び資本準備金に関する事項

募集要項を定める際、公開会社の場合は取締役会の決議で、非公開会社の場合は株主総会の特別決議(※)で決定します。

なお出資の目的が金銭以外(例:不動産などの物品)である場合、別途提供する財産の具体的な内容と価値を明確に定める必要があります。

※ 非公開会社の場合は株主総会による委任がある場合を除く。

2. 投資家への通知

1で定めた募集事項を投資家へと通知します。取締役会によって募集事項を決定した場合、募集事項を払込期日の2週間前までに株主に通知するか、公告を行いましょう。

そして通知を受け取った投資家は、株を購入したい場合、「何株購入したいのか」もあわせて会社側へ申し込みを行います。

3. 募集株式の割当て・通知

2で投資家と希望する購入株数が集まった後、会社側は「誰に」「何株割り当てるか」を決定します。

割当ては会社側が自由に決められるものの、公開会社の場合は一般的に代表取締役が決定します。

非公開会社では、原則として取締役会の決議によって行われますが、定款に特別な規定があれば株主総会や代表取締役が決定することも可能です。

割当てが決まると、投資家へ払込期日の前日または払込期間の初日の前日までに割当株数を通知します。

4. 出資金の払込みと登記

投資家は1で定められた金額と払込期日に従って出資額を払い込み、その完了をもって株主となります。

なお、会社側は出資により「資本金」と「発行済株式総数」が変わるため、2つの変更を登記する必要があります。これらの手続きは、本店所在地を管轄する法務局で、払込期日から2週間以内に行わなければなりません。

以上の手続きで、株式発行による資金調達が正式に完了となります。

株式発行のメリット・デメリット

株式発行で資金を調達するメリットは以下が挙げられます。

  • 多額の資金を短期間で調達できる
  • 負債ではないため返済の必要がない
  • 財務基盤が強化される

株式発行の大きなメリットとして挙げられるのが、多額の資金を短期間で調達することが可能な点です。また株式発行は返済の必要がなく、金融機関からの借り入れ・利息に囚われずに自己資本を増やせるようになります。

このように財務基盤が強化され、キャッシュフローが安定し、資金ショート・倒産の可能性を大幅に減らせるようになる、といった点もメリットです。

一方でデメリットとして挙げられるのは以下の2点です。

  • 経営の自由度が低下する
  • 配当金の支払いが資金面の負担となり得る

出資した株主は企業の一部を保有することになるため、経営戦略・人事・配当策定などにおいて、株主の意向を反映することが求められるケースも多くあります。

また配当金もデメリットの1つです。返済の義務が無くとも、業績が良ければ株主に対して配当金を支払う必要があります。これらの配当金が資金面で負担となり、再投資などの機会が妨げられることもあります。

株式発行の注意点

株式発行の注意点について、以下の4つを把握しておきましょう。

  • 低価格での発行を避ける
  • 会社法に則って手続きを実施する
  • 募集事項に漏れがないかをしっかり確認する
  • 発行可能株式総数を超えないように注意する

株式の発行に際してまず重要な点が、低価格での発行を避けることです。

低価格で株式が発行されることによって、1株あたりの価値が薄くなり、既存株主に不利な状況が生まれてしまいます。価格の見極めと同時に、既存株主への事前説明や発行時期、条件を慎重に検討する必要があります。

また株式発行は会社法に則って手続きを実施する必要がある、という点にも注意しましょう。本記事でも解説した通り、株式発行前〜発行後に関して、会社側の行う手続きは多岐にわたります。その他にも金額やスケジュールなど、募集事項に漏れがないかの確認も必要です。

関連して発行可能株式総数を超えて株式を発行することはできません。発行可能株式総数は定款で定められており、新規で発行する場合は定款を変更する必要もあります。

確かに未公開会社で一般的な第三者割当増資であれば、自分で手続きを行うことも可能ですが、最初のうちは司法書士に依頼し、一緒に手続きを進めておくとミスがなくなるためおすすめです。

株式発行の仕組みへの理解を深めてビジネスの成功を

株式発行は会社の成長を加速させるための有力な手段であり、これから起業や上場を目指す方にとっては覚えておくべき知識の1つです。

しかし株式発行には資金調達・信用力向上・財務基盤強化といったメリットを得られる半面、社会的責任や株主に対する責任も増えます。

どのような方法・手段で株式発行を行うかによって、資金調達の成否だけでなく今後の会社の成長・発展にも大きく影響します。

そのため、慎重に精査を重ねて最適な選択を模索しましょう。

これから株式発行を検討している方は、ぜひ本記事を参考にして自社にとって最適な方法を検討して下さい。

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執筆

Startup JAM編集部

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