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SOCレポートとは?経営者や管理部門が知っておくべき目的や種類、注意点を解説

SOCレポートとは?経営者や管理部門が知っておくべき目的や種類、注意点を解説

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企業の信頼性と競争力を高めるためには、セキュリティや内部統制の証明が不可欠です。特に経営者や管理部門にとって「SOCレポート」は、ビジネスリスクを最小化し、企業価値を向上させる重要なツールです。

本記事では、経営者や管理部門が押さえておくべきSOCレポートの基本知識や種類ごとの特徴、注意点を解説します。

SOCレポートとは

SOCレポート(System and Organization Controls Report)は、企業が提供するサービスにおける内部統制の有効性を評価する報告書で、独立した監査人によって発行されます。このレポートは、米国公認会計士協会(AICPA)の基準に基づき、外部監査人がサービスプロセスの管理状況を検証した結果をまとめたものです。

その主な役割は、委託業務がコンプライアンスに準拠していることを確認する証明となることです。これにより、委託元企業は委託先の業務プロセスの適切な管理状況を把握でき、安心して業務を委託できる環境が整います。また、このレポートはサービス提供者の信頼性を裏付ける重要な証となるでしょう。受託業務における内部統制の有効性が保証されることは、取引先や関係者からの信頼獲得にもつながります。

SOCレポートは、一般的に第三者機関である監査法人や公認会計士により作成されるものです。これらの機関は、AICPAや国際監査・保証基準審議会(IAASB)、日本公認会計士協会(JICPA)が定める基準に従って監査を実施し、受託業務の内部統制の有効性を確認します。その結果、SOCレポートが発行され、受託業務が高い水準の内部統制を維持していることが保証されます。

SOCレポートが注目される背景

SOCレポートが近年注目を集める背景には、企業を取り巻く情報セキュリティリスクの増大と、クラウドサービスの普及が密接に関連しています。

従来、システム開発の信頼性を評価する指標として、CMMI(Capability Maturity Model Integration)が広く活用されてきました。CMMIは開発プロセスの成熟度をレベル1からレベル5までの段階で評価するものです。レベルが高いほど、開発の信頼性も高くなるという特徴があります。

しかし近年、多くの企業が業務システムをクラウドサービスへ移行する傾向にあります。これに伴い、情報セキュリティへの脅威も様相を変え、従来のオンプレミス環境とは異なるリスク管理が必要になりました。クラウド時代の主なセキュリティリスクとしては、アクセス経路の多様化、標的型攻撃の増加、クラウドサービスの脆弱性などが顕著です。

こうした状況下で、クラウドサービスのセキュリティ対策を評価する指標として、SOCレポートの重要性が高まっています。SOCレポートは、独立した第三者機関がセキュリティ対策、データ保護、運用体制などを厳格に評価する仕組みです。企業はこのレポートを参照することで、安心してクラウドサービスを利用できます。

また、企業のコンプライアンス意識の高まりやハイブリッドワークの普及も、SOCレポートの重要性を押し上げている要因です。従業員がオフィス、自宅、外出先など、様々な場所で働くハイブリッドワーク環境下では、セキュリティリスクも多様です。そのため、SOCレポートは多様な環境におけるセキュリティ対策を評価する重要な指標として注目を集めています。

SOCレポートの種類と特徴

SOCレポートは、その目的や対象範囲によって3つの種類に分類されます。それぞれのレポートの特徴を理解することで、自社のビジネスニーズに最適なレポートを選択することが可能になります。

SOC1レポート:財務報告の内部統制に焦点を当てたもの

SOC1レポートは、企業の財務報告に関わる内部統制システムの有効性を評価するものです。財務諸表の信頼性を担保するために、会計プロセスにおける内部統制が適切に設計・運用されているかを検証します。

メリット

財務報告の信頼性を向上させることができる。内部統制の強化を図ることができる。

デメリット

セキュリティやプライバシーに関する情報は限定的である。

押さえるべきポイント

  • 財務報告の信頼性向上:SOC1レポートは、財務報告の正確性と信頼性を高めるために重要な役割を果たします。
  • 内部統制の強化:レポートを通じて、内部統制の不備を特定し、改善を図ることができます。
  • コンプライアンス遵守:法令や規制に準拠した財務報告を行う上で、SOC1レポートは有効なツールとなります。

利用シーンとビジネス効果

  • 上場企業の財務報告
  • 投資家への情報開示
  • M&Aにおけるデューデリジェンス
  • 内部統制監査

SOC1レポートを取得することで、財務報告の信頼性を向上させ、企業の透明性を高めることができます。

SOC2レポート:セキュリティと信頼性に焦点を当てたもの

SOC2レポートは、企業の情報セキュリティ管理体制を評価するものです。顧客データの保護やシステムの可用性など、信頼性の高いサービス提供を目的としています。

メリット

セキュリティ対策やデータ保護への取り組みをアピールできる。顧客からの信頼獲得に繋がる。

デメリット

取得・維持のコストが高い。

トラストサービス原則と企業価値

SOC2レポートは、AICPAが定める5つの「トラストサービス原則」に基づいて評価を行います。

  1. セキュリティ:情報システムおよびデータへの不正アクセス、利用、開示、破壊、変更のリスクを防止
  2. 可用性:合意されたサービスレベルや要件に従って、情報システムが利用可能であることを保証
  3. 処理のインテグリティ:システムが完全かつ正確に処理を実行することを保証
  4. 機密保持:機密として分類された情報が保護されていることを保証
  5. プライバシー:個人情報が収集、利用、保持、開示、廃棄される方法が、組織のプライバシーに関する通知と整合していることを保証

これらの原則を満たすことで、企業は顧客からの信頼を獲得し、企業価値を高めることができます

顧客信頼性向上への寄与

SOC2レポートは、顧客に対してセキュリティ対策やデータ保護への取り組みを具体的に示すことができるため、顧客からの信頼獲得に大きく貢献します。

SOC3レポート:SOC 2レポートの簡易版、一般公開用

SOC3レポートは、SOC2レポートと同様の評価基準に基づく一般公開用の簡易版レポートです。期間の異なるレポート間の連続性を示すブリッジレターの発行にも対応しており、セキュリティ体制の透明性確保に役立ちます。

メリット

一般公開を目的としているため、マーケティングツールとして活用できる。SOC 2よりも取得しやすい。

デメリット

SOC 2に比べて情報量が少なく、簡易的な内容である。

ブランドイメージの向上

SOC3レポートを取得し、ウェブサイトなどに掲載することで、セキュリティ対策への取り組みを広くアピールすることができます。

マーケティング戦略への活用

SOC3レポートは、顧客からの信頼獲得と競合他社との差別化を図るマーケティングツールとしても有効です。

上具体的な活用方法として、以下が挙げられます

ウェブサイトでの公開

SOC3レポート取得をウェブサイトに掲載し、顧客や見込み客に対してセキュリティ対策への高い意識をアピールできます。

  • 例:「当社は、お客様のデータ保護を最優先に考えています。その証として、第三者機関による厳格な審査を経てSOC3レポートを取得しました。」

営業資料への掲載

営業資料にSOC3レポートの内容を含めることで、自社のセキュリティ体制の信頼性を効果的に伝えられます。

  • 例:「セキュリティ対策は万全ですか? 当社はSOC3を取得し、お客様のデータを確実に保護いたします。」

広報活動での活用

プレスリリースやニュースレターなどでSOC3レポート取得を公表し、メディアや業界関係者に自社のセキュリティ体制をアピールできます。

競合との差別化

競合他社がSOC3レポートを未取得の場合、セキュリティ面での優位性を示す差別化要因となります。

信頼性の確保

特に金融機関や医療機関など、セキュリティが重視される業界において、SOC3レポートの取得は顧客からの信頼獲得に大きく寄与します。

SOCレポートのType1とType2の違い

SOCレポートには、「Type1」と「Type2」の2種類があります。

Type2レポートは特定時点での評価となり、評価期間は定められていません。Type2レポートは通常6カ月以上の一定期間が評価対象となります。また、Type1レポートよりも、Type2レポートの信頼性が高いと考えられます。

Type2レポートは、実際の運用状況を評価するため、Type1レポートよりも詳細な情報を得ることができ、より高い信頼性を示すことができます

Type1レポートとType2レポートの使い分け

監査法人からSOCレポートの提出を求められる場合、Type1レポートで十分な場合と、Type2レポートが必要な場合があります。クラウドサービス提供事業者を選ぶ際には、どちらのタイプのレポートを提供できるかを確認しましょう。

サービスを導入する目的によっても、必要なレポートの種類が異なる場合があります。

例えば財務報告の信頼性を確認したい場合はType1レポートで十分ですが、セキュリティ対策の有効性を確認したい場合はType2レポートの方が適しています。

顧客との信頼関係を強化

Type1レポートは、内部統制の有効性を示すものであり、Type2レポートは、それに加えて運用の信頼性を証明するものです。

Type2レポートを取得することで、顧客との信頼関係を強化することができます。

ブリッジレターが必要な場合

ブリッジレター(期末評価書)は、SOCレポートの評価対象期間と利用会社の決算期末との間に生じる期間のずれを補完する文書です。ブリッジレターの作成はクラウドサービス運営会社が担当し、利用会社や監査法人へ提出する流れです。

SOCレポートは、クラウドサービスの内部統制が適切に運用されている状態を保証するもので、監査法人による監査を経て作成されます。ただし、SOCレポートの評価対象期間と利用会社の会計期間は必ずしも一致しないのが実状です。

具体例

例えばSOCレポートの評価対象期間が1月~12月、利用会社の会計期間が4月~翌年3月の場合、1月~3月分がSOCレポートの対象期間外となるケースが一般的です。

このような状況では、SOCレポートの評価対象期間終了後から利用会社の決算期末までの期間について、内部統制に重要な変更がない旨を表明するブリッジレターが不可欠です。

注意点

SOCレポートの評価対象期間と利用会社の会計期間の差異が大きい場合、ブリッジレターでの対応が困難なケースも想定されます。そうした際は、監査法人への事前相談が望ましいでしょう。

SOCレポートを取得・確認する目的

現代のビジネス環境において、企業はコア業務への集中を図るため、数多くの業務を外部へ委託する傾向にあります。一方で外部委託に伴う情報漏洩やセキュリティ侵害などのリスクも増大が顕著です。このような状況下で、委託先企業の内部統制の有効性を評価するSOCレポートはますます重要性を増しています

SOCレポートを取得・確認する主な目的は、以下の3点に集約できるでしょう。

サービスの信頼性確認 

委託先企業が提供するサービスについて、契約通りに安定して提供されているか、また期待される品質を満たしているかを確認することができます。これは、事業継続性やサービスの安定供給を確保する上で非常に重要な要素となります。

運営状況・リスク管理の把握 

委託先企業の内部統制体制やリスク管理体制について、客観的な評価が可能です。具体的な評価対象は、情報セキュリティ対策、データのバックアップ体制、災害対策などの適切な実施状況です。これにより、委託に伴うリスクの事前把握と適切な対策の立案が容易となります。

セキュリティリスクの評価 

サービス導入前に、委託先企業のセキュリティ対策や情報管理体制を評価することができます。SOCレポートによって委託先企業のセキュリティへの取り組みが可視化されるため、セキュリティリスクを具体的に把握し、自社のセキュリティ基準との適合性を確認することができます。

SOCレポートを確認するメリット

SOCレポートを確認することで、企業は以下のような様々なメリットを享受できます。

監査対応業務の負荷軽減 

SOCレポートは、監査法人による監査の際に、内部統制の有効性を証明する資料として活用することができます。そのため、監査に必要な情報を効率的に収集でき、監査対応の負担軽減につながります。

認識の齟齬防止 

委託先企業との契約内容や責任範囲、情報セキュリティ対策などを明確化することで、認識の食い違いやトラブルを未然に防ぐことができます。SOCレポートは、双方が同じ基準と期待に基づいてサービスを提供・利用するための共通認識を形成する役割を果たします。

セキュリティリスクの低減 

委託先企業のセキュリティ対策を事前に評価することで、情報漏洩やサイバー攻撃などのセキュリティリスクを低減することができます。SOCレポートを通じて、委託先企業のセキュリティ体制を客観的に評価し、潜在的なリスクを特定することが可能です。

信頼関係の構築 

委託先企業の信頼性を確認することで、長期的な信頼関係を構築することができます。SOCレポートは、委託先企業の透明性と説明責任を示す証となり、相互の信頼関係を深める基盤となります。

企業のブランドイメージ向上 

SOCレポートを取得していることは、企業の信頼性と透明性を高め、顧客や取引先からの信頼獲得につながります。これはひいては企業のブランドイメージ向上にも貢献します。

このように、SOCレポートは企業が外部委託を成功させるために不可欠なツールといえます。特にIPO準備中の企業にとって、内部統制の整備状況を客観的に示すSOCレポートの価値は極めて高いものです。

ただし、SOCレポートはあくまでもIPO実現に向けた手段の1つであり、本質的には確固たる事業基盤の構築が重要です。上場を目指す企業は、自社のビジネスモデルの確立を最優先としながら、SOCレポートの取得を含む様々な準備を計画的に進めることが賢明でしょう。


SOCレポートを効果的に活用するための注意点

SOCレポートは、外部委託先企業の内部統制を評価する上で重要な資料です。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、内容を正しく理解し、適切に活用することが不可欠です。以下に、SOCレポートを利用する際の主要な注意点をまとめました。

レポートの種類・タイプ・保証範囲の確認 

SOCレポートは、特定のサービスやシステムのみを対象に発行される場合があり、必ずしもすべての業務を網羅しているわけではありません。そのため、以下の点に注意が必要です。

  • 自社のニーズに合わせた適切な種類とタイプの選択
  • レポートに記載されている保証範囲の詳細な確認
  • 目的に応じた適切なレポートの選択(例:セキュリティ対策の重点的な確認にはSOC 2 Type 2が最適)

評価期間と更新頻度の確認 

Type 2レポートには評価期間が設定されています。以下の点を必ず確認してください。

  • レポートの発行時期と評価期間が自社の要件に合致しているか
  • 古いレポートではないか(現状を正確に反映していない可能性)
  • レポートの更新頻度(企業のセキュリティ対策や内部統制は常に変化するため) ※必要に応じて、最新版のレポートを入手することを推奨します。

総合的な判断の実施 

SOCレポートは内部統制の一側面を示すものにすぎません。サービス選定の際は、以下の要素も含めて総合的に判断することが重要です。

  • 企業の評判
  • 実績
  • 財務状況
  • サポート体制
  • その他の関連情報

レポート内容の徹底的な理解 

SOCレポートには専門的な用語や内容が含まれており、理解が困難な場合があります。以下の対応を推奨します。

  • 不明な点がある場合は、専門家への相談
  • レポート発行者への直接の問い合わせ
  • 例外事項や留意事項の丁寧な確認
  • 評価結果の正確な理解

これらの注意点を適切に踏まえることで、SOCレポートを効果的に活用し、外部委託に伴うリスクを軽減することができます。結果として、より安全で信頼性の高いサービスの選択が可能となります。

SOCレポートを活用し、信頼性と競争力を高める次のステップへ

SOCレポートの取得と活用は企業の信頼性向上だけでなく、競争力強化や新たなビジネスチャンスの創出につながります。ビジネス戦略に組み込むことで、企業価値を大きく高めることが可能です。ぜひ、本記事を参考にSOCレポートの導入を検討してみてください。

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Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

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