東京プロマーケット(TOKYO PRO Market)とは
まずは以下の項目に触れながら、東京プロマーケットがどういうものかを確認していきましょう。
- 東京プロマーケットとは
- 東京プロマーケットの成り立ち
- 東京プロマーケットとほかの株式市場との違い
- 東京プロマーケットにおけるJ-Adviserと特定投資家等
- 東京プロマーケットが生まれた背景
- 東京プロマーケットにおける上場社数の推移
- 東京プロマーケットで上場企業数が増えている理由
- 東京プロマーケットの上場企業
東京プロマーケットとは
東京プロマーケット(TOKYO PRO Market)は、東京証券取引所が運営する株式市場の一種です。具体的には、国内外のプロ投資家向け市場になります。TOKYO PRO Marketの頭文字をとり、「TPM」や「プロマーケット」と呼ばれることも多いです。
東京プロマーケットの成り立ち
東京プロマーケットの前身となる「TOKYO AIM取引所」は、ロンドン証券取引所のAIM市場をモデルとしています。TOKYO AIM取引所の開設は2009年6月です。ロンドン証券取引所と東京証券取引所の共同出資で開設されました。
2012年3月になると、TOKYO AIM取引所は、合弁解消によって東京証券取引所の完全子会社となります。そして同年7月の吸収によって、現在の東京プロマーケットに名称が変わることになりました。
東京プロマーケットとほかの株式市場との違い
東京プロマーケットの特徴は、東京証券取引所が運営する以下3つの他市場と比較することでよくわかります。
- プライム市場
- スタンダード市場
- グロース市場
東京証券取引所が公開する「2024 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編」では、TOKYO PRO Market の上場制度概要として以下の表が示されています。
引用:2024 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編 市場制度の概要(東京証券取引所)
東京プロマーケットと他市場との具体的な違いは、メリット・デメリットを紹介する章で詳しく解説しましょう。
東京プロマーケットにおけるJ-Adviserと特定投資家等
上記の表にも登場するJ-Adviserと特定投資家等は、東京プロマーケットの特徴を理解するうえで重要なキーワードです。簡単に解説しておきましょう。
J-Adviserとは
J-Adviserは東証が上場審査業務などを委託する制度および委託先企業のことです。
J-Adviserはロンドン証券取引所が運営するAIM市場のNominated Advisers(通称Nomads)制度を参考に設立されました。2008年の金融商品取引法改正によって可能になった制度になります。
J-Adviserの業務は、以下のようなものです。
- 上場又は上場廃止に関する基準又は上場適格性要件に適合するかどうかの調査
- 上場前の上場適格性の調査確認や上場後の適時開示の助言・指導
- 上場維持要件の適合状況の調査 など
特定投資家等とは
東京プロマーケットでは、直接買付けができる投資家を「プロ投資家(特定投資家及び非居住者)」に限定しています。
東京プロマーケットでは原則、一般投資家による直接注文は行えません。ただし何らかの事情で東京プロマーケットの上場株式を保有する一般投資家が、東京プロマーケットを通じて売却することは可能となります。
東京プロマーケットは、プロ投資家のみに限定することで、一般市場よりも柔軟な制度設計を実現した市場です。
上記の表には多くの注意点があります。詳細は東京証券取引所のホームページを参考にしてください。
東京プロマーケットが生まれた背景
東京証券取引所に従来からある一般市場には、幅広い人が利用できて資金調達がしやすい反面、資金調達よりも知名度向上を重視する企業にとっては、コストなどのデメリットが増大しやすい特徴がありました。
こうした課題を解消するために開設されたのが、東京プロマーケットです。
詳しいメリットは後ほど詳しく紹介しますが、東京証券取引所の公式サイトでは目的と背景などを以下のように解説しています。
当マーケットは、日本やアジアにおける成長力のある企業に新たな資金調達の場と他市場にはないメリットを提供すること、国内外のプロ投資家に新たな投資機会を提供すること、日本の金融市場の活性化ならびに国際化を図ることを目的とし、ロンドン証券取引所の運営するロンドンAIMにおけるNomad制度を参考として「J-Adviser 制度」を採用するなど、機動性・柔軟性に富む市場運営の実現を目指しており、2012年7月からはTOKYO PRO Marketとして、TOKYO AIMの市場コンセプトを継承し、東京証券取引所が市場運営を行っております。
引用:概要 (TOKYO PRO Market)(東京証券取引所)
東京プロマーケットにおける上場社数の推移
東京プロマーケットの上場会社数は、2024年11月14日時点で「126社」になりました。2024年1月31日は「93社」でしたから、年内の9.5ヵ月で33社も増えたことがわかります。
2022年末が「64社」だったことを鑑みると、近年における伸び率の著しさもイメージしやすいことでしょう。
東京プロマーケットで上場企業数が増えている理由
近年東京プロマーケットへの上場目的で特に増えているのが、グロース市場を中心とする一般市場に上場するためのファーストステップとして、東京プロマーケットを選んでいるというものです。
東京プロマーケットの場合、一般市場のような形式基準がなく上場時の資金調達も必須ではありません。そのため、まずは東京プロマーケットでの上場で自社の基盤固めをしながら、次の市場に移行する準備を進めるケースが多くなっています。
また近年の企業には、新卒採用の長期化・早期化・複雑化や、少子高齢化による労働人口減少などの要因から、自社の採用力を高める必要性が生じるようになりました。
こうした背景から、採用力向上に向けて自社の知名度・信用力を高めたい企業のなかで、上場への準備負担が少ない東京プロマーケットへの関心が高まるようになっています。
参考:TOKYO PRO Marketの概況と今後の課題(東京証券取引所/上場推進部長・荒井啓祐、上場推進部課長・滝口圭佑)
東京プロマーケットに上場する企業の傾向
東京プロマーケットで上場する企業の特徴は、東京証券取引所の上場推進部長・荒井啓祐氏と上場推進部課長の滝口圭佑氏による論文「TOKYO PRO Marketの概況と今後の課題」で以下のように紹介されています。
【業種】
- 上場企業の業種では、特定業種に分布の偏りが見られない
- いわゆるITベンチャー企業も分類される情報通信業・サービス業が約7割を占めるグロース市場とは特に対照的
【地域】
- 上場企業の約6割が東京以外の地域に分散
【業績】
- 売上高・経常利益・純資産額のいずれにおいても、スタンダート市場とグロース市場より低い
【株主数】
- 上場企業の約9割で株主50名以下
【社歴】
- 過半数が創業から15年以上で新規上場
- 新興ベンチャー以外の会社も相当数が上場
より詳しい情報や論拠となるデータに興味がある方は、以下の論文をチェックしてください。
参考:TOKYO PRO Marketの概況と今後の課題(東京証券取引所/上場推進部長・荒井啓祐、上場推進部課長・滝口圭佑)
東京プロマーケットの上場企業
東京プロマーケットの上場会社は、東京証券取引所の以下ページで確認可能です。一覧には近日中に上場予定の会社も含まれています。
参考:銘柄一覧 (TOKYO PRO Market)(東京証券取引所)
東京プロマーケットに上場するための基準・条件
東京プロマーケットの公式サイトや上場ガイドブックでは、上場適格性要件としてJ-Adviserによる調査・確認の主なポイントなどを公開しています。上場に必要となる5つのポイントを簡単に紹介しましょう。
- 市場評価を害さず、東証に相応しい会社であること
- 事業を公正かつ忠実に遂行していること
- コーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制が整備・機能していること
- 企業内容やリスク情報等の開示を適切に行っていること
- 反社会的勢力との関係を有しないこと
1.市場評価を害さず、東証に相応しい会社であること
上場申請時には、企業グループに対する必要なデュー・ディリジェンス(以下、「DD」)を通じて、以下の適切な調査や確認の実施をする必要があります。
新規上場申請者の企業グループの事業内容に関する事項(ビジネスモデル、事業環境、リスク要因等を含む。)
財務に関する事項及び法務に関する事項(設立準拠国及び営業活動国の法制度等事業運営に重大な影響を与える事項等を含む)等
引用:2024 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編 上場要件(東京証券取引所)
これは全要件に関係するポイントですが、上場の申請では、J-Adviser との契約内容や調査内容について、担当者が申請会社に説明できる状態であることも必要となります。
2.事業を公正かつ忠実に遂行していること
上場申請する企業グループが、いわゆるステークホルダーとの間で行われる取引行為やその他の経営活動のなかで不当な利益の供与や享受していないと認められることも必要です。
またこの項目では、新規上場申請をする会社の役員が、公正・忠実かつ十分な職務の執行を損なう状況でないと認められることも求められます。
東京プロマーケットで上場するうえでは、これらの項目をクリアし続けるために、経営者が主体的に関わる取引の状況把握や必要調査の実施なども行う必要があるでしょう。
参考:2024 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編 上場要件(東京証券取引所)
3.コーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制が整備・機能していること
公正かつ忠実な業務遂行をするためには、内部の管理体制やコーポレート・ガバナンスなどが整っていることも必要です。東京証券取引所では、以下のような項目について企業規模や成熟度に応じた整備が必要であるとしています。
- 役員が適正な職務執行を確保するための体制
- 適切な経営活動に相応しい内部管理体制
- 企業グループの実態に即した会計処理基準と適切な運用状況
- 経営活動やその他事項で法令等を遵守するための体制と適切な運用状況 など
参考:2024 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編 上場要件(東京証券取引所)
4.企業内容やリスク情報等の開示を適切に行っていること
新規上場するうえでは、企業経営に重大な影響を与える事実・情報などを適正に管理し、投資者に適時・適切に開示することができる状況が求められます。
また内部者取引の未然防止に向けた体制整備・運用のほかに特定証券情報等の適切な作成、リスク要因として考慮されるべき事項の記載なども必要です。
東京プロマーケットの上場ガイドブックには、特定証券情報等に確認・記載すべき事項について、かなり細かなポイントが紹介されています。
参考:2024 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編 上場要件(東京証券取引所)
5.反社会的勢力との関係を有しないこと
東京プロマーケットに上場するためには、反社会的勢力による経営活動の関与を防ぐような社内体制を整備したうえで、その防止策が公益性および投資者保護の観点から適当と認められることも必要です。
この項目にはJ-Adviserとの適切な連携を行なうために、申請者とJ-Adviserの間での報告・連絡・確認の体制および、それらの記録・保存が適切に行われる体制も求められています。
なお東京プロマーケットに上場するための基準には、以下のようにさまざまな注意点があります。
詳細は東京証券取引所の公式サイトに掲載されている「上場適格性要件」もしくは「上場ガイドブック」を参考にしてください。
東京プロマーケット特有の上場メリット
東京プロマーケットの上場には、一般市場にはない以下5つのメリットがあります。各ポイントを紹介しましょう。
- 上場の形式基準(数値基準)がない
- 上場の準備期間が短い
- 主体的な経営を続けやすい
- 一般市場へのステップアップで活用できる
- J-Adviserによる手厚い上場・経営サポートがある
上場の形式基準(数値基準)がない
東京プロマーケットには、一般市場では当たり前に存在する以下のような数値基準がありません。
- 株主数◯◯人以上
- 時価総額◯◯億円以上
- 単元株式数が◯◯株となる見込みがある
- ◯◯か年以前から株式会社として継続的に事業活動をしていること など
たとえば事業のスタートアップ期の場合、上記の数値要件をすべてクリアすることは、難しい場合も多いです。
その点について、東京プロマーケットであれば、たとえば「コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること」などの定性的要件での審査が中心となります。数値条件のクリアが難しい企業にとっては、ハードルが低く感じやすいかもしれません。
上場の準備期間が短い
東京証券取引所の一般市場の場合、以下の表が示す通り監査だけで2年かかります。その準備期間を含めると、上場の意思決定〜準備〜監査〜上場までに最短でも3年かかるのが一般的です。
一方で東京プロマーケットの場合、監査期間は1年です。その時点で適切な内部管理体制などが整備されていれば、2年程度で上場することが可能となります。
引用:2024 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編 市場制度の概要(東京証券取引所)
主体的な経営を続けやすい
一般市場の流通株式比率は、スタンダードとグロースが25%、プライムが35%です。
流通株式とは、上場有価証券のなかで大株主および役員等の所有する有価証券や上場会社が所有する自己株式など、その所有が固定的でほとんど流通可能性が認められない株式を除いたもののことを指します。
流通株式があまりに多い場合、固定株主が少ないことで経営の安定性を維持することが難しくなるでしょう。
東京プロマーケットの場合、流通株式比率の基準はありません。オーナーが実質100%を保有したままでの上場も可能となります。この特徴は、主体性な経営を続けるうえで大きな魅力になるでしょう。
一般市場へのステップアップで活用できる
近年では先述のとおり、一般市場に上場するためのファーストステップとして、東京プロマーケットを選ぶ企業も多くなりました。少ない負担で上場し、上場企業として社会の義務を果たしていくことは、一般市場で上場するまでの過程として大きなプラスになるでしょう。
参考:TOKYO PRO Marketの概況と今後の課題(東京証券取引所/上場推進部長・荒井啓祐、上場推進部課長・滝口圭佑)
J-Adviserによる手厚い上場・経営サポートがある
J-Adviserは、上場のプロフェショナルとして東京証券取引所から認定された企業でもあります。企業が東京プロマーケットへの上場を目指す場合、自社で選定したJ-Adviserとの契約が必要です。
東京プロマーケットにJ-Adviser制度がある理由は、この市場に一般市場のような厳しい数値基準などがないからです。
その代わりに東京証券取引所から委託されたJ-Adviserと二人三脚で上場を目指し、上場後も経営サポートなどを受けることで、上場企業は不確実性の高い時代のなかでも自社に合う方法で適切な成長を続けやすくなります。
東京プロマーケット特有の注意点とデメリット
東京プロマーケットへの上場に興味を持った場合、以下の注意点やデメリットを理解したうえで、自社に合う市場かどうかを見極める必要があります。
- 資金調達が難しい
- 投資家との関係構築に費用がかかる可能性がある
- 認知度アップの効果は限定的である
資金調達が難しい
東京プロマーケットは、プロ投資家に限定した市場です。投資家数も限られるため、一般市場と比べて柔軟かつスムーズな資金調達が難しい可能性があります。また一般投資家からのIPO・PO投資需要を集められないことから、調達額の規模も小さくなりがちです。
投資家との関係構築に費用がかかる可能性がある
東京プロマーケットで資金調達するためには、プロ投資家との関係を良好に保ち、積極的な投資を行ってもらうことが大切です。投資家とのこうした関係構築は、専門用語でIRと呼ばれます。
なおIRは一般市場でも必要なことです。
ただ東京プロマーケットの場合、投資家の範囲がかなり限られるため、限定的な層との適切なコミュニケーションや確実性の高い情報発信が必要となるでしょう。これはプロ投資家の満足度を向上する対策として、多くのコストがかかる可能性が高いことを意味します。
認知度アップの効果は限定的である
多くの投資家は、自分が投資できるからこそ特定の企業に関心を寄せるものです。その点について東京プロマーケットでは、投資できるのがプロ投資家に限定されます。
それはつまり、上場企業側で積極的な情報発信などをしなければ、自社の上場を認知する層もかなり狭まる可能性が高いということです。
東京プロマーケットはこんな企業におすすめ
ここまで紹介したメリット・デメリットから、東京プロマーケットは以下のような企業におすすめであると考えられます。
- 一般市場の数値基準に、自社ではクリアできない項目がある
- 手間・コストを抑えた上場を模索している
- 持ち株比率を減らしたくない
- 主体的な経営を続けていきたい
- 信頼性向上のために、早く上場したい
- 上場後も専門家のサポートを受け続けたい
東京プロマーケットの上場にかかる費用
東京プロマーケットに上場するためには、必要経費の準備も必要です。また、東京プロマーケットでも当然のことながら、上場後のコストもかかります。
ここでは、以下2つに含まれる主な費用項目支払先、一般的な相場を確認しましょう。
- 上場準備の費用
- 上場後の費用
上場準備の費用
東京プロマーケットに新規上場する場合、上場する会社の人件費以外で必要となる費用は大きく以下の2つに分けられます。
- 東証以外の事業者などに支払う料金
- 東京証券取引所に支払う料金
まず「1.東証以外の事業者」に支払う料金には、以下のようなものがあります。
①支払先:J-Adviser 【必須】
支払い項目
- 上場までの準備指導
- 上場審査
- 上場できた場合の成功報酬
②支払先:監査法人 【必須】
支払い項目
- ショートレビュー
- 監査報酬
③支払先:株式事務代行機関【必須】
支払い項目
- 株主名簿の作成・管理
- 株主総会を招集するための通知作成・発送
- 議決権や配当などの各種権利処理
④支払先:印刷会社【必須】
支払い項目
- 発行者情報の作成サポート
- IR情報の作成、開示サポート
- 印刷費用
⑤支払先:証券会社【ファイナンスを行う場合】
支払い項目
- 売出しや公募で資金調達をする際の費用
2.の東京証券取引所に対しては、以下のように新規上場料および新株発行等に係る料金を支払う必要があります。表内の各項目には、いくつかの注意点があります。詳細は、2024 上場ガイドブックを確認してください。
引用:2024 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編 Ⅴ 上場に伴う費用(東京証券取引所)
上場までの準備期間に必要なコストの総額は、上場を目指す会社の規模や準備期間の長さなどで変わります。
一般的な相場でいえば、一般市場への上場が「1〜2億円程度」であるのに対して、東京プロマーケットの場合は「2,000~4,000万円程度」になることが多いようです。
上場後にかかる費用
東京プロマーケットでの上場後にかかる費用も、以下の大きく2つに分けられます。
- 東証以外の事業者などに支払う料金
- 東京証券取引所に支払う料金
1.の支払先は、上場準備のところで紹介したものとほぼ同じです。ただしたとえばJ-Adviserのところに書かれていた「上場までの準備指導、審査、成功報酬」が、上場後の業務である「モニタリング」に代わるイメージになります。
次に東京プロマーケットの上場企業が2.の東京証券取引所に支払う料金は、大きく分けて以下の3つです。
- 年間上場料
- 上場後の新株発行等に伴う料金
- 会社又は事業等の取得等を目的とした新株発行等に伴う料金
2024 上場ガイドブックでは、上記の1〜3の情報を見やすい表形式で公開中です。ポイントを簡単に見ていきましょう。
【①年間上場料】
東京プロマーケットでの上場後は、以下の表で定める金額に12 万円(TDnet 利用料)を加算した金額を年間上場料として支払う必要があります。
引用:2024 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編 Ⅴ 上場に伴う費用(東京証券取引所)
【②上場後の新株発行等に伴う料金】
東京プロマーケットでの上場後に新株発行などをする場合、以下の料金が求められます。
引用:2024 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編 Ⅴ 上場に伴う費用(東京証券取引所)
【③会社または事業等の取得等を目的とした新株発行等に伴う料金】
東京プロマーケットの上場企業が会社または事業等の取得等を目的とする新株発行等をする場合、以下の料金が必要です。具体的には、株式交換や合併等に伴う新株発行などのケースが想定されます。
引用:2024 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編 Ⅴ 上場に伴う費用(東京証券取引所)
上場を維持するために必要な総額は、一般市場が「年間4,000〜6,000万円程度」であるのに対して、東京プロマーケットでは「年間1,500〜2,500万円程度」とされています。ただしこれらの数字には、社内担当者などの人件費は含まれません。注意しましょう。
東京プロマーケットの上場スケジュール
東京プロマーケットに上場するまでの各種手続きや審査は、主に以下の3つの期間のなかで進められていきます。
- 【前々期(n-2(直前々期))】上場の検討・準備期間
- 【前期(n-1(直前期))】J-Adviserのもとで本格的な上場準備をする期間
- 【申請期(n)】J-Adviserによる上場適格性調査~意向表明~上場
前期が「1年」、申請期が「1年」で、監査開始〜上場までが「2年」のイメージです。ただ監査開始前の前々期でも「1年ほど」かけて監査の準備を進めていくのが一般的となります。
なお各期の呼称などは、上記の括弧内にあるように各J-Adviserごとに異なる書き方をしていることが多いです。具体的な期間や流れも、上場申請をする企業の現状や準備の進捗で変わる部分もあるでしょう。詳細は自社が契約をするJ-Adviserに直接確認してください。
ここでは前々期〜前期〜上場までに必要となる一般的な準備・手続きと、主なスケジュールを確認していきます。
①前々期(上場の検討・準備期間)
東京プロマーケットに上場するためには、J-Adviserおよび監査法人の選定・契約が必要です。前々期は、これらの契約締結前にショートレビューを行うケースが一般的となります。
ショートレビューは、上場に向けた現状分析と課題把握のために行うものです。必須ではありませんが、監査法人との契約を各自に締結するうえでは、ショートレビューを受けておいたほうがよいでしょう。
ショートレビューで指摘された課題を数カ月かけて解消することで、その後の上場準備が進めやすくなります。J-Adviserとの契約は、前々期末〜前期の第1四半期の間に締結されることが多いです。
②前期(J-Adviserのもとで本格的な上場準備をする期間)
J-Adviserとの契約締結を終えたら、J-Adviserのサポートを受けながら、東京プロマーケットの基準に合わせる形で以下の体制構築・整備などを進めていきます。
- 内部管理体制
- 決算・開示体制
- 予算・利益管理体制
- コンプライアンス体制 など
J-Adviserがこの時期に行う支援には、以下のようなものがあります。
- 上場前における上場適格性の調査・確認
- 社内体制整備の構築支援
- 上場後における適時開示の指導・助言
- 上場維持要件が適合しているかどうかの調査
- 開示書類作成の支援 など
この時期の監査法人は、前期の期間を対象とする財務諸表などの年度監査を実施し、監査意見を表明する役割を担います。
③申請期(J-Adviserによる上場適格性調査~意向表明~上場)
申請期に最初に行われるのが、J-Adviserによる上場適格性の調査と確認です。
この時期の上場申請企業では、J-Adviserのサポートを受けながら申請に必要な書類の用意を進めます。上場適格性の調査が完了すると、希望の上場スケジュールを記載した意向証明書がJ-Adviserから東京証券取引所に提出される流れです。
意向表明後の面談は、J-Adviserと東京証券取引所の審査担当者の間で実施されます。
そこでJ-Adviserによる上場適格性の調査・確認が適切と認められた場合、J-Adviserによる有価証券新規上場申請書の提出を通じて上場申請される流れです。
流動性プロバイダーと呼ばれる証券会社の選定も、この時期に進められます。
上場申請から10日以内に東京証券取引所による上場承認が実施され、上場契約を経て上場日決定です。
なお東京証券取引所の「2024 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編」では、意向表明~上場までの流れと期間が以下の図で示されています。
引用:2024 上場ガイドブック TOKYO PRO Market編(東京証券取引所)
東京プロマーケットの上場維持に必要なこと
J-Adviserでは、東京プロマーケットの上場企業が上場会社としての義務を適切に履行しているかどうかの調査・確認・助言・指導を、上場後も引き続き行います。
仮に上場企業に対して「上場会社としての義務を履行できない」という判断になった場合、J-Adviser契約が解除され、上場廃止になる場合もあるので注意が必要です。
J-Adviserとの良好な関係や東京プロマーケットでの上場を維持するためには、状況に応じて自社の体制などを適切な形に整備しながら、J-Adviserに対して以下の重要事項の適時開示を続ける必要があります。
- 決算短信
- 業績予想の修正
- 増資、設備投資
- 代表者の交代
- 主要株主の異動
- 特定証券情報/発行者情報 など
東京プロマーケットについて解説しました
東京プロマーケットは、自社の信頼性向上などを目的に早く低コストで上場したい企業におすすめの選択肢です。近年では、一般市場へのステップアップのために東京プロマーケットに注目する企業も多くなりました。
ただし東京プロマーケットには、プロ投資家に特化した市場ならではの注意点やデメリットもあります。また一般市場と比べて、早く上場できる特徴があるものの、前々期のショートレビューなども入れると上場までに3年近くの時間が必要になるケースも多いです。
東京プロマーケットへの上場を予定する場合は、記事で紹介したポイントを理解したうえで、早めに意思決定などの行動を起こしてみてください。