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上場しないメリットは4つ!上場すべきかどうかの判断基準も解説

上場しないメリットは4つ!上場すべきかどうかの判断基準も解説

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上場するか、あえて非上場を選ぶかは、企業の将来を左右する重要な判断です。非上場のままでいることには「コストの削減」「経営の独立性の確保」などのメリットがある一方で、上場には「資金調達力の向上」や「社会的信用の確保」といったメリットがあります。

本記事では、上場しないことのメリットとデメリットを4つずつ紹介するとともに、上場の是非を判断するためのポイントを解説します。

上場企業と非上場企業の割合

日本取引所グループによると、2024年11月14日時点の上場企業の数は下記のとおりです。

  • プライム:1,642 (1)
  • スタンダード:1,593 (2)
  • グロース:596 (3)
  • TOKYO PRO Market:126 (0)
  • 合計3,957 (6)

※()内は外国会社

出典:日本取引所グループ「上場会社数・上場株式数」

総務省統計局によると、日本の企業数は2021年時点で約368万社のため、上場企業の割合は約0.1%です。99.9%が非上場企業であることから、割合で見るとほとんどの企業は上場していないと言えるでしょう。

上場していない企業とは

非上場企業とは、証券取引所に株式を公開していない企業のことです。もともと上場していない企業のほか、過去に上場していたものの上場を廃止した企業も含まれます。

一方で上場企業は自社株を証券取引所に公開し、売買取引を行う企業のことです。

非上場企業の株式は購入できるものの、役員や関係者が所有している割合が高く、一般投資家が取引する機会は限られています。

だからといって、非上場企業の信用度が上場企業より低いとは一概には言えません。非上場であることを事業戦略や経営方針として実践している場合もあります。

ユニコーン企業とは

ユニコーン企業とは、以下の4つの要件を満たす非上場のベンチャー企業のことです。

  • 創業10年以内
  • 評価額が10億ドル以上(約1,500億円以上)
  • 未上場
  • テクノロジー企業

このように設立から間もないにもかかわらず、急成長を遂げ高い企業価値を有する企業を指します。

ユニコーン企業の呼称はギリシア神話に登場する一角獣「ユニコーン」に由来しており、希少性や特別な存在であることをイメージさせます。このように、上場できる条件を満たしているにもかかわらず、あえて上場しないメリットを活かして急成長を遂げる企業は少なくありません。

上場しないメリット4つ

あえて上場しないことには、下記4つのメリットがあります。

  • 社外の人物の影響を受けにくい
  • 買収リスクが少ない
  • 報告書の作成・提出などのコストと手間が少ない
  • 上場に関するコストがかからない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

社外の人物の影響を受けにくい

非上場企業が上場を選ばない理由の1つに、「経営の自由度の高さ」が挙げられます。上場企業では、株主が企業経営に大きな影響を与えるため、経営者には厳しい説明責任が課されます。

たとえば、利益が減少した場合には決算内容について株主から厳しい追及を受け、場合によっては経営陣の刷新や社長交代を要求されるケースは少なくありません。

さらに株主の中には経営方針にまで意見を述べ、経営者に具体的な施策の変更を求める人物もいます。その結果、経営者が理想とする事業戦略や経営方針を立てられなくなる場合があります。

一方で非上場企業は役員や利害関係者が株式を持つため、経営方針や決算内容について干渉される機会が少なく、圧力や責任追及を受けることがほとんどありません。経営者は自由度の高い環境で意思決定を行えます。

買収リスクが少ない

上場企業では、自社の株式が証券取引所で自由に売買され、誰でも株式の取得が可能です。そのため、不特定多数の第三者が株式を大量に買い集め、経営権を奪取するリスクがあります。

企業が望まない形で他の投資家や企業に株式を買い集められ、経営権を奪われることを「敵対的買収(TOB:Take Over Bid)」といいます。

上場企業はこのようなリスクに対抗するため、自社株の買い戻しや防衛策を講じなければなりません。しかし防衛策が奏功しない場合、最終的に企業が買収されてしまいます。

一方で非上場企業の株式は市場で自由に取引されておらず、売買には取締役会の承認が必要です。このため、外部の第三者が勝手に株式を買い占めて経営権を奪取されるリスクがほとんどありません。

報告書の作成・提出などのコストと手間が少ない

非上場企業は、上場企業と比較して書類作成にかかるコストを抑えられます。上場企業は、金融商品取引法の規定に基づき、財務計算書類、内部統制報告書、有価証券報告書などを決算後に作成・提出する必要があります。

また決算後45日以内に決算短信を公表するために、専門知識を有する人材や外部の専門家への依頼が必要です。

さらに上場企業は多数の株主を抱えており、株主総会の招集通知を作成・発送するだけでも相当な経費がかかります。加えて株主総会の準備自体が大規模であるため、経営者には多大な労力と精神的な負担がかかるでしょう。

一方非上場企業はこれらの義務が大幅に緩和されており、有価証券報告書や決算短信の提出義務がない場合が多く、専門家への依頼や社内リソースの負担を抑えられます。株主の数も少ないため、株主総会の準備にも大きな労力がかかりません。

上場に関するコストがかからない

上場企業は上場前と上場時に加え、上場後も多くの費用が発生します。主な費用と目安は下記のとおりです。

【上場前の段階】

費用の目安:2,000万円以上

主な費用項目

  • 監査法人への支払い
  • 証券会社への支払い
  • 株式事務代行機関への支払い
  • 証券印刷会社への支払い
  • コンサルティング会社への支払い(必要に応じて)
  • 内部管理体制拡充のための人件費

【上場時の段階】

費用の目安:約500万円

主な費用項目

  • 上場審査料
  • 登録免許税
  • 証券会社への成功報酬

【上場後の段階】

費用の目安:年間2,000万円以上

主な費用項目

  • 年間上場料
  • 監査法人への支払い
  • 株式事務代行機関への支払い
  • 証券印刷会社への支払い
  • 株主総会の運営費用
  • その他

【追加コスト】

費用の目安:株主数や企業規模で大きく異なる

主な費用項目

  • 決算後に必要な有価証券報告書など金融商品取引法に基づく書類の作成・提出にかかる費用


非上場企業は上場に関する費用がかからないため、資金を事業拡大や経営資源の充実化に回すことができます。

上場しないデメリット4つ

上場しないことには、下記のデメリットがあります。

  • 資金調達が難しい
  • 社会的信用度が高まりにくい
  • ブランド力や認知度が低くなりがち
  • 透明性が確保されていない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

資金調達が難しい

上場企業は、株式が市場で不特定多数の市場参加者に購入されるため、株式の購入先を探す必要がありません。したがって、効率的に多額の資金を調達できます。

一方非上場企業は、株式発行で資金調達を行う際には自ら投資家を探す必要があり、スピードで上場企業に劣ります。また上場企業のように市場で公開されている株価が存在しないため、非上場企業の株価は購入者による企業評価で決まることにも注意が必要です。

想定よりも資金が集まらず、事業拡大や新規プロジェクトの実現に影響を及ぼす可能性があります。

社会的信用度が高まりにくい

企業が上場するためには、証券取引所の厳しい審査を通過する必要があります。審査では、特に管理体制が整備されているかや、適切な管理ができているかなどが注目されます。

管理体制が構築されていない企業は上場審査に通過できないため、上場企業は信頼性が高いと見なされることが一般的です。

一方で非上場企業は、管理体制や経営状況などについて審査を受ける必要がありません。その結果、管理体制の充実度が外部からは不透明になりがちです。このため、社会的な信頼や評価については上場企業に劣る傾向があります。

非上場企業でも管理体制の強化に取り組むことは可能ですが、上場企業ほど厳格に求められているわけではないので、競争の場では差が生じるのが現実です。

ブランド力や認知度が低くなりがち

上場企業は投資家をはじめ、多くの市場参加者の目に触れるため、自然と企業名やブランドが広く認知されます。企業イメージやブランド力が高まりやすく、消費者や取引先からの信頼を獲得しやすいでしょう。

一方非上場企業は露出が限られるため、ブランドや企業名を認知してもらうように独自の取り組みが必要です。ブランド力や認知力の向上には時間やコストがかかる場合が多いうえに、上場企業と比較してリソースに制約があります。

透明性が確保されていない

上場企業には財務諸表や事業報告を定期的に公開する法的義務があるため、投資家や取引先からの信頼を得やすい傾向があります。事業活動の透明性が高く評価され、資金調達やビジネスパートナーとの関係構築において有利な立場を築きやすいでしょう。

一方で非上場企業は法的に情報公開を義務付けられていないため、財務状況や経営の透明性について外部から評価されにくい傾向があります。その結果、取引先や金融機関との交渉において情報不足から不信感を抱かれることも少なくありません。

また透明性の欠如はガバナンスの質に対する疑念を招き、長期的な信頼関係の構築において障害となる場合があります。

上場した方がいいケース

上場しないメリットとデメリットを踏まえると、下記のような企業は上場した方がよいでしょう。

  • 大規模な資金調達が必要な企業
  • ブランド力や認知度が大きく影響する企業
  • 株式公開を通じた人材確保を狙う企業

それぞれ詳しく見ていきましょう。

大規模な資金調達が必要な企業

上場すると株式発行によって幅広い投資家から多額の資金を調達できます。そのため大規模な設備投資や研究開発、新規事業拡大が可能になります。たとえば、製造業で新工場建設やIT企業の技術革新に必要な資金の確保が可能です。

ブランド力や認知度が大きく影響する企業

上場することで消費者や市場関係者からの認知度が向上します。そのためブランド価値の向上や競合との差別化につながります。食品、小売、アパレルなど消費者向けの商品やサービスを提供する企業(食品、小売、アパレルなど)は、特に上場によるブランド力や認知度の向上の効果が顕著です。

また上場を機に株主優待制度を導入することで、ますます消費者からの認知度が高まるでしょう。

株式公開を通じた人材確保を狙う企業

上場企業は安定性が高いイメージがあるため、人材を確保しやすい傾向があります。

特に成長を続ける業界で上場した企業は、優秀な人材にとって魅力的です。上場を機に人材不足が解消すれば、ますます成長を加速できるでしょう。

上場しない方がいいケース

次のような企業は上場しない方がよいでしょう。

  • 経営の独立性を重視する企業
  • 情報公開の負担を避けたい企業
  • 資金調達の必要性が低い企業
  • ブランド力や認知度が既に高い企業
  • 上場コストを負担できない企業

それぞれ詳しく見ていきましょう。

経営の独立性を重視する企業

上場すると外部株主が経営に関与し、企業の意思決定に影響を与える可能性があります。非上場であれば、経営者が独自の判断で柔軟かつ迅速に決断を下すことができます。家族経営や創業者のビジョンを重視する企業は上場しない方がよいでしょう。

情報公開の負担を避けたい企業

上場企業には財務諸表や経営戦略の詳細を公開する義務があります。企業の経営状況がわかる資料は、競合他社が戦略を検討する際の参考資料になるため、アドバンテージを与えることになりかねません。

さらに情報開示にはコストがかかります。このように、経営リスクやコストの負担を避けたい企業には上場は向かないでしょう。

資金調達の必要性が低い企業

内部留保や銀行借入、ベンチャーキャピタルからの出資などで十分に資金を確保できる場合、上場によるメリットは小さくなります。また安定した収益モデルを持つ企業は、上場の必要性が低いでしょう。たとえば地元住民を顧客として、継続的に収益を得られる地域密着型の中小企業が該当します。

ブランド力や認知度が既に高い企業

市場で十分な認知度を持ち、ブランドが確立されている場合、上場によるメリットは限定的です。たとえば地域密着型の高い顧客ロイヤルティを持つ企業や、業界内で強い地位を築いている企業などは、上場しなくても競争力を維持できます。

有名な非上場企業

下記は、日本国内で上場していない有名企業とその業種です。

  • サントリーホールディングス株式会社(食品業
  • 株式会社ジャパネットホールディングス(通販業
  • 株式会社竹中工務店(建設業
  • YKK株式会社(製造業(建材)
  • 株式会社ロッテホールディングス(食品業
  • 株式会社小学館(出版業

日本国内には、非上場でありながら高い知名度と実績を誇る企業が多数存在します。それぞれが業界内で独自のポジションを築き、非上場であることのメリットを活かした経営を行っています。

海外の非上場企業としては、ボッシュが代表的です。株式の約9割を議決権のない形で「公益財団ロバート・ボッシュ財団」が保有し、経営の監視と監督を行う「ロバート・ボッシュ工業信託合資会社」が1%の株式を保有しながらも93%の議決権を持っています。

また、世界にはボッシュのほかにも非上場でありながら高い知名度と影響力を持つ企業が存在します。たとえば、家具業界の巨人イケア、ダイヤモンド採掘で知られるデビアス、高級腕時計ブランドのロレックス、玩具メーカーとして世界的な人気を誇るレゴなどです。

上場しないメリット・デメリットを踏まえて判断しよう

上場には「資金調達力の向上」「ブランド力の向上」といった魅力的なメリットがある一方で、多額のコストや経営の独立性を失うリスクが伴います。非上場であれば経営の自由度を保ちながら、コストを抑えつつ事業に集中することが可能です。

どちらが適しているかは、企業の成長段階、資金調達の必要性、経営者のビジョンによって異なります。上場のメリット・デメリットを踏まえ、自社の目指す方向性や現状を冷静に分析することで、最適な選択が見えてくるでしょう。

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Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

Startup JAM編集

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