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新株予約権とは?種類や発行方法、メリット・デメリット、会計処理を解説!

新株予約権とは?種類や発行方法、メリット・デメリット、会計処理を解説!

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新株予約権は、あらかじめ定められた価格で会社の株式を取得できる権利です。取得側にも発行側にもメリットのある制度で、人材確保や資金調達の重要なツールとしても活用されています。

一方で既存株主にとってはデメリットもある制度です。新株予約権の発行には、取締役会や株主総会での決議が必要になります。

今回は新株予約権の種類や活用方法、発行方法などを解説します。会計処理の方法も併せてまとめました。新株予約権の基本知識を押さえ、企業成長に役立てましょう。

新株予約権とは

新株予約権とは、発行した株式会社に対して権利を行使することで、株式の交付を受けることができる権利のことです。新株予約権の所有者は新株予約権を行使することで、会社に新株を発行させたり、会社が保有する株式を取得したりすることができます。

あくまでも「権利」なので、利益がでないときは株を取得しなくてもかまいません。通常の株取得と比べ、投資リスクが低いのが特徴です。

まずは新株予約権の概要や、活用方法を見ていきましょう。

新株予約権付社債とは

新株予約権付社債は通常の社債に新株予約権を付与した、複合的な金融商品です。社債権者は満期までの期間中、あらかじめ定められた価格で株式に転換する権利を持ちます。

発行企業は通常の社債より低い金利で資金調達が可能で、投資家にとっては、株価上昇時の利益を享受できる魅力があります。

新株予約権の活用方法

新株予約権は、主に以下のように活用されます。

  • インセンティブ報酬
  • 資金調達方法
  • 買収防衛策

新株予約権は取得者にとってもメリットの大きい仕組みです。価格があらかじめ決められているので、株価が上昇したタイミングで確実に利益を得られます。株価が上昇しなければ権利を行使する必要はありません。ただし期限が切れると、権利は失効します。

企業側にとっては、新株予約権をインセンティブ報酬として活用することで、従業員や役員に会社の成長への貢献意欲を高められるのが利点です。

また資金調達手段とした活用では、企業は発行時、引受人からのオプション料を得ることができます。さらに権利が行使されれば、事前に定められた額の行使価格が得られます。新株予約権は投資家にとっても魅力的な投資手段なので、売買の双方に利益がある資金調達のひとつです。

さらに敵対的買収に対する防衛手段としても機能します。買収者に不利な条件での新株予約権の無償割当てを行うことで、相手の持ち株比率を下げることができるからです。

対内的にも対外的にも、新株予約権の発行は利点の多い仕組みなのです。

新株予約権の種類

新株予約権には発行先や発行目的に応じていくつかの種類があります。ここでは「ストックオプション」「社外向け発行」「有利発行」「自己新株予約権」の5種類について説明していきます。 

 ストックオプション(社内向け)

ストックオプションは従業員や役員に対して付与される新株予約権です。会社の成長に連動した経済的利益を提供することで、人材の採用と定着を促進する効果があります。行使価額は通常、付与時の株価を基準に設定され、その後の株価上昇分が従業員の利益となります。権利の行使条件として、企業に継続して在籍することが求められることもあります。

社外向け発行

社外向け発行は、投資家や金融機関に対して発行される新株予約権です。投資家は株価が行使価額を上回った時点で権利を行使し、差額の利益を得る仕組みです。将来の株式発行を前提とした資金調達手段として活用され、発行時点での株式の希薄化を避けられる利点があります。

無償割当

新株予約権には既存株主に対して無償で配布される「無償割当」があります。既存株主に対し、持株数に応じて新株予約権を無償で配布する方法です。

無償割当には非上場型新株予約権の無償割当と上場型新株予約権の無償割当(ライツ・オファリング)の2つがあります。非上場型新株予約権の無償割当では、株を市場で取引することができません。一方上場型新株予約権の無償割当は、市場での取引も可能です。新株予約権者は新株予約権を売却することができます。

有利発行

有利発行は特定の相手に対し、その時点の公正な価額より有利な価額で新株予約権を発行する方法です。

有利発行を採用する場合は、株主総会の特別決議が必要になります。これは既存株主の利益を保護するための法的要件です。主に重要な事業提携先や戦略的投資家への割当てなど、会社にとって特別な意義がある場合に採用されます。

自己新株予約権

自己新株予約権は会社が自ら発行した新株予約権を取得して保有する形態です。主に従業員の退職時にストックオプションを買い戻す場合や、経営環境の変化により不要となった新株予約権を消却する場合に用いられます。登記手続きの負担軽減等がメリットです。

なお自己新株予約権の取得には法律上の規定がありません。新株予約権者との合意が得られれば、自由に自己新株予約権を取得できます。

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新株予約権の発行方法

社外向けの新株予約権の発行方法には、募集新株予約権や新株予約権無償割当てなどがあります。それぞれの特徴は以下のとおりです。

募集新株予約権の発行

募集新株予約権は通常の新株発行と同様、会社が特定の対象者または不特定の第三者に発行されます。その時の発行方法は以下の3つです。

  • 株主割当増資
  • 第三者割当増資
  • 公募増資

注意点として、既存の株主に不利益とならないよう、発行にあたっては取締役会等で募集要項を決定する必要があります。

以下の記事では、公募増資や第三者割当増資について詳しく解説しています。ぜひ併せて確認してみてください。

<関連記事>

公募増資とは?メリット・デメリット・実施する流れをわかりやすく解説

第三者割当増資とは?株価は下がる?メリット・デメリットや手続きの手順をわかりやすく解説

新株予約権無償割当て

既存の株主に対し、持株数に応じて新株予約権を無償で割り当てる方法です。株主の権利を平等に保護しながら、将来の資金調達や買収防衛策として活用されます。

無償割当ての実施には、原則として取締役会や株主総会での決議が必要です。特に買収防衛策として用いる場合は、発動条件や対抗措置の内容を明確に定め、株主や投資家への十分な説明が必要になります。

新株予約権の行使と譲渡

新株予約権の行使

新株予約権の行使は、権利者が定められた期間内に行使価額を支払い、株式への転換を請求することで実行されます。いつ行使しても、株の価額は発行時に設定された金額から変わりません。通常は将来の株価上昇を見込んで、現在の株価を基準に決定されます。差額が利益となるからです。

なお行使条件には、業績目標の達成や一定期間の勤務継続など、会社の目的に応じた要件が含まれることがあります。特に買収を防止する目的で活用されるときには、行使条件に注意が必要です。

新株予約権の譲渡

新株予約権は、原則として自由に譲渡できます。とはいえ多くの場合、新株予約権には譲渡の際の条件が付与されています。会社の意図しない権利の移転を防ぎ、安定的な株主構成を維持するためです。

特にストックオプションの場合、従業員の退職時の扱いなど、詳細な規定が設けられます。譲渡に制限のある「譲渡制限新株予約権」の場合、譲渡の承認は取締役会や株主総会で決定されます。場合によっては最後まで譲渡できないこともありますので、注意しましょう。

新株予約権を発行するメリット・デメリット

新株予約権の発行には、メリットとデメリットがあります。発行する企業側と取得する側の両方に関わる問題ですので、事前によく確認し、検討を重ねましょう。

新株予約権を発行する主なメリットとデメリットをまとめました。

新株予約権のメリット

新株予約権発行の主なメリットは、以下のとおりです。

発行する企業側のメリット

  • インセンティブの付与
  • 資金調達
  • 買収防止

取得側のメリット

  • 投資リスクの低下

インセンティブとしての活用は、新株予約権を発行する企業にとって大きなメリットです。従業員や役員に付与することで、企業価値向上への動機付けと人材の定着を図ることができます。

また新株予約権の発行は資金調達の手段としても有効です。投資家にとっても利益のある株売買で、企業運営に必要な資金を調達できます。さらに買収防衛策として、企業価値の保護にもつながります。

取得側のメリットは、投資リスクの低減です。新株予約権は株価が上昇した場合のみ権利行使すればよく、下落時のリスクを抑えることができます。特に投資家にとっては、株価の上昇局面で利益を得られる機会を確保しつつ、下落リスクを限定的にとどめることができる魅力的な投資手段となります。

新株予約権のデメリット

新株予約権発行の主なデメリットは、以下のとおりです。

発行する企業側のデメリット

  • 権利が行使されなければ、予定通りの資金調達ができない

取得側のデメリット

  • オプション料を負担しなければならない
  • 既存株主
  • 持ち株比率が低下する

新株予約権の特徴は、権利を行使しなくともよいところにあります。権利が行使されなければ、資金の調達は行えません。資金調達手段として不確実な部分があるのが、企業側のデメリットのひとつです。

また権利行使の時期が権利者の判断に委ねられるため、資金調達の時期を企業側でコントロールするのが難しいという課題もあります。

取得側にとっては、オプション料の負担がデメリットとなりえます。新株予約権の取得時に支払うオプション料は、株価が行使価額を下回って推移した場合、回収できない費用です。権利行使時には別途、行使価額の支払いが必要となります。

さらに新株予約権を発行した場合、大きな影響を受ける可能性があるのが既存株主です。新株予約権が行使されると株式が新たに発行されるため、持株比率が低下します。これは議決権の希薄化だけでなく、1株当たりの価値の低下にもつながる可能性があります。

特に大量の新株予約権が発行される場合、既存株主の利益が大きく損なわれる可能性があることに注意が必要です。

新株予約権の会計処理

新株予約権の会計処理は、企業の財務状態に重要な影響を与えます。適切な会計処理を行いましょう。

ここでは新株予約権を発行した場合と取得した場合、それぞれの会計処理の概要をまとめました。

発行した場合

社内向けか社外向けによって、新株予約権発行の会計処理の方法は異なります。それぞれの手続きを見ていきましょう。

社外向け発行の場合

社外向け発行の場合、オプション料や払込金額の処理等が必要です。また権利失効時にも会計処理を行います。

取得時・権利行使時・権利失効時の手続きのポイントは、以下のとおりです。

  • 取得時:発行時にはオプション料を「新株予約権(純資産)」として計上します。権利が失効する可能性もあるので、資本金には組み入れません。
  • 権利行使時:権利が行使された場合、オプション料と払込額とを合わせて資本金に振り替えます。
  • 権利失効時:権利が失効した場合は「新株予約権戻入益」として特別利益に計上されます。

社内向け発行の場合

無償ストックオプションのような場合、取得時のオプション料は発生しません。会計処理では段階的な計上を行いますが、失効が見込まれる場合や評価額に変化がある場合などには、算定される株式報酬費用の見直しが必要です。

以下の記事は無償ストックオプションの会計処理について詳しく解説しています。ぜひ併せて確認してみてください。

<関連記事>無償ストックオプションとは?税制適格の要件とメリット・デメリット、会計処理を徹底解説

取得した場合

新株予約権を取得した場合「新株予約権」の勘定科目は使用しません。有価証券または投資有価証券として処理します。売買目的の場合は有価証券、それ以外は投資有価証券の勘定科目を用いましょう。

権利行使時には株式の取得価額に組み入れます。一方で失効時には新株予約権の効力がなくなってしまうので、特別損失に計上します。

新株予約権について解説しました

新株予約権は従業員へのインセンティブ付与や資金調達、企業価値の保護など、多層的な効果を期待できる仕組みです。取得者にとっても投資リスクの軽減など、メリットが多くあります。

しかし発行や管理には、取締役会や株式総会での審議を通じた慎重な判断が必要です。既存株主にとっては株比率の低下をはじめとするデメリットがあるからです。また会計処理にも、通常の株式取得とは違う記載が必要となります。

さらに新株予約権は発行先や方法、有償・無償などの区分に応じてさまざまな種類があります。必要に応じて専門家に相談し、間違いのない手続きが必要です。

仕組みをしっかり理解し、専門家のサポートも受けながら、新株予約権をビジネス成長に活かしていきましょう。

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Startup JAM編集部
執筆

Startup JAM編集部

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